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14-1 欺瞞作戦
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◇◇◇◇◇ シオン視点 ◇◇◇◇◇
ヤスとカトレアが部屋を出て行くと、オレは腰を抜かしている老年を睨み付け、
「おい、グリプスのところへ案内しろ」
「グリプス?」
「そうだ。全部頂いていく。早くしろ」
「わ、わかった。だから殺さないでくれ」
アルストロメリアは、どうにか立ち上がると、おぼつかない足取りで歩き出す。
そいつに付いて行き、1階に降りて建物の裏に回ると、5頭のグリプスが繋がれている小屋があった。
オレは男にグリプスの紐をほどくように命じた。
「シオンお兄ちゃーん。どこにいるの?」
世界一可愛い妹がオレを呼ぶ声がした。
「建物の裏だ。ここにいるぞ、カトレア」
オレは急いで建物の横まで駆けていき、妹に手を振る。
「手が足りないの。お兄ちゃんも手伝って」
「わかった。こっちが片付いたら、すぐに行くからな」
そのときバサッバサッと、グリプスの羽搏く音がした。
老年がグリプスに乗って飛び去るのを確認したオレは、
「あ~っ、待て。この野郎!」
叫んで小屋に戻ると、グリプスに跨り奴を追いかけた。
王都に向かって逃げるアルストロメリアを、オレは暫く追いかけたが、距離は広がるばかり。
オレは途中で諦めて引き返した。
◇◇◇◇◇ ヤス視点 ◇◇◇◇◇
平民兄妹のいる部屋へ戻ると、彼らは荷造りを終えて待っていた。
兄は緑のマントを、妹は白のマントを羽織っている。
荷物は大きなカバンが二つで、バジルはそれを手に持つと、
「いつでも出発OKです。ヤス様」
「ヤスでいいよ。僕も君たちを呼び捨てにするから」
「いえ、俺たちはヤス様の配下になったのだから、いくら年下でも呼び捨てにはできません」
「年下? 僕は20歳だけど、君たちは?」
「「え!?」」
平民兄妹が嘘⁉ みたいな顔で僕を見た。
シオンたちも同じような反応だったから、別にいいけどね。
バジルは18歳で、アマリリスは14歳だという。
シオンとアルストロメリアが外に出て行ったので、僕たちも1階へ降りて、奴隷小屋に向かった。
そこには労働用の男奴隷と輸出用の女奴隷が収容されているという。
するといきなりカトレアが、
「シオンお兄ちゃーん。どこにいるの?」
「建物の裏だ。ここにいるぞ、カトレア」
「手が足りないの。お兄ちゃんも手伝って」
「わかった。こっちが片付いたら、すぐに行くからな」
カトレアは伝心魔法で兄からの合図があったら、声を掛けることになっていた。
「あ、待て。この野郎!」
シオンの叫び声が聞こえたあと、アルストロメリアがグリプスに乗って、飛び去るのが見えた。
そのあとをグリプスに乗ったシオンが追いかけていく。
いってらっしゃ~い、と手を振るカトレア。
わざと敵を逃したのは、僕たちが国外に逃亡したと、王都の奴らに思わせるためである。
カトレアの伝心魔法で、作戦が成功したことをセシリアに伝えてもらう。
そして僕たちは奴隷小屋に入り、女の奴隷たちが収容されている部屋の鍵を開けた。
部屋の奥で女性たちが、怯えた様子で身を寄せ合っている。
さすが輸出用の奴隷だけあって、みんな見目麗しい。
きっと鉄格子の窓から、外の状況を知ったのだろう。
そりゃ、首を刎ねられた死体が、幾つも転がっていたら、怯えるよな。
ここは男の僕が説明するよりも、女同士の方がいいだろう。
彼女たちをカトレアに任せて、僕は男の奴隷たちが収容されている部屋へ向かった。
鍵を開けて中に入ると、部屋の奥で男たちが、警戒心を露わに身構えている。
彼らに助けにきたと伝えても、なかなか信じてもらえない。
だけどバジルが来て、僕のことを保証してくれたので、男たちは信じてくれた。
どうやらバジルは、奴隷たちにかなり信頼されているようだ。
みんなを連れて小屋を出ると、シオンとセシリアが待っていた。
デレデレしながらセシリアとのおしゃべりに夢中のシオン。
だけど僕たちに気づくと、彼のだらしない表情が一変、
