異世界に転生しました?

冷暖房完備

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本編

No.11魔法使いが仲間に加わった

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何かに揺られてるような気がして目を覚ますと、車の中にいた。
どうやら私たちは無事にビルを抜け出しタクシーに戻ってきたようだ。
長い長いため息を一つついて、生きてることに感謝した。
『あらためて紹介させていただきます。こちら、本日より勇者様ご一行と合流します魔法使い、三ツ夫さまでございます』
天使が深々と頭を下げる横で 三ツ夫と呼ばれた犬は クイッと顎を しゃくった。
「……なんで犬なの?」
真紀子さんが当たり前の疑問を ぶつける。
『あ、いや、その……』
天使が懐からハンカチを取りだし汗を拭く。
 
……言えないような理由なんだ。
 
「元々 犬なの?」
『いえ!!そのようなことは ありません!!』
「なら、なんで人間が犬に転生させられてんの?」
オロオロする天使の横で 三ツ夫さんが クハッとあくびする。
 
―――まぁそんな細かい話どうでもイイじゃねぇか―――
 
脳に直接 響く声。
「……あなた、話せるの?」
真紀子さんが聞く。
 
―――魔法使いだからな―――
 
「……まぁいいわ。それより ここのラスボスは どこにいるの?気配がしないんだけど」
モンスターはビルに消えて行ったし、今は女の人も操られてるから出歩いてない。
人っこ一人いない静まりかえった町並みには私たちの他に誰かいる気配すらない。
 
―――いないな。逃げたんだろ?―――
 
「え?ボスって逃げれるもんなの!?」
思わず口を挟んでしまった。
「よくあることよ」
しれっと真紀子さんが言った。
 
え?ええ!?
よくあることなの!?
 
怖くて声には出せないけど、突っ込みたい。
「そんなことより買い物がしたいわ。新しい服に着替えたいし」
『でもビルにはモンスターがいますよ!?』
 
―――ちょっと行くとアウトレットがある――― 
 
「決まりね」
真紀子さんはタクシーの運転手に行き先を告げた。
 
 
 
 
 
 
 
「三ツ夫さん、この町は いつから こんな状態だったんですか?」
沈黙に耐えきれなかったのか元樹お兄ちゃんが話題を振る。
 
―――俺が気づいた時には こんな感じだったぜ―――
 
「なぜ男だけがモンスターにされてたんでしょうか」
 
―――さぁな―――
 
「いいじゃない。そのおかげでアタシも新しい技を手に入れたし問題ないわ。それにまたレベルが上がったみたいで今なら なんでも出来そうよ」
『新しい仲間に出会うとレベルが50あがるシステムになっておりますからね!!きっと皆様も上がっているはずですよ』
三ツ夫さんの天使が得意気に言う。
「あらそうなの?知らなかったわ」
真紀子さんが楽しげに笑う。
「それより真紀子、この町を出る前に女の人を戻してあげるんだよ」
「無理よ。解き方なんて知らないわ」
悪びれもせず真紀子さんが言う。
「レベルが上がったなら できるんじゃないのか?」
「知らないから できないわよ」
「……天使」
元樹お兄ちゃんの言葉に真紀子さんの天使が反応する。
『中ボスの術をコピーしただけなので真紀子様に そこまでの技術は ありません』
「じゃあ、そういうアイテムもないのか?」
『……ありませんね』
 
――もうイイじゃねぇか。女たちは普通に生活しろって言われて生活してんだから―――
 
「それは、あくまで命令の域でしかない。ちゃんと解いてあげたいじゃないですか」
 
―――お優しいねぇ―――
 
「あなたの大切な ご主人だって操られ……」
 
―――いいか?俺の前で そいつの話は二度とするな―――
 
車内に殺気が充満する。
「中身は人間だもんねぇ」
呑気に独り言を言う真紀子さんに殺気が集中する。
 
やばい、やばい、やばい!!
まだ保護魔法は有効かな!?
てか車で走ってるのは『動かない』に なってるのかな!?
 
全身びっしょり冷や汗をかきながら様子を見守る。
「どうでもイイけど、元樹に何かしたら仲間でも許さないよ?」
三ツ夫さんを上回る殺気を纏い、真紀子さんが言う。
 
さっき、元樹お兄ちゃんに殺気を向けたこと怒ってるんだ。
 
それでも小娘に負けたくないのか三ツ夫さんの殺気も消えない。
『ワ、ワタクシ、皆様のことが知りたいです!!どんな感じで出会われたのですか!?』
パタパタと羽を羽ばたかせて三ツ夫さんの天使が割って入る。
『ま、真紀子さまと元樹さまは幼馴染みで覚醒前から  ご一緒に行動されております!!』
空気を読んだ真紀子さんの天使が話に乗る。
『め、恵さまは真紀子さまの町で合流して この町に参りました』
と恵君の天使も話に乗った。
 
―――ふぅん。で?仲間は残り何人だ?―――
 
『五人パーティーなので後一人でございます』
真紀子さんの天使が言う。
 
あと……一人。
 
『五人が揃うと魔王城へのダンジョンが解放されます。そこを抜けて魔王を倒します』
と恵君の天使が言う。
『誰か一人でも欠けるとダンジョンが解放されませんので お体だけは大切にしてくださいね!!』
と三ツ夫の天使が言った。
「お体だけは大切にって言われてもモンスターが襲ってくるから困っちゃうわね」
さして困ってもいない風に真紀子さんが言う。
「気を抜くなって事だよ。ぼくも なるべく早めに回復魔法をかけるから自己申告も してほしい」
 
―――あんちゃん、回復魔法が使えるのか?―――
 
「ええ。まだ そこまで効果はないですが、保護魔法だったり弱いモンスター避けなら多少できます」
 
―――保護魔法、か。だから、このチビガキは認識できなかったんだな―――
 
「え?私!?」
いきなり話題の中心に引きずり出されて飛び上がる。
「認識できなかったのは、きっとレベルが上がったからだと思います。前はチラチラと見られていたので」
 
―――なるほど―――
 
「三ツ夫さんは、どこまで この世界を把握してるんですか?」
逆に元樹お兄ちゃんが質問する。
 
―――別に なんも知らねぇよ。おまえらが町に来たって分かった時に空気が変わったなって思ったくらいだ―――
 
空気が変わる……それはシナリオが発動するってこと。
 
「もうイイじゃない。中ボスといえど敵は倒したんだし」
真紀子さんが飽きたとばかりに口を挟む。
「それよりアウトレットについたわ。ねぇ元樹、お揃いで何か買いましょうよ」
「真紀子、君は……」
 
―――へぇ、ただの幼馴染みって訳じゃなさそうだな―――
 
三ツ夫さんがニヤリとに笑う。
「ふふふ。そうなの~」
「ちょっ!なに言ってるんですか三ツ夫さん」
三人の やりとりに影で天使たちがホッとしていた。
 
殺気の応酬が消えたね。
 
私も人知れずホッとする。
新メンバーを加え、とても勇者一行には見えないが負ける気がしない安堵感から、また私は意識を手放すのだった。
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