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32-1 アドルフ王の逆襲1
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◇◇◇◇◇ アドルフ王視点 ◇◇◇◇◇
不覚にも我は敵との戦いに敗れ、囚われの身となってしまった。
そればかりか視覚を奪われ、魔法も封印されてしまったのである。
どうやら我は奴らのアジトに連れて行かれたらしく、そこの建物内で尋問を受けた。
そのあと牢獄に連行されたのだが、盲目では歩くこともままならない。
そこで魔法により目は治癒されて見えるようになった。
もう生きて王都へは戻れぬと、諦めかけたのだが、天は我を見捨てなかった。
投獄された牢屋に、思わぬ人物が待っていたのだ。
その先客は、間者のニゲラである。
ニゲラは囚われたあと、村の女を誑かして、脱獄の手はずを整えていたという。
これで王都へ生きて戻れる目処がついた。
だが帰還前に、我の封印が敵に通じなかった原因を、突き止めなければならない。
あの時は、封印した敵の魔法が、次々と解除された。
鑑定魔法の能力者であるヤスという男を、封印したにもかかわらずだ。
冷静に今思えば、他にも鑑定魔法の能力者がいたと考えられる。
だが奴らの中でヤス以外に鑑定魔法の使い手はいなかった。
火属性のカトレア以外は全員鑑定したので確かである。
もし何処かに鑑定魔法の能力者が潜んでいたとしても、探知魔法で発見できたはずだ。
となると……やはりカトレアが怪しい。
複数の能力を操ると考えれば、これまでの件も含めて全て合点がいく。
そこでニゲラが誑かしたサルビアという女から、情報を聞き出すことにした。
その女によるとカトレアは、治癒魔法を使えるという。
やはり複数の能力を有していたのだ。
カトレアが鑑定魔法を扱えれば、先の戦いで封印を解除されたのも腑に落ちる。
音属性の魔法も使えれば、海上でグリプスが暴れた件も説明がつく。
年端も行かぬ少女の能力に、我は思わず身震いした。
その超激レアなユニーク魔法を鑑定したい、カトレアを我のものにしたいという衝動に駆られたのである。
その後、敵が王都制圧に向かい、村が手薄になったのに乗じて、我々は脱獄した。
王都のガザニア宮殿に辿り着いた我は、息子のマロウ王子に封印を解除させた。
そして状況把握のため、間者を放って情報収集をさせたのである。
その報告によると、王宮はヤスたちに占拠され、この国を奴らが支配することを、幹部や領主たちは了承したという。
不可解なのは、猛反発していた民たちが、王宮に連れて行かれると、誰もが敵に寝返るということ。
毎日、数十名の民が王宮に連れて行かれ、敵側に取り込まれていく。
その者たちに、王宮で何があったのか聞き出そうとすると、誰もが口を閉じてしまうのだ。
そこで我が直に問い質すことにした。
間者に連れられて、この部屋に入ってきた男は、我を見るなり驚きを隠せない表情で、
「アドルフ王⁉ どうして、此処に⁉ 敵に捕まったはずじゃ……」
「脱獄してきたのだ。それよりも貴様、敵に寝返ったそうだな。何故だ」
男は地に平伏すと戦きながら、
「どうかお許し下さい。何も申し上げるわけには、いかないのです」
「ならば貴様を逆賊とみなして処刑するぞ。死にたくなければ、洗いざらい吐け」
ついと起き上がった男は、踵を返して部屋から逃げ出そうとしたが、間者に電撃魔法を食らい、悲鳴をあげて崩れるように倒れた。
断続的に段々と威力を増していく電撃を喰らって、男はのたうち回りながら、
「ぎゃああああぁ! いっ、言う! 言うから止めてくれ! 俺は王宮で奴らに──」
だが王宮で何があったのか口にしようとした瞬間、男は断末魔の叫びを上げながら、干からびて事切れてしまった。
他の領民にも問い質したが、結果は同じだった。
どうやら敵の情報を漏らすと、ミイラになって死ぬという、未知の魔法らしい。
この恐ろしい現象も、カトレアの仕業だというのか?