「ヤス、後ろに敵がいるぞ!!」
そう叫んで平民兄妹に、エアカッターを放とうとした。
ヤスとカトレアが部屋を出て行くと、オレは腰を抜かしている老年を睨み付け、
「おい、グリプスのところへ案内しろ」
「グリプス?」
「そうだ。全部頂いていく。早くしろ」
「わ、わかった。だから殺さないでくれ」
アルストロメリアは、どうにか立ち上がると、おぼつかない足取りで歩き出す。
そいつに付いて行き、1階に降りて建物の裏に回ると、5頭のグリプスが繋がれている小屋があった。
オレは男にグリプスの紐をほどくように命じた。
「シオンお兄ちゃーん。どこにいるの?」
世界一可愛い妹がオレを呼ぶ声がした。
「建物の裏だ。ここにいるぞ、カトレア」
オレは急いで建物の横まで駆けていき、妹に手を振る。
「手が足りないの。お兄ちゃんも手伝って」
「わかった。こっちが片付いたら、すぐに行くからな」
そのときバサッバサッと、グリプスの羽搏く音がした。
老年がグリプスに乗って飛び去るのを確認したオレは、
「あ~っ、待て。この野郎!」
叫んで小屋に戻ると、グリプスに跨り奴を追いかけた。
王都に向かって逃げるアルストロメリアを、オレは暫く追いかけたが、距離は広がるばかり。
オレは途中で諦めて引き返した。
◇◇◇◇◇ ヤス視点 ◇◇◇◇◇
平民兄妹のいる部屋へ戻ると、彼らは荷造りを終えて待っていた。
兄は緑のマントを、妹は白のマントを羽織っている。
荷物は大きなカバンが二つで、バジルはそれを手に持つと、
「いつでも出発OKです。ヤス様」
「ヤスでいいよ。僕も君たちを呼び捨てにするから」
「いえ、俺たちはヤス様の配下になったのだから、いくら年下でも呼び捨てにはできません」
「年下? 僕は20歳だけど、君たちは?」
「「え!?」」
平民兄妹が嘘⁉ みたいな顔で僕を見た。
シオンたちも同じような反応だったから、別にいいけどね。
バジルは18歳で、アマリリスは14歳だという。
シオンとアルストロメリアが外に出て行ったので、僕たちも1階へ降りて、奴隷小屋に向かった。
そこには労働用の男奴隷と輸出用の女奴隷が収容されているという。
するといきなりカトレアが、
「シオンお兄ちゃーん。どこにいるの?」
「建物の裏だ。ここにいるぞ、カトレア」
「手が足りないの。お兄ちゃんも手伝って」
「わかった。こっちが片付いたら、すぐに行くからな」
カトレアは伝心魔法で兄からの合図があったら、声を掛けることになっていた。
「あ、待て。この野郎!」
シオンの叫び声が聞こえたあと、アルストロメリアがグリプスに乗って、飛び去るのが見えた。
そのあとをグリプスに乗ったシオンが追いかけていく。
いってらっしゃ~い、と手を振るカトレア。
わざと敵を逃したのは、僕たちが国外に逃亡したと、王都の奴らに思わせるためである。
カトレアの伝心魔法で、作戦が成功したことをセシリアに伝えてもらう。
そして僕たちは奴隷小屋に入り、女の奴隷たちが収容されている部屋の鍵を開けた。
部屋の奥で女性たちが、怯えた様子で身を寄せ合っている。
さすが輸出用の奴隷だけあって、みんな見目麗しい。
きっと鉄格子の窓から、外の状況を知ったのだろう。
そりゃ、首を刎ねられた死体が、幾つも転がっていたら、怯えるよな。
ここは男の僕が説明するよりも、女同士の方がいいだろう。
彼女たちをカトレアに任せて、僕は男の奴隷たちが収容されている部屋へ向かった。
鍵を開けて中に入ると、部屋の奥で男たちが、警戒心を露わに身構えている。
彼らに助けにきたと伝えても、なかなか信じてもらえない。
だけどバジルが来て、僕のことを保証してくれたので、男たちは信じてくれた。
どうやらバジルは、奴隷たちにかなり信頼されているようだ。
みんなを連れて小屋を出ると、シオンとセシリアが待っていた。
デレデレしながらセシリアとのおしゃべりに夢中のシオン。
だけど僕たちに気づくと、彼のだらしない表情が一変、
「ヤス、後ろに敵がいるぞ!!」
そう叫んで平民兄妹に、エアカッターを放とうとした。
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