異世界成り上がり奮闘記

千耀

文字の大きさ
78 / 108
第2章 イグニス国編

1 イグニス国の使者

しおりを挟む
 トモサダの脅威が去ったあと、僕は再び国の治世に取り組んだ。
 とはいうものの、政治や経済、法律などは僕の専門外なので、ほとんどを仲間に任せてある。
 この国のことは、この国の人たちの方がわかっているからね。
 なので僕は、前世の知識を活かしてアドバイスしたり、サポート役に徹している。
 また、トモサダとの戦いで、刀を折られて力不足を痛感した僕は、ルドベキアの猛特訓で、日々鍛錬を重ねている。
 トモサダの日本刀を使い、剣術の鍛錬も欠かさず行う。
 
 そんなある日、外交担当のゼノビアさんが、困った問題が起きたと、僕のところにやってきた。
 なんでもイグニス国の使者が、奴隷を要求してきたので断ったら、この国を侵略するというのだ。
 イグニス大陸のイグニス国は、エストゥス国王が治める大国だという。
 直接話を聞くため、僕はカトレアを連れて、使者のもとへ向かった。
 
「──我々に従え。さもなくば、この国を侵略する。そうなれば貴様らも、ただではすまないぞ」

 不遜な態度で僕を見下す使者の男。
 これでも一応、僕は国王の端くれなんだけど。

「この国は不可侵条約により、どの国からも侵略されないことになっています。それを破れば、他国を敵に回すことになりますよ」
「そんなもの関係ない。我が国は強大な力を手に入れたのだ。いづれ我々は世界を征服するのだからな」
「その強大な力とは?」
「我々はドラゴンを捕らえて支配下に置いている」
「ドラゴン……」

 マジか⁉
 この世界にはドラゴンが実在するのか?
 こんなときに不謹慎かもしれないけど、ちょっとだけテンションが上がってしまった。

「すみませんが、協議したいので、少し席を外しますね」

 使者を残して、僕たちは部屋を出た。
 
 セダム卿によると、大陸にはドラゴンがいるとされているが、実際に見たものは殆どいないという。
 ドラゴンの領域テリトリーに侵入した人間は、殲滅されてしまうからだ。
 またドラゴンは、一国を滅ぼすほどの力を持つとも言われているので、人間に従うなど到底あり得ないと、セダム卿はいう。
 これは使者の話について、真偽を確かめる必要があるな。

 僕たちは部屋に戻り、いくつかの質問を使者にした。
 どうやらドラゴンを捕獲したのは本当らしいが、まだ完全に制御できていないようだ。
 奴らが完全にドラゴンを支配する前に手を打たなければ、この国は蹂躙されてしまう。
 
「これでわかっただろ。我々に逆らえないということが」
「いえ、まだ貴方のいうことを信じてはいないので」
「なんだと⁉ 貴様、俺が嘘をついているというのか!」

 実際、ドラゴンを支配していると、嘘をついたじゃないか。
 こっちにはカトレアの真偽判定魔法があるから、全てお見通しなんだよ。

「一国を滅ぼすほどの力を持つドラゴンが、人間に従うなんて、この目で見るまでは到底信じられません。なので僕たちを、貴方の国へ連れて行ってもらえませんか。実際にドラゴンを目にすれば、僕は考えを改めます」

 この国を侵略するには、大軍が幾日も航海する必要がある。
 その手間暇や、悪天候による危険性などを考慮すれば、僕の提案を受け入れたほうが賢明である。
 そう説得すると、使者は渋々ながら承諾した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

処理中です...