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新たな未来政府関係者
しおりを挟む「りんご?!お前こそここで何やってーーー?!」
拓哉が同じく茂みの中にいたりんごの姿に戸惑いを隠せないでいると、緑色の髪の男が茂みの外からこちらを見ていることに気づく。
「これがお兄様ですか。」
「?!誰だ?」
「そうだ。でも兄貴はいたけどあの人はいないみたいだな。」
と、驚く拓哉に構うことなく、りんごは淡々と男と話をする。
拓哉と同じくらいの歳の男と2人で会話をする姿に、拓哉はオーバーヒート寸前だった。
なんだ?誰だこいつ。りんごのクラスメイトってわけじゃなさそうだよな。歳も俺ぐらいだろうし
特に服!
なんだあのコスプレみたいなファンタジーな服は
しかも、顔も眉毛のせいで全てが残念だし
今どき太眉が流行ってんのか?
つか、お兄様ってなんだ、まじで
「兄貴」
りんごの声で我に返る拓哉。
「こんなところで何してたんだ?兄貴は刑事だよな?」
りんごがキョトンとした顔で尋ねる。
ぐっ、痛いところを突いてきたな
「はえ?あ、ああ…。いや、事件の被害者がここで入院してんだよ。え…と、俺はその観察かな」
本当はあの銀髪の男を探りにきたんだが、まさかりんごと遭遇するとは。
りんごは覚えてないって言ってたけど、やっぱり真実がどうしても気になる。
つか、夢の中にいた人物と全く同じやつが存在してるなんてことありえるのか?
つっても、今のとこは女とイチャイチャしてるとこしか見てねえが
モテるからってムカつくな、まじで
思い出したら腹立ってきやがった
表情が七変化しながら、辿々しく拓哉が説明すると、その様子を見て、りんごの隣にいた緑色の男の方が怪訝な顔をしだす。
「ふん、観察?こんな茂みで、ですかぁ?部屋の中なんて見えないでしょうに。
残念ですが、このアンポンタンは騙せても私は騙せませんよ」
うげっ、やっぱそりゃそうなるよな…
「ん?アンポンタンって誰のことだ?まゆげぇ?」
少し焦ったものの、りんごの一言に、バチバチと激しく睨み合う2人。
「おい!まて、つかまだ俺の質問に答えてねえだろ!誰だ、そいつは!」
「あ?オスカーだけど」
それが誰だか聞いてんだろうが!
バカタレ!
「もういい。聞いた俺が間違いだった。それで?何をしてるんだ、お前こそこんなとこで」
拓哉が諦めたように、髪をぐしゃぐしゃとしながらりんごに尋ねる。
「ああ、あのチャラついたナンパ野郎に喝入れるためにーーーーむぐっ!!?」
「何本当のことを言おうとしてるんですか?!バカなんですか?!これは極秘のーーー」
「チャラついたナンパ野郎…?」
男のはなしはそれ以上、頭に入ってこなかった。りんごの言葉に目の前が真っ白になる。
ーーチャラついたナンパ野郎?
拓哉の鼓動が速くなる。
それって銀髪の男のことだよな…?
一体どう言うーー
いや待て待て待て。
そんなはずねえだろ
だってあの時覚えてないって…
思い出したのか?
意を決して、拓哉が顔を上げると、すでにりんごはおらずオスカーと呼ばれた男だけが立っていた。
「どこーーに?!」
後ろを振り返ると、りんごは意気揚々と銀髪の男の方へ歩き出していた。恐らく喝を入れに行ったのだろうと予想する。もしかしたらと期待を寄せ、釘付けになって息を呑んで見守る拓哉。
そんな拓哉の様子を、オスカーは不審に思い、黙って観察していた。
一方、りんごはシリウスのところへむかう。
近づくにつれ、シリウスが甘ったるい声で話しているのが聞こえてきた。
「もう、こんな時間かぁ。さくらちゃんがいると時間経つの早いのな♪」
その甘い言葉に、早くも胃もたれするりんご。
やべぇ、マヨネーズを一気飲みした後に、さらにマヨネーズを一気飲みしたぐらい気持ちが悪いな。
まじでこいつ、女にしか興味がないんだ。
逆に、俺も女装したらちやほやしてくれんのかっっっ?!?
「え今日、この後仕事があるって?
ざーんねん…
また俺に会いに来てくれる?つか俺、毎日じゃくて毎秒さくらちゃんに会いたいんだけど♪
だから、連絡先教えてほしいな♪
やった、ありがと!ーーーーー」
うっわうっわ!!
腹立つな、腹が立って蕁麻疹がでてきたよ
どうしてくれんだ
何が毎秒だ、ほぼ監視じゃねえかよっ!
