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第2章 イグニス国編
12 暴動
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僕たちは衛兵に、エストゥス国王への取り次ぎを頼んだ。
待合室で待っていると、まもなく大国の王が、慌てた様子で入ってきて、僕の前にひれ伏した。
「大変お待たせ致しました。ヤス様。本日は、どのようなご用向きでございましょうか」
僕の肩を組んだタメ口のシオンよりも、忠実な臣下然としているエストゥス国王。
「奴隷について、色々と聞かせてください」
「はい……ですが、そちらの可愛いお嬢様は?」
ニエ姿のフラムさんが、彼を睨みつけていたので、気になったのだろう。
「彼女は人の姿をしたレッドドラゴンのフラムさんです。貴方たちを恨み、この国を滅ぼそうとしたけど、止めてもらいました。なのでこれ以上フラムさんを怒らせないでくださいね」
「どこからどう見ても人間にしか見えませんが。それに成竜が人間に従うとは思えませんし、レッドドラゴンは既にくたばっているはず──」
それをフラムさんに伝えたら、彼女は竜の姿になり、殺意を露わに唸り声をあげて威嚇した。
エストゥス国王は悲鳴を上げ、お前はエビか! と思わずツッコみたくなるほど、物凄い勢いで後退りする。
「大変申し訳ございませんでした。今は心を入れ替え、ヤス様の忠実な臣下として、誠心誠意お仕えしております。なので何卒お許しください」
彼は恐れおののき、ひれ伏しながら、僕の忠実な臣下であることを盾にして、許しを請うた。
僕がフラムさんを宥めると、彼女はニエの姿に戻った。
エストゥス国王によると、奴隷解放令を布告するも、貴族の強い反対にあい、解放は進んでいないという。
なので貴族を集めて、先ほどまで説得していたが、難航しているらしい。
国王といえども、貴族を敵に回すわけにはいかず、苦心しているようだ。
すると貴族らしき人たちが入ってきて、
「どうなされました、国王。悲鳴が聞こえましたが──」
まずいところを見られた。
ひれ伏していたエストゥス国王は、慌てて立ち上がると、
「こ、これは……躓いてしまったのだ。年には勝てぬな。はははっ」
と笑って取り繕うも、訝しむ男たち。
「国王。そこのガキどもは?」
「彼らは……その……」
僕たちのことを言えずに困り果てるエストゥス国王。
「はじめまして。僕はセルウス国の新国王でヤスと申します」
「貴様がセルウス国の国王だと?」
男たちが疑っているので、エストゥス国王は、
「彼らの身元は我が保証する。セルウス国とは同盟を結んだので、諸侯も失礼がないように──」
「そうか! 貴様の差し金だな。奴隷解放令は」
貴族のひとりが、僕を指さしながら叫んだ。
「滅相もない。エストゥス国王が僕との友好の証に奴隷を解放したのです」
と相変わらず白を切るも、貴族たちは納得がいかないらしく、
「何が友好だ! セルウス国など我が国の属国にすべきだ」
「この国は超大国だぞ。セルウス国のような弱小国と同盟を結ぶ必要はない」
「そうだとも。同盟関係は解消してセルウス国を侵略しよう」
などと言って、貴族たちがエストゥス国王に詰め寄る。
すでにセルウス国の属国になってると露知らず、貴族たちは言いたい放題だ。
仕方ないので、エストゥス国王に助け船を出そうとしたら、衛兵が駆け込んできて、
「大変です。暴動が起きました。奴隷解放に反対する民たちが、大挙して押し寄せてきました。エストゥス国王を差し出せと叫んでいます」
「総動員で鎮圧しろ」
「無理です。あまりにも数が多すぎて、とても鎮圧できません」
苦悩の表情で頭を抱えるエストゥス国王。
彼に死なれたら困るんだよね。
だって僕の負担が増えてしまうもん。
「ここは僕に任せてください。鎮圧してみせます」
そうエストゥス国王に伝え、
『フラムさん。少しだけ力を貸してもらえませんか』
『うむ。主殿のためなら、何でもするぞ。望むのなら、主殿の子を孕むことも厭わない』
『結構です』
そんなことしたら、シオンに殺されてしまう。
『むしろ主殿の子を宿したい』
『やめてください。ルークスの前でそんな話は』
『ルークスも、主殿がパパになったら嬉しいよね』
『うん。嬉しい』
