君を思ひて月を見る

冷暖房完備

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本編

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カタカタとパソコンに打ち込みながら、のんびりと お茶をすする。
「鬼の居ぬ間のなんちゃらってヤツか?」
ふいに声をかけられて むせる。
「そんなつもりないですけど?」
ちょっとツンとした態度を取ってしまうことは許してほしい。
視線の先にいるのは、この会社の作業員であり、唯一の元カレである杜 達也もり たつや
と言っても社内恋愛だった訳じゃない。
高校生の時に一瞬 付き合っただけだ。

唯一の黒歴史なので忘れたいが……。

「まぁいいや。これ、奥さんに渡しといて」
業務連絡帳をポンと机に置かれた。
「自分で渡してください」
「オレ、これから現場 行って直帰だから」
 
…だから なんなんだ。
 
達也に限らず、作業員の大雑把さには嫌気がさす。
事務は駒使いじゃない。
「ところで見合いは順調か?」
「は?」
「いや、順調に場数は踏んでんのかな?と……」
「はぁ!?」
「とと。現場 行ってきまーす」
まずいと顔に書いて事務所を出ていく。
 
こ~ゆ~とこが嫌だったのよね。
あれから何年たってると思うのかしら。
 
と言うか、よく こんなフレンドリーに話しかけてこれるなとも思った。
私達は決してイイ別れ方をした訳じゃないのにね。
 
 
 
 
高校時代一番 仲の良かった子が通学中に告白され、お付き合いを始めた。
女子校だったこともあり、友達 皆で その彼氏を見に行こうということになった。
向こうも男子校だったので必然的にグループ交際なるものが始まった。
好きとか そんな感情よりも初めての お付き合いというのに皆が浮き足だっていたのを覚えている。
お互いの髪を結い、ちょっとリップなんか塗ってみたりして可愛い恋愛だったなぁと思い出す。
が、そんな微笑ましいのは女の方だけで、男たちは自分の欲望に忠実だったように思う。
男達は、彼女の友達と関係を持って、さらに その友達へと流れていく。
当然、彼氏を取った取られたで揉めに揉めて私達のグループは壊滅状態になった。
そんな中で他に浮気をしない達也とは皆に隠れて ひっそりと付き合い続けていた。
 
自分だけ長続きしていることは気づかれたらヤバい雰囲気がしていたから……。
 
ただ浮気こそしなかったが、達也はワガママな俺様だった。
金は男が出すものと思い込んでるからか、いつも奢ってもらっていたが「また金出さないのか」と吐き捨てられた。
こちらも同じ高校生なのだから申し訳なく思っていたので出そうとすると、女が出すなと怒られる。
じゃあ お金がかからないように お弁当を作っていけばラーメンが食べたかったのにと愚痴る。
では一緒にラーメンを食べに行けば、自分で頼んだチャーハンを もう食えないと寄越してくる。
完食しないと不機嫌になるし、食べ残しを食べさせられた結果デブデブになるし、さらに そこを散々罵られた。
踏んだり蹴ったりな付き合いに身も心も磨り減って別れを告げれば、愛してるのになんでだ!!と迫ってくる。
 
え?これ愛してる人への態度じゃないよね!?
 
と内心ビックリしたが、急に怒り出したりする性格に染められたのか、怖くて言えなかった。
達也の態度に疲れて別れを告げる、嫌だと言われて少しの間 優しくされるも またワガママに振り回されて別れを告げる、というルーティン?を繰り返し、最後は私の友達と達也が浮気したことで終わった。
 
それでも自分が悪いのに なんで別れるって言うんだって怒られたな……。
 
卒業とともに疎遠になったが まさか転職者として達也と同僚になるとは思ってなかった。 
既婚者みたいだし、昔のような執着はないようだけど、必要以上に かかわり合いたくない。
トラウマというほどではないが あの顔を見ると昔を思い出し無性にイライラするから……。
 
ああ、考え出したらムシャクシャしてきた!!
 
たんっと机に手をつくと、スマホがカタッとなる。
 
…………。
 
それを見つめて、しばし考える。
 
い、いいよね?友達だもん。
でも忙しいかな。
 
あれこれや悩んで、まぁダメならダメでイイかとスマホを掴む。
 
 
 
 
 
 
『今夜 暇なら呑まない?』
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