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第2章 イグニス国編
6 レッドドラゴン
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母竜は僕を睨みつけ、
『人間よ。なぜ助けた?』
『悪いのは全てイグニス国です。あなた達親子は何も悪くないので、看過できませんでした。それにルークスを救うため、不本意ながらもイグニス国を属国にしました。なので、この国を代表して、謝罪します。本当に申し訳ございません』
僕は土下座して、誠心誠意謝った。
『どんなに謝ろうが、許されるわけがない。妾から大切なものを奪った奴らを、皆殺しにせねば気が済まぬわ!』
母竜の怒りがこもった咆哮に、僕たちは吹き飛ばされてしまう。
『ママ、やめて! ヤスお兄ちゃんは、ボクを救ってくれたんだよ。ヤスお兄ちゃんとカトレアお姉ちゃんは、ボクの大切な人なんだから』
『ならばその二人には手を出さぬ。だが他の人間は皆殺しにする』
この会話を理解したら、シオンは落ち込むだろうな。
『お願いします。むやみに人を殺めるのはやめてください。でなければ、貴方の魔法を封印して、使えないようにします』
『悪いのは全てイグニス国だと言ったではないか。なのにどうして邪悪な者どもを庇うのだ?』
『この国の上に立つ者として、民を守る責任があります。それに悪い人ばかりではありません。カトレアはとてもいい娘です。きっとこの国にも、彼女のような人がいるでしょう。僕はカトレアを守るためなら、貴方を殺すことも厭わない。ルークスに対する貴方の想いも同じはずです』
僕は泰然たる態度で、ドラゴンの大きな眼をじっと見据えた。
しばらく互いに視線を交わしたあと、
『妾の負けだ。よかろう。お主の要求を受け入れて、皆殺しはやめてやる』
『ありがとうございます。ルークスのお母様』
『妾はフラムという。で、お主たちは、これからどうするのだ?』
『一旦イグニス国の王宮へ戻ってから、僕たちの国へ帰ります』
『カトレアお姉ちゃん、行っちゃうの? 嫌だ、行かないで』
泣きそうな顔でルークスが、カトレにしがみ付いた。
困惑するカトレアに状況を説明すると、彼女はルークスを抱きしめて、
「ごめんね、ルークス。いつまでも此処にはいられないの」
すると駄々をこねる我が子を宥めるように、レッドドラゴンは母親然と、
『ルークス。わがままを言ってはいけませんよ。ここは人間がいるところではないの。だから妾たちが彼らに付いて行きましょ。それならいいでしょ』
『うん。ママ』
『良くない!』
と、僕は思わず大声で突っ込んでしまった。
『どうしてだ? 付いて行くだけだから、迷惑はかけぬぞ』
『それだけで大迷惑です! 貴方みたいな巨大なドラゴンを連れて帰ったら、国中が大パニックになりますよ』
お年寄りがショック死するかもしれないだろ。
『小さければ良いのか?』
『駄目です。ルークスみたいに狙われるかもしれないでしょ』
『では人間の姿なら良いのだな』
そう言うやいなやレッドドラゴンは、身体が縮んで人間の姿に変貌した。
その変化に、僕たちは度肝を抜かれた。
だけど、なによりも驚いたのは、その姿がセシリアと瓜二つということだ。
『人間よ。なぜ助けた?』
『悪いのは全てイグニス国です。あなた達親子は何も悪くないので、看過できませんでした。それにルークスを救うため、不本意ながらもイグニス国を属国にしました。なので、この国を代表して、謝罪します。本当に申し訳ございません』
僕は土下座して、誠心誠意謝った。
『どんなに謝ろうが、許されるわけがない。妾から大切なものを奪った奴らを、皆殺しにせねば気が済まぬわ!』
母竜の怒りがこもった咆哮に、僕たちは吹き飛ばされてしまう。
『ママ、やめて! ヤスお兄ちゃんは、ボクを救ってくれたんだよ。ヤスお兄ちゃんとカトレアお姉ちゃんは、ボクの大切な人なんだから』
『ならばその二人には手を出さぬ。だが他の人間は皆殺しにする』
この会話を理解したら、シオンは落ち込むだろうな。
『お願いします。むやみに人を殺めるのはやめてください。でなければ、貴方の魔法を封印して、使えないようにします』
『悪いのは全てイグニス国だと言ったではないか。なのにどうして邪悪な者どもを庇うのだ?』
『この国の上に立つ者として、民を守る責任があります。それに悪い人ばかりではありません。カトレアはとてもいい娘です。きっとこの国にも、彼女のような人がいるでしょう。僕はカトレアを守るためなら、貴方を殺すことも厭わない。ルークスに対する貴方の想いも同じはずです』
僕は泰然たる態度で、ドラゴンの大きな眼をじっと見据えた。
しばらく互いに視線を交わしたあと、
『妾の負けだ。よかろう。お主の要求を受け入れて、皆殺しはやめてやる』
『ありがとうございます。ルークスのお母様』
『妾はフラムという。で、お主たちは、これからどうするのだ?』
『一旦イグニス国の王宮へ戻ってから、僕たちの国へ帰ります』
『カトレアお姉ちゃん、行っちゃうの? 嫌だ、行かないで』
泣きそうな顔でルークスが、カトレにしがみ付いた。
困惑するカトレアに状況を説明すると、彼女はルークスを抱きしめて、
「ごめんね、ルークス。いつまでも此処にはいられないの」
すると駄々をこねる我が子を宥めるように、レッドドラゴンは母親然と、
『ルークス。わがままを言ってはいけませんよ。ここは人間がいるところではないの。だから妾たちが彼らに付いて行きましょ。それならいいでしょ』
『うん。ママ』
『良くない!』
と、僕は思わず大声で突っ込んでしまった。
『どうしてだ? 付いて行くだけだから、迷惑はかけぬぞ』
『それだけで大迷惑です! 貴方みたいな巨大なドラゴンを連れて帰ったら、国中が大パニックになりますよ』
お年寄りがショック死するかもしれないだろ。
『小さければ良いのか?』
『駄目です。ルークスみたいに狙われるかもしれないでしょ』
『では人間の姿なら良いのだな』
そう言うやいなやレッドドラゴンは、身体が縮んで人間の姿に変貌した。
その変化に、僕たちは度肝を抜かれた。
だけど、なによりも驚いたのは、その姿がセシリアと瓜二つということだ。
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