追放されたので千年後に転生しました~その幼女、元転移転生魔術師の再来~

がっきー

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第二部 出会いと再会編

元転移転生魔術師、懐かしむ 後編

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 僕は一枚の布を、手に掴んだ。
 その薄く細長い布には、金属製の留め具がついている。
 さらに、その裏地にはテープがついていた。
 この世界には無い形状で、何度でも使えそうな、どこか蛇を思い浮かべそうな見た目をしている。

「ファスナー? 何だよデウディーン……また場違いな物を転移しやがって……。そんな物出す暇があったら、ルーラン押さえる手伝い位……」

 たかしが言い終える前に、僕はファスナーを口に張り付けた。
 そして、ファスナーを動かし、離れていた留め具を繋ぎ合わせ、固定した。

「んん! んー! んー!」

 たかしが何か喋ろうと、もがいている。しかし唸り声ばかりで言葉を発せない。

「たかし、悪いけど、しばらく黙っててもらうから」

 僕は低い声で、たかしに吐き捨てた。
 たかしのチート能力で腕の筋力を強くして、ファスナーを引き剥がそうとしている。
 しかし、びくともしない。
 これこそ、ファスナー☆お口チャックの効果だからだ。

 この転移道具を相手の口に張り付ける事で、言葉を完全に発せなくさせてしまう。
 一度ファスナーを付けられ、留め具を固定されてしまうと、完全に口を閉ざされてしまう。
 本人の力では何をやっても開けられないし、剥がせない。僕自身でファスナーを動かし留め具を開放するか、転移道具を消滅させるしか方法は無い。
 当然、詠唱も無理だし、テレパシーすら不可能。言葉を封じられてしまうからね。

「大丈夫かい、ルーラン。たかしはあのまま、反省してもらうつもりだから。それより、同人誌の件、一緒に取り組もう」

 こうして、僕たちが中心となって、エルフの村で同人誌即売会が開かれる事となった。

 今までの難解な魔術書と違って、絵と物語によって分かりやすく取っ付きやすくなり、大盛況。
 近くの町の冒険者や、魔術や魔法の研究者達が買いに来る程度だったけど、それでも村の財政は潤ったみたい。

 ルーランも喜んでいたよ。
 後日、予知魔法を使ってみたら、荒廃した未来が無くなっていたって、言っていたからね――





※※※※※※※※※※※※    





 簡易基地を抜け、道中、ワシの家までの間。

 ワシらは、過去の話で盛り上がっておった。
 ワシの実体験と、ルルが母となったルーランから聞いた話を交えながら。

 「あの即売会、ワシが死ぬまで続けておったそうじゃったの。どうじゃ、あれから規模は大きくなったかの?」

「ううん。南の国に取られちゃって、村では相変わらず小規模のまま。けど良かったと思います。規模が大きくなっても、私達に扱いきれなかったでしょうから」

 そうか。ワシの死後千年、続けてくれていたんじゃな。
 ワシとたかしとルーランとの思い出が残っておるのは、感慨深いものじゃのう。

「母は感謝していました。デウディーン様がいたからこそ、村を荒廃から避けられたって。デウディーン様との旅は忘れられない思い出だったって」

「褒めすぎじゃ。たかしが提案してくれたから、村が儲けられたんじゃ。ワシら三人、誰か欠けても上手くいかんかったじゃろうて」

「母はこうも言っていました。デウディーン様との旅は、どこかロマンがあったって。二人きりで歩いていたあの時を思い出すと、胸が切なくなるって」

「嫌じゃなあ。そんな素振り、無かったけどなぁ。それに、たかしも一緒じゃったぞ? 二人きりの機会とか、ほとんど無かったぞ?」

「そんな母ですが、また、予知魔法で見たそうなんです。村が滅ぶ様子を……」

 何と。ソレはつまり、ルルの故郷が失われるという事か。
 何か、手がかりは掴んでおるんじゃろうか。

「母が言うには、焼けて村が無くなっていたそうです。そんな中、即売会の看板を見たって……。ソレは当日じゃないと、表に出ない物ですから……」

「つまり、即売会当日が肝、か。それでルルが、ワシに知らせに来てくれたんじゃな」

「はい。ただ私、道中の記憶が無くて……。私に付けられたダークアラクネの刻印も、覚えがありませんし……」

「なる程。刻印を付けた犯人と、予言の出来事。関係があるかもしれんの」

「母が、【デウディーン様は頼りになる】って、連日何度も予知魔法を使って、ようやく場所を特定出来たんです。デウディーン様の活躍、二人で旅した時の頃を、今でも鮮明に思い出すって……」

「いやまあ、当てにしてくれるのはいいんじゃぞ? けど、二人じゃないじゃろ? 何度も言うように、たかしも……」

 ここでワシ、気がついた。
 さっきから、ワシが【たかし】の名前を出す度に、首を傾げている事を。
 違和感はあったんじゃ……。旅の人数について、話が噛み合っておらん気がしての……。

「ルルよ、聞きたい事があるんじゃが」

 ワシは意を決した。

「【田中たかし】を知っとるかの。眼鏡を掛けた異世界転移者で、ワシとルーランの三人で旅しとったんじゃが……」

「……? いたんですか、そんな人? 母からは聞いた事無かったんですけど……」

 やっぱりか!
 たかしの事、知らんかったか!
 ワシは躓くような石が無いのに、なぜかズッコケてしまった。





      ************************  

【サージャ】≪『第三十六話をお読みいただき、ありがとうございます』

【サージャ】≪『今回は、マスターの過去話が中心でした』

【サージャ】≪『ルーランとの旅は、エルフの村以降も続いていました。幾人の冒険者等と一緒に行動して』

【サージャ】≪『マスターに限らず、どの仲間とも、かけがえの無い思い出のはずなのですが、田中たかしは例外だったようですね』

【サージャ】≪『魔法と魔術の表記についてですが』

【サージャ】≪『どちらも、同じ意味として捉えてもらって構いません』

【サージャ】≪『冒険者に魔法使いウィザードという職業があり、それ以外の魔法を使う者を魔術師と、一般的に呼ばれています』

【サージャ】≪『現在はともかく、千年前は厳しく分けられており、魔術師と呼ばれる者は冒険者として評価が低い、もしくは認められていませんでした』

【サージャ】≪『ルーランも冒険者として認められるため、魔法と道具でモンスターをいかに倒していくか工夫しながら戦っていたのです』

【サージャ】≪『当時、マスターがいかに認められていなかったか、片鱗が伺えますね』

【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
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