追放されたので千年後に転生しました~その幼女、元転移転生魔術師の再来~

がっきー

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第二部 出会いと再会編

元転移転生魔術師、呆ける 後編

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 と、状況把握に努めようと思っていたら、ラスティアが割り込んできた。

「ほう、それは良い心がけだな。我らが信ずる皇陛下すめらぎへいか、デウディーン世界教皇せかいきょうこう様は世界全てを見守るお方だ。その広大ゆえ、塵のような我ら信者が祈りと共に近況報告を伝える事で、より鮮明に我らの営みを知る事が出来るからな」

「いや別に……んな盛大に言わんでもええから」

「しかし報告は簡潔にな。デウディーン様は世界全てに耳を傾けるお方ゆえ、ただ一人の者が多大な時間を取らせるような行為は、喉を焼き切る罰則に値するぞ?」

「そ、そうなの? ちょっと人物が多くてややこしいかも知れないのに……」

「ラスティア、もうええから……。喉を焼き切るとか、んな事せんから」

「ハッ! デウディーン様の寛大な心遣い、感激いたします!」

 ビシッ、と敬礼を決めてくるラスティア。
 鬱陶しくて、ワシは溜め息を吐いてしまった。
 って言うか、何でこう、デウディーン教団のワシって偉そうにしたり残酷な罰を与えようとするん……?
 しかも、王様みたいに騎士が忠誠誓ってくるし……。
 ワシ、千年前はそんなんと何の縁も無かったんよ?
 って言うかラスティアのヤツ、いつの間にかワシの呼び名を【デウディーン】に戻しとるし……。

 それより、ルルの話じゃ。
 ややこしいとか言っとったな。
 それなら……。

「転移魔法、発動――!」 

 ワシは手を掲げ、魔力を込めた。 

「いでよ! ――演劇☆指人形!」  

 ワシの手に掴んだのは、小さな人形が十個。底に穴が開いている。

「ルルよ、どうせなら、コレを着けながら話してくれんか?」

 少し戸惑った様子のルル。
 そんな彼女に構わず、ワシは演劇☆指人形を渡し、両手の指全てに装着させる。

「えと、私の里での話なんだけど……」

 ルルが口を開いた時じゃった。

「えっ。指がモゾモゾって、感触が……」

 ルルが、指を引っ込めてしまった。
 無理もない。指人形が勝手に動き始めてしまったのじゃ。
 指先とは、触覚が敏感になっている場所。自分の意思に無い動きに、気持ち悪さを覚えてしまったかもしれない。
 しかし、これでよい。これぞ、演劇☆指人形の効果なのじゃから。

「ルルよ、指人形を見てみるがいい」

「え……何が……。あ、形が変わってる……」

 ルルが、指人形を見て驚いておる。
 始めは何の特徴もない粗末な作りの人形じゃった。
 それが今や、長い耳に整った顔つき……一個一個が、エルフの見た目に変わってしまったのだった。
 それぞれが精工に作られている。内二個はルルとルーランを、人形サイズにデフォルトした外観じゃ。

「それで良い。その転移道具は、使用者の心を読み、最適な形に変化する」

「ま、マリー……。そうなの?」

「ワシを信じてみ? この演劇☆指人形を使えば、ややこしい説明の補助になる。さ、話してみ?」

「そうだぞ。さっさと話せ。偉大なるデウディーン様の施しを受けてなお拒むのは、もはや遠慮を通り越して反逆に当たる」

 ラスティアのヤツ……。余計な一言を……。

 じゃが、特に萎縮している様子は無い。
 ルルが改まり、そして、説明が始まった。

「私の里には、即売会に関する派閥があったの。まずは、母と村長を中心とした、千年続いたしきたりを守っていこうという伝統派」

 ルルが見せる右手の親指、人差し指、中指。それはルルとルーラン、そして白髪の老人エルフの指人形。恐らく、老人エルフは村長じゃろうな。

「伝統だからね、今までみたいに魔術や魔法を分かりやすく伝える目的で、即売会を続けていこうって考えなの。多くのエルフが賛成しているわ」

 なる程。かつてワシとたかしとルーラン達との思い出を、守ってくれている訳じゃな。
 感慨深く思うわい。千年もたてば変わる物もあるじゃろうに、エルフにとってはそう長い時間でも無いのかもしれん。
 と思っておったが、ルルの表情は暗い。それにまだ、エルフの指人形が残っておる。

