推しの運命を変えるため、モブの俺は嫌われ役を演じた

月冬

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#第5章 俺も同じだ

レオンが教室を飛び出してから、
学園は、静かに騒がしかった。

「聞いたか? あれ」
「やっぱ本物だったな」

玲が教室の扉を開けた瞬間、ざわめきが止む。
空気が変わる。
けれど、数秒後にはまた小さな波のように声が戻る。

「お前、あいつとよく一緒にいたよな」
「どうなんだよ実際」
「あいつマジでやばいの?」

玲は無言で席に向かう。
だが、クラスメイトが道を塞ぐ。
口々に言葉が飛ぶ。

「なんで普通に授業出れたの?」
「教師も何考えてんだか」
「隔離とかできねぇの?」

その中の一人が笑った。

「近くにいるだけで事故りそう」

「……だまれ」

「は?」

振り向いた瞬間、玲の拳が飛んだ。
鈍い音。
椅子が倒れる。
教室が悲鳴を上げる。

「な、何すんだよ!」

玲はゆっくりそいつを睨みつける。

「これ以上口をひらくな」

凍りつく空気。
さっきまで騒いでいた教室が、嘘みたいに静まり返る。

玲の目は、本気だった。

「……何キレてんだよ」

殴られた男子が、口の端を拭いながら笑う。
嘲るように。

「お前だって言ったじゃねーか」

玲の動きが止まる。

「“気持ち悪い”ってさ」

時間が、落ちる。
鼓動の音だけがやけに大きい。

そうだ。
言った。
自分の口で。
あいつが一番傷つく言葉を。

「何正義ぶってんだよ」
「……」
「結局お前も俺らと同じだろ」

玲は拳を握る。
震えているのは怒りじゃない。
後悔だ。

「……ああ」

声が低く、乾いている。

「俺も同じだよ」

守るためだった?
シナリオのためだった?
そんな理由、あいつには関係ない。
届いたのは拒絶だけ。

俺は、あいつを傷つけた側の人間だ。

選ばれないどころか、
裏切った側。

モブだ。

玲は教室を出る。
背中に視線を浴びながら。

廊下に出た瞬間、息が荒くなる。
胸が痛い。

でもこれは代償だ。
あいつが生きるための。

これでいい。
これが正しいルート。

そう言い聞かせるしかなかった。

けれど――

正しいはずなのに。

……胸が、苦しい
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