追放されたので千年後に転生しました~その幼女、元転移転生魔術師の再来~

がっきー

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第一部 サークルポリス襲撃編

元転移転生魔術師、対峙する 後編

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「あ……あ……あ……」

 ラスティアが震えておる。
 ラケットを構えたまま、小刻みに振動するばかりだ。

「おいラスティア! しっかりしろ! 気を取り戻せ!」

「す、すみません……。ですが、震えが止まらなくて……」

 ラスティアが心底怯えておる。無理もないか。

 あらゆる生命の頂点。モンスターとして最高位。万物の霊長を上回る存在。それがドラゴンなのじゃ。
 ラスティアの震えは本能的なものじゃろう。しかし……。

「ラスティア、しっかりせんか。お主は騎士じゃろう。ここで踏ん張らないでどうする。向こうにはモンスターの大群もいるのじゃ……」

『マスター。レッドドラゴンの出現により、待ち構えていたモンスターは皆、生命反応を消失。分析によると、下敷きにされたようです』

「何と……」

 ラスティアを励まそうとした時に聞く、さらなる衝撃。
 なるほど。確かに着地に大きなショックがあった。
 何せ、ワシの目の前にあった巨大な岩が吹き飛んでしまう程じゃったからの。

 相当な重量感。そして、C級以下のモンスター共を瞬殺してしまう。まさにA級の名にふさわしいだけの事はあるな。

「これは……何事だ。貴様ら……何者だ?」

 レッドドラゴンが口を開いた。口から炎を漏らしながら、ワシらに尋ねてくる。

「なぁに、ワシらは通りすがりの幼女とテニスプレーヤーじゃ。せっかくレッドドラゴンに出会った縁じゃし、話をしたいんじゃが」

 話し合いで解決。
 そう思い、ワシは可能な限り友好的な姿勢をとる。
 僅かな希望じゃが、すがらぬ訳にもいくまい。
 戦わずに済むのなら、それに越した事はないからの。

 しかしレッドドラゴンは笑い飛ばすのじゃった。

「ハーッハッハッハッハ……! 何が話し合いだ! 笑わせるな! 見え透いたウソを! ただの通りすがりがモンスターの大群に入るはずなかろう!」

「いやほら、そこは偶然で……。ほらワシ、いかにも人畜無害そうな幼女じゃろ?」

「ふざけたヤツだ……。それに聞こえていたぞ。キサマが今いる場所辺りを見張らせていたモンスター共の、おびただしい悲鳴がな!」

 あっちゃ~。聞かれてもうてたか……。
 確かに凄まじいボリュームじゃった。絶対延々☆コマ回しでモンスター共が砕かれ、その度にあげられる恐怖の悲鳴と断末魔が。

 となるとこのレッドドラゴン、さしずめ配下の通報を聞いて駆けつけた警察といった所か。

「な、なぁ、落ち着かんか? ワシらお互いを知らんではないか。きっと何か誤解があるんじゃろう、だから話し合いを……」

「問答無用! 話をしたいのなら私を倒してからにしろ!」

 レッドドラゴンが吠える。ワシの話を遮って。
 と同時に、レッドドラゴンの口から炎が湧き上がる。

『警告! レッドドラゴンが攻撃を仕掛けてきます!』

「なっ――」

 サージャの警告。ワシが反応した瞬間。

 ――ボオゥゥゥン……!

 レッドドラゴンの口から、火の玉が放たれた。
 巨大な球体。太陽のごとき炎の塊。ワシらの頭上めがけて飛んでいく。
 そして……。

 ――カッ……!
 ――ドドオオオオォォォォォォォォォンン……!!

 火の玉が炸裂した。

「うおおっ……!」

 まばゆい光に、胸まで響く爆発音。
 ワシは思わず、声を出してしまう。
 視界が慣れてくると、ワシらの背後が火の海と化していた。

「あ……あ……」

 ラスティアが怯えた声を漏らしておる。
 さっきよりも一層、絶望感で青ざめた表情をしておるのだ。

「ラスティア……弱気になるでない、しっかりしろ!」

「そ、そんな……ムリです……。A級ですよ? いくら何でも敵うはずがありません……」

「何を言うか! お主ならできる! 教団騎士なのじゃろう? 戦いたいと言っとったでは……」

「できませんよ! C級クラスのモンスター大群を瞬殺、さっきの火の玉で地形を変える程の威力。これに対抗できる冒険者や騎士自体、滅多にいないんです! 私でさえC級クラスと戦える程度で精一杯なんです! それなのにレッドドラゴンと戦った所で殺されるのがオチですよ!」

「そんな事ない! ……ならこうしよう。これはスポーツだと思うんじゃ」

「……スポーツ?」

 ラスティアが目を見開いている。訳の分からない事を言われた、とでもいうように。

「そうじゃ、これはスポーツじゃ。いいか、お主はラケットを握っておる。相手は……まあ巨大じゃが球を打ってくる。お主はソレを打ち返す。強くイメージするんじゃ。今は試合をしておるのじゃと。なりきり☆テニスラケットがあれば、お主に怖いものなどない」

「試合……これが……」

「貴様ら! いつまで喋っている!」

 ワシがラスティアに話しかけていた所で、レッドドラゴンが怒鳴ってくる。
 しかも口から炎を漏らして。第二波を撃つつもりだ。

「球を打ち返すと言ったか……? これはスポーツ……? 私を前に、世迷い言をよくも呟ける。私に対する挑発と見た!」

 さっきのやり取りが、よほど癇に障ったらしい。
 レッドドラゴンが大きく口を開いた。

「今度は焼いてくれる! 死ねぇ!」

 火の玉が、発射された。
 間違いない。ワシらの方に向かってくる。
 まともに当たれば、C級クラスのモンスター共と同じように、瞬殺されるに違いない。
 火の海と、化して。
 しかし……。

 ――パコォォォォォン!

 火の玉は炸裂しなかった。
 ソレどころか、明後日の方向に打ち返されたのだ。
 ラスティアが握っていた、ラケットによって。

「な、なにィィィ……!」

 レッドドラゴンが驚き、声を荒げておる。状況を呑み込めないといった風に。
 まあ無理もなかろう。初見なら何が起きたか分かるまい。

「……ナイスショーッ!」

 ラスティアが叫んでいた。
 ラケットを振って。爽やかな笑顔で。
 いかにもテニスプレーヤーになりきったという風に。

「よし、これは試合じゃ。上手く返したぞラスティア」

 ワシはラスティアの背中をポン、と叩いた。
 そう、なりきってしまったのじゃ。

 なりきり☆テニスラケットの効果によって――



************************

【サージャ】≪『第十五話をお読みいただき、ありがとうございます』

【サージャ】≪『とうとうレッドドラゴンと対面しましたね』

【サージャ】≪『マスターの話し合いに応じる気はなく、問答無用の臨戦態勢』

【サージャ】≪『C級クラスのモンスター達を圧倒する力を前に、果たしてラスティアは立ち向かえるのでしょうか』

【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
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