「次に、対抗する派閥があって……。三百年前から生まれ始めた新興勢力なんだけどね。即売会に力を入れようって言ってるの」

「それは……、規模を大きくしようという事かの」

「ソレもある。利益第一って面も大きいわ。即売会に力を入れて、エルフ達の技術を知らしめ、得た利益で里を大きくしようって考えが主流なの」

「そうなのか。それだけ聞けば、いい考えのように思えるがの」

「そのやり方が……問題なの」

 ルルの表情が変化した。
 暗い表情から赤くなり、恥ずかしそうにうつむき始めていく。
 それから、左手をワシらに見せてくる。親指と人差し指と、中指と薬指。エルフ二人と、子供と思われる小さなエルフの指人形じゃ。

「即売会にね、その……エッチなのとか、その……取り入れるんだって」

 エッチぃ?
 アレか。イヤらしい本を売って利益をあげようってアレか。
 まあ、赤面する気持ちは分かる。男は喜んでも、女にとっては不快なもんじゃろうしの。
 ただのう……。一応、異世界【日本】でもたくさん売られていたと聞いたしのう。

「それって、大人向けじゃろ? 恥ずかしく思うのは無理も無いが、そういうの、本に限らず色々ある物じゃし……」

「違うの。ソレを子供に読み聞かせている事が問題なの」

 はぁ?
 子供に読み聞かせるぅ?
 女の人が裸になったり、男と抱き合ったり子作りしたりする内容の……アレをぉ?

 ルルの左手の指人形四つ。大人のエルフと子供のエルフの指人形。
 親指と人差し指を立て、中指と薬指を折る動きが、大人のエルフの威圧的態度によって子供達が沈んでいく様を感じさせた。

「【英才教育】と称して、親が寝る前の子供に読んであげてるって……母から……」

「イヤイヤ、おかしいじゃろ? んな絵本じゃあるまいし。子供に悪影響じゃろソレ……」

「新興派閥のリーダー、ガロツって言う男なんだけど、長期的なプランを計画してるらしく、子供にも将来即売会で売ってもらう算段なの。それで、早い内に教育しようって……」

「イヤイヤイヤイヤ、あり得んじゃろ。親御さんから猛反発くらって成立せんじゃろソレ……」

「そうでもなくて……。実際、売り上げは上々で里が潤っている面もあって……。エルフの三分の一が賛成していて、議論はしているんだけど平行線なのよね」

 えぇ……。決着ついとらんの……。
 ワシが死んでから千年の間に、エルフの倫理観が変わってしまったという事かの……。

「デウディーン様、本の件ですが」

 ここで、ラスティアが割り込んできた。

「我らがデウディーン教団もその件は警戒しており、今回私が参りましたのは、ガロツ率いる派閥の調査のためでもあったのです」

「え、調査て……」

「実は、ルルなるエルフもエッチなの【とか】と言っていたように、その本が大問題として教団が取り上げています。実物を持っていますので、どうぞ拝見して頂きたく」

 そう言って、ラスティアは荷物から本を取り出した。
 薄い本だ。これこそワシが即売会で見た、いわゆる【同人誌】。

 しかし、ラスティアの表情は険しい。
 ワシは同人誌を手に取り、表紙に目を向ける。
 すると……。



【デウディーンうんこぱくぱく】



 ????????????????……??

 何やらとんでもないタイトルが、ワシの目に入った気がする……。
 ワシは顔を反らした。落ち着くため、深呼吸をした。

 大丈夫。きっと見間違えたんじゃ。そうじゃ、あり得ん。
 ワシの名前を使って、おぞましい行為をするなど……。
 ワシはもう一度、手に持った同人誌に目を向けた。



【デウディーンうんこぱくぱく】



 間違えようが無かった。
 ワシと思われる――似ても似つかないイケオジ――老人が、茶色い物体を口に放り込んでおる表紙絵。
 これはもう、やっぱりウン……。

「ええぇー、何これぇー? マリー、分かんなぁーい?」

 同人誌を放り投げてしまった。

「ちょ、デウディーン様! デウディーン様!」

「ま、マリー! しっかりしてマリー!」

 二人がワシに向かって慌てておる。
 きっとワシ、凄い顔しとったんじゃろうなぁ……。





      ************************  

【サージャ】≪『第三十八話をお読みいただき、ありがとうございます』

【サージャ】≪『今回は大変お見苦しい展開があり、お目汚しをしてしまい申し訳ありませんでした』

【サージャ】≪『前半は、マスターが幼女の特権(?)を生かしてレミンとの抱擁を堪能するキモさ』

【サージャ】≪『後編の最後は、マスターが【伏せ字】を食するという不快な表紙絵を見てしまうという展開』

【サージャ】≪『後編は不可抗力とも言えますが、前編は言い逃れ出来ませんよね、マスター』

【サージャ】≪『それと、レミンとの別れ際にした約束……軽々しくして良かったのでしょうか』

【サージャ】≪『自分で蒔いた種に悩まされなければいいのですが』

【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
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