追放されたので千年後に転生しました~その幼女、元転移転生魔術師の再来~

がっきー

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第一部 転生編

元転移転生魔術師、転生後の秘密基地 前編

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「お母さーん! 遊びに行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい! 気をつけてねマリー! 最近モンスターがよくでるみたいだから!」

「奥まで行くな、でしょ? 分かってるって!」

 近くに森が見える、小規模な村。
 その中の小さな民家から、女の子が出かけようとしていた。

 名はマリーという。
 歳は九歳。
 黒髪で、右側に分けた前髪が自慢の美少女、いや美幼女。
 森と農地しかない村で送る、スローライフは格別じゃ。
 さすがに千年も経てば、世の中も落ち着くというもの。

 おっといかん。忘れておった。
 気づいている方もおるかもしれん。
 このマリーと呼ばれる幼女こそ、千年前に転生したデウディーンであるという事。
 つまり、ワシじゃ。

 魔術士じゃったワシが、一人娘のマリーとしてこの田舎の村で暮らしておるのじゃ。

 とはいえ、正確には実の娘ではない。何せ卵から転生したのじゃからな。

 今ワシを見送っておる母と、木を伐採しに出かけておる父。
 二人がワシを拾って育ててくれたのじゃ。実の娘のようにな。
 二人には感謝しておる。スローライフ共々、守っていきたい存在じゃな。

「ところでお母さーん」

「なぁに、マリー?」

「【たかし】って、知ってる?」

「【たかし】? いえ、聞いた事ないわね、そんな人」

「ならいいんだ。じゃあ、行ってきまーす!」

 ワシはウキウキした気分で森まで駆けていった。

 さすが千年後! 誰もたかしの事を覚えとらん! 長年旅をして活躍したというのに!
 これならワシの事も、誰も覚えとらんじゃろう!
 嬉しいなあ! 何のしがらみもない!

 堂々とスローライフを送れるぞい!
 ヒャッホウウウウウゥゥ!





※※※※※※※※※※※※





 森を駆けたワシは、崖を見上げていた。

「この辺りじゃな。……よし」 

 ワシは目線を下げる。
 目の前にあったのは、崖の前に立つ巨大な岩。

「それではいこうか……。開けゴマ!」

 岩に向かって、合言葉を叫ぶ。
 その瞬間、岩が動き始めた。
 ――ゴゴゴと音を鳴らし、脇へ移動していく。
 岩があった先から、ほら穴が見えてきた。

「よし! 入ろうか、ワシの秘密基地!」

 秘密基地と呼ばれたほら穴に向かって、ワシは踏み込んでいく。
 数歩進んだ先にあったのは、たくさん置かれた【日本】の家具。
 そのどれもが、この世界に相応しくないハイテクな代物ばかり。

「いつ来ても落ち着くのう。まあ、くつろげるように転移した訳じゃが」

 ワシが呟いたように、ここはワシの転移魔法で作った拠点。
 それも生前の頃から作っていた、いわゆる秘密基地である。

 ほら穴の中で広がっている空間。
 地面は畳が敷かれている。
 そのど真ん中に置かれるちゃぶ台。置かれているのは割り箸に湯のみに漫画本。快適に座れるよう座布団も敷いている。

 料理も万全じゃ。
 端に設置されているのはキッチン。フライパンに電気ポット、電子レンジも完備。冷蔵庫もあって食材も保存してある。
 中にあるのは野菜と肉類、冷凍食品、お茶入りペットボトル、ドレッシングにバターなど抜かりはない。

 もちろん、それら全て、ワシが異世界【日本】から転移したものじゃからな。

「小腹が空いたの。アレでも食べるか」

 ワシは冷蔵庫に手をつけなかった。
 キッチンの棚に手をかけ、ある物を取り出す。
 電気ポットで熱湯をかけ、それは完成した。
 カップラーメンだ。

「くぅぅ~! 久しぶりのラーメン、うまいのぉ~!」

『やってる事が一人暮らしのおっさんですね、マスター』

 ラーメンをすすり、食事を楽しんでいた時。機械音声がワシにケチをつけてきた。

「相変わらず、厳しいのぉ。ワシに対する言葉遣いかサージャよ」

 ワシは長い付き合いのような軽いノリで言い返してやる。
 人に対してではない。ちゃぶ台の上に置かれた物――スマートフォンに対してだ。

『失礼しました。半分機械ですので、お世辞ができず本当の事しか言えないのです』

「いや、もう少し言い方を考えんかい。スマホでもあるんじゃから、言葉くらい検索して選べるじゃろ」

『すみません、よくわかりません。私を困らせないでください』

 やれやれ……。そっけないヤツじゃい。
 コイツとは生前からの付き合いなんじゃがな……。

 今喋っておる者はサージャ。
 見た目は、ワシが転移したスマートフォン。
 しかし妖精でもある。
 いわゆるスマホと妖精の混半妖精ハーフフェアリー
 混半妖精ハーフフェアリーとはまあ、人間に例える所で言うと国際結婚。妖精と違う物を組み合わせて生まれたのじゃからな。

 そのきっかけは、死にかけの妖精に出会った時じゃった。何とか助けてやりたかったが、すでに虫の息。
 そこでワシは転生魔法を使い、スマホと掛け合わせる事で命を紡いでやった。
 以後はワシの使い魔として、活躍してもらっておる。

 具体的には、この秘密基地の管理をサージャに任せておるのじゃ。
 主に魔力の監視。そして、外部から侵入者を感知する。
 要するに、見張り役じゃな。
 サージャがいるおかげで、ワシが秘密基地を離れても安心という訳である。
 まあ、声に抑揚がなく、ちょいちょい毒を吐く所が欠点じゃが。

『ところでマスター。一つ伺いたいのですが』

「ん? 何じゃ?」

『なぜ女の子なのですか? 性別を変える事に、意味があったのですか?』

 ああ、サージャには話しておらんかったかの。この重要な内容を。
 仕方ない。語ってやるとするかのぉ。

「意味はある。だって、いかにも、スローライフっぽいじゃろ?」

『はぁ』

「大自然に包まれた田舎、そこで暮らす小さな女の子。まさにのどかの象徴ではないか! 一枚の絵になる! っていうかなっておった! たかしのスマホの画像フォルダに、そんなイラストがいっぱいあった! 夏の景色ばっかりで季節偏ってたけど、何かそんな感じで、スローライフっぽかった!」

『要するに、ただの偏見ですね。分かります』

「うぐぐ……」

 ワシの熱意がこもったこだわりを、一言であっさり切り捨てよる。
 なぜじゃ……。このワシのスローライフ感が分からんのか……?

「考えてみよ……。スローライフ……つまり平和じゃぞ? 貴族でもない普通の女の子の暮らし。事件なぞ起きようもないではないか」

『卵から生まれた時点で、マスターは普通ではありません』

 クソッ! 痛いとこ突きよる!
 ちょっとは気をきかせて褒めるくらいしてみたらどうじゃ! ワシ、お主の親みたいなもんじゃぞ!
 サージャだって、ワシが名付けてやったんじゃぞ全く!

『マスター、報告があります』

 ワシが拗ねとったところで、サージャが話を切り替えてきた。
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