『フラムさん。ずるいですよ。ルークスを利用するなんて』
『ルークス。今度から主殿をパパと呼びなさい』
『うん。わかった』
純真無垢なルークスに、嬉しそうに言われたら、否定しずらいだろ。
待合室で待っていると、まもなく大国の王が、慌てた様子で入ってきて、僕の前にひれ伏した。
「大変お待たせ致しました。ヤス様。本日は、どのようなご用向きでございましょうか」
僕の肩を組んだタメ口のシオンよりも、忠実な臣下然としているエストゥス国王。
「奴隷について、色々と聞かせてください」
「はい……ですが、そちらの可愛いお嬢様は?」
ニエ姿のフラムさんが、彼を睨みつけていたので、気になったのだろう。
「彼女は人の姿をしたレッドドラゴンのフラムさんです。貴方たちを恨み、この国を滅ぼそうとしたけど、止めてもらいました。なのでこれ以上フラムさんを怒らせないでくださいね」
「どこからどう見ても人間にしか見えませんが。それに成竜が人間に従うとは思えませんし、レッドドラゴンは既にくたばっているはず──」
それをフラムさんに伝えたら、彼女は竜の姿になり、殺意を露わに唸り声をあげて威嚇した。
エストゥス国王は悲鳴を上げ、お前はエビか! と思わずツッコみたくなるほど、物凄い勢いで後退りする。
「大変申し訳ございませんでした。今は心を入れ替え、ヤス様の忠実な臣下として、誠心誠意お仕えしております。なので何卒お許しください」
彼は恐れおののき、ひれ伏しながら、僕の忠実な臣下であることを盾にして、許しを請うた。
僕がフラムさんを宥めると、彼女はニエの姿に戻った。
エストゥス国王によると、奴隷解放令を布告するも、貴族の強い反対にあい、解放は進んでいないという。
なので貴族を集めて、先ほどまで説得していたが、難航しているらしい。
国王といえども、貴族を敵に回すわけにはいかず、苦心しているようだ。
すると貴族らしき人たちが入ってきて、
「どうなされました、国王。悲鳴が聞こえましたが──」
まずいところを見られた。
ひれ伏していたエストゥス国王は、慌てて立ち上がると、
「こ、これは……躓いてしまったのだ。年には勝てぬな。はははっ」
と笑って取り繕うも、訝しむ男たち。
「国王。そこのガキどもは?」
「彼らは……その……」
僕たちのことを言えずに困り果てるエストゥス国王。
「はじめまして。僕はセルウス国の新国王でヤスと申します」
「貴様がセルウス国の国王だと?」
男たちが疑っているので、エストゥス国王は、
「彼らの身元は我が保証する。セルウス国とは同盟を結んだので、諸侯も失礼がないように──」
「そうか! 貴様の差し金だな。奴隷解放令は」
貴族のひとりが、僕を指さしながら叫んだ。
「滅相もない。エストゥス国王が僕との友好の証に奴隷を解放したのです」
と相変わらず白を切るも、貴族たちは納得がいかないらしく、
「何が友好だ! セルウス国など我が国の属国にすべきだ」
「この国は超大国だぞ。セルウス国のような弱小国と同盟を結ぶ必要はない」
「そうだとも。同盟関係は解消してセルウス国を侵略しよう」
などと言って、貴族たちがエストゥス国王に詰め寄る。
すでにセルウス国の属国になってると露知らず、貴族たちは言いたい放題だ。
仕方ないので、エストゥス国王に助け船を出そうとしたら、衛兵が駆け込んできて、
「大変です。暴動が起きました。奴隷解放に反対する民たちが、大挙して押し寄せてきました。エストゥス国王を差し出せと叫んでいます」
「総動員で鎮圧しろ」
「無理です。あまりにも数が多すぎて、とても鎮圧できません」
苦悩の表情で頭を抱えるエストゥス国王。
彼に死なれたら困るんだよね。
だって僕の負担が増えてしまうもん。
「ここは僕に任せてください。鎮圧してみせます」
そうエストゥス国王に伝え、
『フラムさん。少しだけ力を貸してもらえませんか』
『うむ。主殿のためなら、何でもするぞ。望むのなら、主殿の子を孕むことも厭わない』
『結構です』
そんなことしたら、シオンに殺されてしまう。
『むしろ主殿の子を宿したい』
『やめてください。ルークスの前でそんな話は』
『ルークスも、主殿がパパになったら嬉しいよね』
『うん。嬉しい』
『フラムさん。ずるいですよ。ルークスを利用するなんて』
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