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学校で

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ここどこだ?

あれ?俺、空飛んでね?
ビルくらいの高さ飛んでるよな

あー、夢かーー

そんなことを考えたかと思うと、突然ガクンッ、と急降下し始めた。

ええええええ?!?!

やばいっ!落ちるーーー

「ぐへえっっっっ」

突然お腹に殴られたような激痛が走り飛び起きる。

「いってえっ!!なんだーー?」

お腹の方をみると、その上にダイブしたんであろううつぶせのミシェルが顔を上げた。

「あ!やぁっとおきたっっ!!

やっぱダイブしたらみんな起きるんだな

ーーーーーーーーいてぇっっ!!

なんで殴るんだよぉ!!起こしただけじゃんか!!」

りんごの鉄槌がミシェルの頭の上に落ち涙ぐみながら抗議する。

「半殺しにしてねえだけましだろ。やっと今ノアの気持ちがわかったわ」

「やめてよ!あいつの話は!思い出しただけでもーーーうっ」

「回し蹴りをくらったんですよねー。寝起きにしては見事な蹴りでしたー、的確にヒットしてましたからね」

はははー、とからかうようにライトがわらう。

「あいつ、大人げないんだよ!シリウスにしたときは笑って許してくれたのに。
ノアはまじでおれのこと殺すつもりだった」

「よく笑って許してくれたって思えましたねー、そのあとシリウス自作の薬品の実験台にされて寝込んでたの、覚えてないんですかー?」

「シリウスもお前のこと殺そうとしてたんじゃねえか」

りんごが突っ込む。

「でも、蹴られるよりまし!痛いのやだもん。」

「苦しいのはいいのかよ」


そんな話をしていると、ガラッとりんごの部屋の扉が勢いよく空いた。

「ようやく起きたか」

カイルがしかめっ面でたっていたのだ。

「今から、過去での注意事項を説明するから布団からでろ」

「…あい」

「昨日リアムが言ったように、この時代の俺たちに接近することになる。今のところノアしか見つかってねえが、接近するときはもちろん俺たちが近くで見張ってる。未来のこととか俺らのこととか言ったら切り殺しにいくからな」

カイルのガチトーンにゾッとするりんご。

絶対変なこと言わない!!!

「この時代の俺らは、当たり前だがお前のことを知らない。間違っても名前で呼ぶな、ノアのように偽名を使っているかも知れねえ。

さらに、この時代ではまだ能力を得てねえ。ここでは、普通の一般人となにも変わらねえからな。

一番お前に期待してるのは、俺たちのことをうまく聞き出すことだ。どうして日本にきたのか、どこで生活しているのか、だな」

「僕たちは、ケニーっていう親代わりと暮らしてたんですー。ケニーのこともそれとなく聞いてほしいですね」

「……」

「あらら、なんで黙ってるんですかー?」

ライトが見かねて固まっているりんごに話しかけるとりんごが呟いた。

「情報量が多い」

「これでも本来の十分の一くらいなんですけどねー、りんごくんを配慮してだったんですが、その上でしたかー」

「お前今、バカっつったか?」

「遠回しに言ったの、気づきました??」

てめえっっとライトに向かって身を乗り出した瞬間、下からどでかい怒鳴り声が聞こえてきた。

「りんごおおおおっっ!!!!学校はああああ??!!!」


「ええ?だれ?めっちゃこわい」

声を聞いた瞬間、ミシェルが萎縮して布団の中に隠れる。

「しまった!!!もう9時じゃねえか!!」

りんごが慌ててバックを手繰り寄せ、制服に着替える。

「わわっそれ、制服だぁ!学校行くの??おれもいーーー」

キラキラさせていたミシェルだったが、カイルがこちらを睨んでいることに気づき、口をつぐんだ。

「てめ、俺たちの仕事、もう忘れたとか言わせねえぜ?あ?」

「わかってるよ、わかってる!言ってみただけ!!」

そんなやりとりをしているとりんごが部屋を出ようとしていた。

「おい、ひとつだけいっておく。この時代は未来に行ってからここへ戻るまでの時間がたっている。ーーつまり、お前は未来に行った日から二日たってるっていうことだ」

「え?」

「りんごおおお!!声がしたからいるのはわかってんのよぉ!!!」

「やべっ、母さんブチギレてる!!」

急いでダダダッと階段を駆け下りると、母が階段の下で仁王立ちしていた。


「あんた!!昨日はお客様がきてたから聞かなかったけど、一昨日どこに行ってたの?!?!何も言わず帰ってこないからびっくりしたじゃない!!学校からも連絡があったし!!」

