異世界に転生しました?

冷暖房完備

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本編

No.15 戦う意味

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「真紀子さんは怖くないんですか?」
ファッションショー?から少し仲良くなった私は、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「なにが?」
ネイリストに爪を お直ししてもらってる真紀子さんは私の質問に質問で返す。
「ごめんなさい!!真紀子さん強いから突然 魔王を倒せって言われても大丈夫ですもんね!!」
愚問中の愚問だったと反省。
「魔王なんて怖くないわよ」
「で、ですよね~」
「怖いのは……元樹が元樹じゃなくなることだけよ」
 
え……?
 
「アタシが初めて出会ったモンスターは母親だったわ」
 
え!?
 
「モンスターと言っても別に襲ってくる訳でもないし、毎日ゴハン作ってくれて洗濯してくれて、転生前と なんにも変わってなかった」
「は、はぁ」
それの どこがモンスターなんだ?とは 口が裂けても聞けない。
「おはようって言って、いってらっしゃいって言われて、おやすみって言って、当たり前の日常だった」
でも違った、と呟く。
「ある日、なんとなく口にした言葉に返事がなかったの。決められたセリフ以外あの人が話さないことに初めて気づいた瞬間だったわ」
どんなに姿形が似ていても、同じ盛り付け同じ味だったとしても。
あれば母親ではないのだ。
「そう思った時、真っ先に浮かんだのが元樹だった。元樹が元樹じゃなくなるなんて絶対いやだって思った」
「……本当に好きなんですね」
「好きよ。だからアタシは絶対に魔王を倒して元樹が元樹でいられる世界に戻すの」
 強く言い切った真紀子さんには いつもの底知れぬほの暗さはなく、好きな人のために頑張る1人の女の子の顔をしていた。
「早く、魔王を倒せるとイイですね」
「そうね。でもまぁこんな風に元樹と旅をするのも悪くないから今のままでもイイんだけど」
「え?でもモンスターに……」
「アタシがさせないわ」
「で、ですよね~」
そんな やりとりをしていたら、視界に三ツ夫さんが入ってきた。
 
―――そろそろ行くぞ。
 
「あらあら、せっかちね」
視線も向けず真紀子さんが肩をすくめる。
『最後の仲間が日本に戻ってきたようですので お迎えに行きませんと……』
三ツ夫さんの天使が代弁する。
「あら?とうぶん帰ってこないって言ってたじゃない」
『思いの外早く、海外のモンスターを仕留めたようですよ』
真紀子さんの天使が朗らかに笑う。
「へぇ、1人で?やるじゃない」
「海外って日本以外にもモンスターいるんですか!?」
私が思わず立ち上がる。
確か、このゲームは日本製だったと思う。
映画にしろゲームにしろ日本製は舞台が海外になることは ほぼないのでは?
『海外に飛んで逃げたエリアボスを追っていってたようです』
 
飛ぶモンスター!?
 
天使の言葉に度肝を抜かれる。
「じゃあ次の町では空からの襲撃にも気をつけなきゃね」
楽しそうに笑う真紀子さん。
「だ、じょうぶ。切り落とす」
そっと合流した恵くんも楽しそうに笑う。
「……それも人間か」
元樹お兄ちゃんが苦い顔をしていた。
「さぁ。物語で言えば中盤に差し掛かってきてところかしら?そろそろ本気だして行きましょう」
妖艶に微笑むと肩で風をきって歩きだした。
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