一体、どんな能力を、どれだけ有しているというのだ。
その翌朝、王宮を見張っていた間者が、
「アドルフ王、御報告いたします。シオンと女の2匹が、村へと向かった模様です」
我の脱獄がバレるのも時間の問題だな。
そうなれば奴らは、警戒を強めるだろう。
その前にこちらも、手を打たねばなるまい。
「今宵、敵に与する裏切り者どもを全て始末しろ」
「御意」
多くの民は、奴隷が国を支配することに、反感を抱いている。
その者たちを言葉巧みに扇動し、敵に寝返った裏切り者を暗殺するように仕向けることは、訓練された間者にとって造作もないこと。
その夜、寝込みを襲われた裏切り者どもは、全員始末された。
粛清のあと、ぞくぞくと貴族や平民たちが、ガザニア宮殿に集結した。
不覚にも我は敵との戦いに敗れ、囚われの身となってしまった。
そればかりか視覚を奪われ、魔法も封印されてしまったのである。
どうやら我は奴らのアジトに連れて行かれたらしく、そこの建物内で尋問を受けた。
そのあと牢獄に連行されたのだが、盲目では歩くこともままならない。
そこで魔法により目は治癒されて見えるようになった。
もう生きて王都へは戻れぬと、諦めかけたのだが、天は我を見捨てなかった。
投獄された牢屋に、思わぬ人物が待っていたのだ。
その先客は、間者のニゲラである。
ニゲラは囚われたあと、村の女を誑かして、脱獄の手はずを整えていたという。
これで王都へ生きて戻れる目処がついた。
だが帰還前に、我の封印が敵に通じなかった原因を、突き止めなければならない。
あの時は、封印した敵の魔法が、次々と解除された。
鑑定魔法の能力者であるヤスという男を、封印したにもかかわらずだ。
冷静に今思えば、他にも鑑定魔法の能力者がいたと考えられる。
だが奴らの中でヤス以外に鑑定魔法の使い手はいなかった。
火属性のカトレア以外は全員鑑定したので確かである。
もし何処かに鑑定魔法の能力者が潜んでいたとしても、探知魔法で発見できたはずだ。
となると……やはりカトレアが怪しい。
複数の能力を操ると考えれば、これまでの件も含めて全て合点がいく。
そこでニゲラが誑かしたサルビアという女から、情報を聞き出すことにした。
その女によるとカトレアは、治癒魔法を使えるという。
やはり複数の能力を有していたのだ。
カトレアが鑑定魔法を扱えれば、先の戦いで封印を解除されたのも腑に落ちる。
音属性の魔法も使えれば、海上でグリプスが暴れた件も説明がつく。
年端も行かぬ少女の能力に、我は思わず身震いした。
その超激レアなユニーク魔法を鑑定したい、カトレアを我のものにしたいという衝動に駆られたのである。
その後、敵が王都制圧に向かい、村が手薄になったのに乗じて、我々は脱獄した。
王都のガザニア宮殿に辿り着いた我は、息子のマロウ王子に封印を解除させた。
そして状況把握のため、間者を放って情報収集をさせたのである。
その報告によると、王宮はヤスたちに占拠され、この国を奴らが支配することを、幹部や領主たちは了承したという。
不可解なのは、猛反発していた民たちが、王宮に連れて行かれると、誰もが敵に寝返るということ。
毎日、数十名の民が王宮に連れて行かれ、敵側に取り込まれていく。
その者たちに、王宮で何があったのか聞き出そうとすると、誰もが口を閉じてしまうのだ。
そこで我が直に問い質すことにした。
間者に連れられて、この部屋に入ってきた男は、我を見るなり驚きを隠せない表情で、
「アドルフ王⁉ どうして、此処に⁉ 敵に捕まったはずじゃ……」
「脱獄してきたのだ。それよりも貴様、敵に寝返ったそうだな。何故だ」
男は地に平伏すと戦きながら、
「どうかお許し下さい。何も申し上げるわけには、いかないのです」
「ならば貴様を逆賊とみなして処刑するぞ。死にたくなければ、洗いざらい吐け」
ついと起き上がった男は、踵を返して部屋から逃げ出そうとしたが、間者に電撃魔法を食らい、悲鳴をあげて崩れるように倒れた。
断続的に段々と威力を増していく電撃を喰らって、男はのたうち回りながら、
「ぎゃああああぁ! いっ、言う! 言うから止めてくれ! 俺は王宮で奴らに──」
だが王宮で何があったのか口にしようとした瞬間、男は断末魔の叫びを上げながら、干からびて事切れてしまった。
他の領民にも問い質したが、結果は同じだった。
どうやら敵の情報を漏らすと、ミイラになって死ぬという、未知の魔法らしい。
この恐ろしい現象も、カトレアの仕業だというのか?
一体、どんな能力を、どれだけ有しているというのだ。
その翌朝、王宮を見張っていた間者が、
「アドルフ王、御報告いたします。シオンと女の2匹が、村へと向かった模様です」
我の脱獄がバレるのも時間の問題だな。
そうなれば奴らは、警戒を強めるだろう。
その前にこちらも、手を打たねばなるまい。
「今宵、敵に与する裏切り者どもを全て始末しろ」
「御意」
多くの民は、奴隷が国を支配することに、反感を抱いている。
その者たちを言葉巧みに扇動し、敵に寝返った裏切り者を暗殺するように仕向けることは、訓練された間者にとって造作もないこと。
その夜、寝込みを襲われた裏切り者どもは、全員始末された。
粛清のあと、ぞくぞくと貴族や平民たちが、ガザニア宮殿に集結した。
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