「そのっ…ーーそうそう!!たかしんちいってたんだよ!!思い出したわ!」

「学校も行かずに?!」

「いや、えーと…」

「ーーはぁ、もういいわ。早く行きなさい。帰ってからたんまり聞かせてもらうわ」

母が弁当と水筒をりんごに渡しながら諦めたようにいう。
りんごがそれをバックに入れ、ドアを開けようとすると母がしかめっ面でいった。

「なにか、面倒ごとに巻き込まれてるんだったら、母さんにいいなさいよ」

「わかってるって!!ーー行ってきまーす!!」




学校へ向かう通学路を走っていると、カイルが先の方でたっていた。

「な?!?!さっきまで家にいたんじゃーー?!」

「先回りしてテレポートしたに決まってんだろ」

「せけー!!!」

「あ?」

「いえ…」

カイルの睨みにすぐに小さくなるりんご。
なにしにきたんだ、と思っていると不意にカイルがりんごに何かを渡した。

「持っておけ、なにかあったら知らせるんだ」

「ーー結晶?なんだこれ?すげえ綺麗」

「通信機だ、名前を呼べばそいつに繋がる」

「便利だな。あざす!ーーあれ?!」

気がつくとすでに学校の前にたっていた。

「ついでだ。じゃあな」

フッ、とまたカイルが消えた。

「テレポート、カイルもリアムなみにうまかったな。シリウスだけか、下手くそなのは」




ーーガラッと教室の扉が開く。

「担任かよ。つか、りんごのやつまた休みかよーー。昨日もだったよなぁ」

小声で呟いたのは高松たかし、りんごと同じクラスである。隣の席の高桜さゆが頬杖をつきながらため息をつく。

「さぼりでしょ、どーせ。てか、美知あんたそれ教科書逆よ?」

「え?ーーあ、気づかんかったぜ。サンキューな」

五条美知、りんごより足の小指ぶんくらい成績が上で、いつも点数を競っている。
男子顔負けの運動神経と、喧嘩だけはトップクラスである。

「さすが、ワースト2位だね!」

「おい、高松。あとで体育館裏な。ボコボコにしてやんよ」

「それは勘弁っ」

「ちょっと、うるさいわよ。朝陽が困ってるじゃない」

「…!ーーいや、俺は別に」




ーーーー「遅刻だああああ!!!」

「ーー!!!!」

突然の大声からのドアが勢いよくあき、りんごがはいってきた。

「りんご!おせーよ、お前!!」

高松が呆れながらりんごに向かって叫ぶ。

「わりー!!いろいろあってさ!」

絶対あいつらから理由聞かれるな、なんて答えたらいいんだ??

いいわけをぐるぐると考えていると、後ろから肩をポンポンされた。


ーー担任の、山部であった。いつものボサボサの髪でりんごを呆れたようにみている。
 
「お前、今の時間何時だかわかるよな??」

「…あい、すんません。」

「まあ、いい。事情は知ってるしな。」

「え?知ってるんすか?」

俺、言ったことねえよな?母さんが気聞かせていってくれたんかな?

素っ頓狂な声をあげると突然クラス全員が笑い出した。

「え?なに?なんだよ」

担任を振り返ると、山部も笑いを堪えていた。

「いや、ゆえん。お前が傷ついているのは知ったからな」

「は?どゆこと…?」

りんごが何かわからず戸惑っていると、突然美知が声を上げていった。

「お前、成績が悪すぎて、人生を憂いて寝込んだんだろ?!?!」

「は?」

みんな堪えきれずに笑う。

「お前のかーさんがそう言ったんだよ…ふふっ」

母さん!!!!!いやばかなのか?!?!もっといいごまかし方あったろ!!!



ーー顔を赤くし下を向きながら、席についた。

よかったぜ、一番後ろで。
だれもいねえからな。


「これ、プリントだ。」

「ああ、さんきゅ」

ん?まてよ、俺の前、男だったか?たしか、さゆだったはずじゃ?いや、さゆ隣にいる。なら、だれだこいつは。

「ーーなぁっ」

グイッと前の人物の肩を引っ張ると、見覚えのある顔があった。

「ーーーは」

「痛いだろう、なにをする」
その人物が顔をしかめながらこちらを向いた。



ーーそこにいたのはレグルスだった。

教科書に五十嵐朝陽、とかいてあった。
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