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13-1 港
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◇◇◇◇◇ ヤスの視点 ◇◇◇◇◇
翌朝、セルウス国の北側を調査するため、僕たちは各自1頭ずつグリプスに乗って村をあとにした。
海岸沿いを北側に向かって飛び続けていると、カトレアが千里眼で港を見つけたという。
敵に千里眼の監視がいるとマズイので、僕たちは地上に降りて身を隠した。
そしてカトレアに千里耳で敵の会話を盗聴させて、そのまま伝心魔法で伝えてもらった。
『──アルストロメリア殿、今日はどうなされたのですか?』
『国王からの伝令だ。数日前、兄妹の奴隷2匹が王都から逃げ出した。そいつらが野良と共謀して、追跡した奴隷狩り13名を殺害したのだ』
『それは本当ですか!?』
『本当だ。それも10名は斬首されていた。奴隷らがエアカッターやファイアボールなどを使ったというのだ』
『信じられない。野良の実在だけでも驚きなのに、魔法が使えるなんて……』
『ああ、俺も知らなかったのだが、本当らしい。なので、お前達も警戒するように。当面、輸出用の奴隷搬入は中断するので、警備に集中するように。良いな』
『わかりました。ですが13名の奴隷狩りが殺られたのに、こちらは攻撃魔法の警備が4名だけですし、千里眼や探知魔法もないので、逃げた奴隷が近くにいてもわかりません。早急に増員をお願いしたいのですが』
『そうしたいのはやまやまだが、みんな討伐隊に駆り出されているので、此処には回せないのだ。逃げた奴らの行方を探して討伐隊が全土をしらみ潰しに捜索しているからな。じきに野良のアジトが見つかるだろう──』
敵に千里眼や探知魔法がないとわかり、僕たちは港に向かった。
壁の外に辿り着くと、カトレアが千里眼で中の様子を教えてくれた。
船着き場に船が1隻停泊していて、石造りの建物が二つあるだけの、殺風景な港だという。
質素な平屋建ての建物には数名の奴隷と思しき人が収容されていて、2階建ての建物には貴族か平民らしき奴らが六人いる。
港から王都に向かって、一本の道が続いている。
王都と同じように、港と道は壁に囲まれていて、魔物が入れないような構造だ。
それにしてもマズイことになったぞ。
せっかく村と反対側へ敵を誘き出したのに、全土を捜索されたら、村が見つかるのは時間の問題。
「このままだと村が敵に見つかってしまう。予定を変更して囮作戦を決行しよう。船を奪って、僕たちが国外逃亡したと見せかけ──」
「ちょっと待て、ヤス。今回は調査だけだから、危険はないって言ったじゃないか。そういう約束でセシリアさんに同行してもらったんだろ」
不安げなセシリアを見て、シオンが僕に食って掛かった。
「私なら大丈夫です。ただ村が心配で……」
「なら一旦村へ戻って報告しよう。そしてセシリアさんを村に残し、オレたち三人で囮作戦をやればいい」
「そんな暇はないよ。村が発見される前に、囮作戦を成功させなければ意味がないからね」
僕がそう指摘するとシオンは、
「だったら戦えばいいだろ。村に襲来した敵を倒せばいい。これまでみたいに」
「もう、同じ様にはいかない。これまで勝てたのは、僕たちが情報で優位にあったからだ」
「情報で優位?」
「敵が僕たちの魔法について知らなかったから勝てたんだ。だけど僕たちの魔法は、ある程度知られてしまった。さらに敵は警戒して戦力を増強してくるはず」
囮作戦の決行にセシリアが賛同すると、それにシオンも続いた。
翌朝、セルウス国の北側を調査するため、僕たちは各自1頭ずつグリプスに乗って村をあとにした。
海岸沿いを北側に向かって飛び続けていると、カトレアが千里眼で港を見つけたという。
敵に千里眼の監視がいるとマズイので、僕たちは地上に降りて身を隠した。
そしてカトレアに千里耳で敵の会話を盗聴させて、そのまま伝心魔法で伝えてもらった。
『──アルストロメリア殿、今日はどうなされたのですか?』
『国王からの伝令だ。数日前、兄妹の奴隷2匹が王都から逃げ出した。そいつらが野良と共謀して、追跡した奴隷狩り13名を殺害したのだ』
『それは本当ですか!?』
『本当だ。それも10名は斬首されていた。奴隷らがエアカッターやファイアボールなどを使ったというのだ』
『信じられない。野良の実在だけでも驚きなのに、魔法が使えるなんて……』
『ああ、俺も知らなかったのだが、本当らしい。なので、お前達も警戒するように。当面、輸出用の奴隷搬入は中断するので、警備に集中するように。良いな』
『わかりました。ですが13名の奴隷狩りが殺られたのに、こちらは攻撃魔法の警備が4名だけですし、千里眼や探知魔法もないので、逃げた奴隷が近くにいてもわかりません。早急に増員をお願いしたいのですが』
『そうしたいのはやまやまだが、みんな討伐隊に駆り出されているので、此処には回せないのだ。逃げた奴らの行方を探して討伐隊が全土をしらみ潰しに捜索しているからな。じきに野良のアジトが見つかるだろう──』
敵に千里眼や探知魔法がないとわかり、僕たちは港に向かった。
壁の外に辿り着くと、カトレアが千里眼で中の様子を教えてくれた。
船着き場に船が1隻停泊していて、石造りの建物が二つあるだけの、殺風景な港だという。
質素な平屋建ての建物には数名の奴隷と思しき人が収容されていて、2階建ての建物には貴族か平民らしき奴らが六人いる。
港から王都に向かって、一本の道が続いている。
王都と同じように、港と道は壁に囲まれていて、魔物が入れないような構造だ。
それにしてもマズイことになったぞ。
せっかく村と反対側へ敵を誘き出したのに、全土を捜索されたら、村が見つかるのは時間の問題。
「このままだと村が敵に見つかってしまう。予定を変更して囮作戦を決行しよう。船を奪って、僕たちが国外逃亡したと見せかけ──」
「ちょっと待て、ヤス。今回は調査だけだから、危険はないって言ったじゃないか。そういう約束でセシリアさんに同行してもらったんだろ」
不安げなセシリアを見て、シオンが僕に食って掛かった。
「私なら大丈夫です。ただ村が心配で……」
「なら一旦村へ戻って報告しよう。そしてセシリアさんを村に残し、オレたち三人で囮作戦をやればいい」
「そんな暇はないよ。村が発見される前に、囮作戦を成功させなければ意味がないからね」
僕がそう指摘するとシオンは、
「だったら戦えばいいだろ。村に襲来した敵を倒せばいい。これまでみたいに」
「もう、同じ様にはいかない。これまで勝てたのは、僕たちが情報で優位にあったからだ」
「情報で優位?」
「敵が僕たちの魔法について知らなかったから勝てたんだ。だけど僕たちの魔法は、ある程度知られてしまった。さらに敵は警戒して戦力を増強してくるはず」
囮作戦の決行にセシリアが賛同すると、それにシオンも続いた。
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