悪役令嬢が転生してきました

冷暖房完備

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プロローグ

豊、感嘆する。

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息子・正と楽しい散歩から帰ってくると愛しの妻が泣きそうな顔をして迫ってきた。
「なにかあったの?」
「ラインしたよね?なんで読まないの?既読つけろって何回も何回も言ってるよね!?」
胸ぐらを掴む勢いで(いやむしろ掴んで)茜ちゃんが抱きついてくる。
 
かわいい……。
 
思わず抱きしめようとして、すでに自分は愛しい我が子を抱いていることに気づく。 
 
ああ、僕はなんて幸せなんだろう……。
 
茜ちゃんとの出会いは大学の卒業コンパだった。
特に興味もなかったが大学最後のイベントだし話の種に行ってみるかと友人数名と参加したのだ。
 
まさか そこで運命の人に出会うなんて……。
 
当時のことを思いだし、感慨にふける。
卒業式のため袴姿だった茜ちゃんは本当に明治時代からタイムスリップしてきたのかと思うくらい純情可憐乙女だった。
なんとなく目が離せなくて見つめていると、立食パーティー用の料理を端から端まで一通り食べ尽くしていた。
 
あ、ローストビーフは三回おかわりしていたね。
 
一口食べては至福の表情で堪能している姿は まるで お姫様みたいで僕は思わず傍に行き、声をかけた。

今を逃したら二度と会えない!!

そんな危機感が僕に初めてのナンパをさせたのだ。
  
あの時の自分を誉めてあげたいね。
 
「て、忘れてたわ!!その遥が大変なの!!」
茜ちゃんの大声で現実に戻る。
 
遥?僕の可愛いお姫様がどうしたの?

そう言おうとしたけど、茜ちゃんが正ごと抱き締めて歩き出す。
「茜ちゃん、靴。靴くらい脱がせて……」
可愛い後頭部を見つめながら苦笑する。
 
 
 


 


 
三人で揉み合うようにリビングへ到着すると、背筋をピンと伸ばし優雅にお茶を飲む愛しの娘がいた。
「わぁ、遥 お座り上手になったね!!」
 
そうか、茜ちゃんは娘の可愛い姿を早く見せたくて僕を呼んでたんだね。
それは悪いことをした。
 
そっと抱き返して妻の髪にキスを落とした。
「て、違うから!!問題は そこじゃないから!!」
 
え?そうなの?
 
「先ほどから大きな声で煩くて仕方ない。あなた方、少しは静かにできないんですの?」
はぁと大きな溜め息を漏らしながら遥が呟く。
「わ、わぁぁ。遥が本物の お姫様みたいだぁ」
「いやいや!!ここ、感心するとこじゃないから!!」

茜ちゃんに本気で胸ぐらを締め上げられて苦しかったけど、これスゴいことだよ?誉めてあげなきゃ!!

「遥お姫様、本日は本当に本当に可愛らしくて僕は父親として鼻が高いよ」
正に頬擦りをしながら喜びを噛みしめていると、
「何を戯けたことを言うておる。我が父はシャルル・デ・ワトソン王ただお一人であるぞ!!」
 
え、えーーーーーー!?
 
「な、なに?なになに!?その遊び!!茜ちゃん!!僕、これは堪えられないよ!!違う遊びに変えて!!」
「いやいや!!だから遊びじゃないんだよ!!なんか、さっきから遥の様子がおかしいの!!」
とうとう涙を流して訴えかける茜ちゃんはキスしたくなるくらい可愛いけど、今は それは置いといて我が娘の姿をまじまじと見つめる。

じーーー。

幼児らしからぬオーラが 滲み出ている。
表情ひとつ仕草ひとつ取っても気品に満ち、神々しささえ感じる。 
 
な、なんて可愛いんだ……。
 
「て、そこじゃないよね?心の声だだ漏れなんだけど、そこじゃないよね!?」
 
あ、そうだった。
 
僕は正を茜ちゃんに渡すと、恭しく膝をつき愛しの娘に声をかけた。
「シャルル・デ・ワトソン王のお嬢様が なにゆえ我が娘の体内にいらっしゃるのですか?」
「……それはワタクシも分からぬ。先ほど目が覚めたら このような姿になっていたのです」
「それはそれは心中お察しいたします。ただ こちらも突然のことで戸惑っておりますので、よろしければ あなた様のことを教えていただいても よろしいでしょうか?」
「ワタクシのこと?」
少し警戒するように呟く娘(仮)に そんなことは気にしなくて大丈夫と笑顔で返す。
「僕たちは決して あなた様に危害は加えません。あなた様の力になりたいので ぜひ お願いいたします」
「……わかったわ。善処いたします」
心細さが顔に出て泣き出しそうに ぽつりと呟いた。
 
 
わぁそんな顔も可愛いなぁ僕の娘は……。
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