悪役令嬢が転生してきました

冷暖房完備

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幼児期

遥(仮)覚悟する。

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はぁはぁはぁはぁはぁ。
無我夢中で走りすぎましたわね……。
 
額の汗を手の甲で拭きながら微笑む。
早々に捕まっては意味がないと最初こそ必死に走っていたが、途中から風を掴まえる感覚が楽しすぎて我を忘れてしまった。
でもここまで来たら、もう捕まってもイイ頃だわと振り返る。 
 
……………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なんなんですの!!」
 
この程度の追いかけっこで こんな幼子を見失うなんて、ここがワトソン王国であったなら親族 皆殺しの刑を言い渡されても文句なんて言えませんわよ!!
 
手入れの行き届いた森を歩きながらミレイユは憤慨していた。
幸い、場の雰囲気から ここが去年 環さまたちが捨て置かれた森ではないか?と思いあたったので皆が話していた情報を頼りに中央のログハウスを目指す。
「だいたいもって最初から あの者たちは気配すら消せず だらだらと付いて回って!!」
つねに刺客からの暗殺の危険と隣り合わせだったワタクシは最低でも気配を消し姿さえ隠し通す訓練を受けていた。
こんな子供騙しなことをしていて何をもって合格などと言うのか!?
怒りが納まらないミレイユは、屋敷に帰ったら大人たちに一言文句を言ってやろうと意気こんでいた。
「まさか、こんな簡単にチャンスが訪れるとはな……」
ふいに声がして立ち止まる。
「本家のガキじゃないのは残念だが、まぁどれでも やることは一緒だ」
なんでもない普通の装いの男が その大きな手をミレイユに伸ばす。
それを さっと避ける。
「何者!?」
先ほどまでの稚拙な尾行ではない、気配を感じさせない男たち。
瞬時に おばあさまの手の者ではないことを察知する。
「はは。聞かれて名乗るバカはいねぇよ。お嬢さん」
小バカにしたように嘲笑い再度 手を伸ばす。
「は、離しなさい!!」
バタバタと もがくが、男は びくともしない。
「そう暴れるな。お前は交渉の大事な道具だ。大人しくしていたら何もしねえよ」
何もしないという言葉を聞き、大人しくする。
ここで無駄に騒ぐのは得策ではない。
大人しく様子を見、機会を伺うのだ。
「ふっ。さすがは お嬢様だな」
皮肉を言うと、停まっていた車に乗り込んだ。
 
落ち着いて思い出すのよ。
拐われかけた事など何度もあった。
暗殺されかかったことも……。
 
ミレイユは最悪の状況を想定して思考を巡らせる。
男は二人、しかし雰囲気からして後から誰かと合流する予定のようだった。
きっと それが今回の黒幕。
 
何が目的なのかしら。
 
子供を拐う理由は2つだ。
金銭か、何かしらの要求を飲ませること。
それが失敗すれば容赦なく命は絶たれる。
 
考えるのよ。最善策を……。
 
「ずいぶん、大人しいな」
ふいに隣の男から声をかけられる。
「その方がよろしいんでしょう?」
「まぁ、な」
男が人好きのする笑顔を向ける。
「ワタクシから一つ、お願いしても よろしいかしら?」
「なんなりと?」
「その目元を隠している黒いものは絶対 外さないでいただきたいわ」
「なぜ?」
ワタクシの質問に楽しげに聞き返してくる。
「顔を見たら帰してもらえないのが定説でございましょう?できれば今から お会いになる方々にも顔は隠してくださいと伝えていただけると助かりますわ」
「はっはっはっ!!面白いな。分かった。伝えよう」
さも愉快そうに笑い、ゆっくりと体を起こし、ミレイユを覗き見る。
「金持ちの子供ってのは皆お前みたいなのか?」
「……他の方が どうかは知りませんけど、ワタクシがワタクシとして やるべき最重要項目は生きていること、無事に親元へ帰ることですわ」
つねに護衛がいるとは限らない。
最後の最後、自分を守るのは自分しかいない。
「では、お嬢様。あなたが それを全うできるように微力ながら お手伝いいたしましょう」
「助かりますわ」
手に汗にぎる静かな攻防。
今のところ、ワタクシは彼らに危害を加えられることはないようだ。
車は ゆっくりと森を抜け、繁華街へと走らせてゆく。
「そろそろ到着ですよ、お嬢様」
隣の男が楽しげに語りかける。
 
 
 
 
 
 
 
さぁ竜が出るか蛇が出るか……。
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