腹いせに、裏声で俺も言ってやる
どうせ、こっち見えてねえし
よし、えみりを思い出してーーー
えみりならどういうかを考えて、大きく深呼吸をする。
「あたしも教えて❤️」
りんごが、向こうを向いているシリウスの裾を引っ張りながら言った。我ながら完璧に女声になったと、どやる。
「はいはい♪今度はどのかわいこちゃんーーー」
そこで、シリウスの言葉が途切れる。
裾を引っ張っているのが男だと分かると、途端にシリウスの顔から笑顔が消えていく。
「俺にも、連絡先教えてくれ」
忘れてるのかと思い、次は地声で念を押すようにもう一度言うりんご。シリウスは真顔のまま少し考えてから、愛想笑いをして、病院の張り紙を指差す。
「あー、はいはい。患者さんかな?
病院のは、そこにバーコードあるから好きに追加しな?
じゃ、俺は忙しいから坊やは早く家にーーー」
と、背を向けようとするシリウスに必死で食らいつく。
「ふざけんなっっ何無かったことにしようとしてんだよっっ!おまえのだっつのぉ!聞こえてたよなぁ?!?!」
「………。」
その言葉に、シリウスの顔から本格的に笑みが消え去る。しかし、隣に女の子がいる手前、また愛想笑いに戻った。
「なんだ、このガキ…。
あー、悪いけど俺、携帯持ってないんだよね♪」
「おまーーー今、ボソッと言ったの聞こえてんぞっっ!!
つか右手に持ってんのはなんなんだよ」
「これは、彼女のさ♪」
シリウスが悪びれることなく、微笑む。
どうやら、先程の女との会話もなかったことになっているようだった。
「ぐっ、まぁ言いたいことは山ほどあるけどーーーその彼女も持ってるみたいだな?
しかも、両方とも最新型のスマホだし」
りんごが、めざとく指を指すと、しばらくシリウスは笑顔のまま、再び固まった。
しかし、すぐに女の方を向き直ると、病院の扉を開け始める。
「じゃ、診察いってらっしゃい♪」
女が受付の方に行くまで笑顔で手を振るシリウス。
しかし、女が見えなくなった瞬間、まるで映画のように途端に笑顔が消えさる。
そして、不機嫌そうにりんごを睨みつけた。
突然の態度の急変に、思わず後退りする。
「あー、まじ何の用だよ。さっきからギャーギャーうるせえな。
さっき俺とあの子いい感じだったの、見えなかったのか?このクソガキ。あのまま愛想つかれたらどう責任取ってくれんだ?」
「クソガキてーー」
未来とは、全く違う男に対する態度に血を吐きながら笑顔で固まるりんご。
「つか、だれ?俺とお前、初対面だよな?普通に考えて、連絡先なんか教えるわけねえだろ。しかもヤローのなんてなおさら」
なんなんだ、こいつ。口わっるいな!!
未来の方が五千倍優しいぞっっ
まだ、笑顔で捨てられるんだからなっっ
いや、それもそれで悲しいけどっっ
つか、この物語の主人公俺だよな???
扱いめっちゃ雑じゃね?!?!
もう涙が出てくんだけど?!?!
「連絡先…」
「あ?なんて?」
シリウスがか細いりんごの声に不機嫌そうに耳を傾ける。
「連絡先が知りたいいい!!!」
と、でかい声で言ったかと思うと、勢いよくシリウスに飛びついた。
「どわっっ?!なんだよ!引っ付くんじゃねえよ!鼻水がつくだろうが、気色悪い!」
「主人公の鼻水なんて光栄だろ!!お前らなんか脇役だからな!!主人公の人柱どもだからなっっ!!
つか教えてくれるまで絶対離すもんかっっ」
ギュッと引っ付いて意地でも離れないりんごに、さすがにドン引きするシリウス。
これには、オスカーと拓哉も冷たい目で茂みからりんごを見ていた。
「何やってるんですか、あのバカたれは」
オスカーが心底呆れたように言う。
拓哉も呆れすぎて言葉が出ない。
うん、違ったわ
別に思い出してねえな、これは
期待した俺がバカだったわ…
やっぱりりんごはどこまで行ってもりんごだな。
「いい加減にしろ!このガキ…っ!教えるわけねえっつってんだろ!
この後も女の子が俺に会いにくるんだよ!離せ…っ!」
「いいじゃねえか!俺付きでも愛してくれるって!つか教えてくれたら離すっつってんだろ!」
ギリギリギリギリとりんごを離そうと奮闘する一方で、りんごも絶対に離すまいとさらに強く力を込める。
「ヤローに教える連絡先なんかねえよ…っ!」
シリウスがそう言った時だった。
「雲河せんせぇっっ❤️」
オスカーたちのいる背後から、キャピキャピした声が聞こえる。
その声に、オスカーの表情が固まった。
「あ♪クレアちゃ~ん♪」
「ーーえ?引き剥がさーーーぐぇっっ?!?!」
先程まで奮闘していたのに、女を見た瞬間、人間とは思えない力でりんごを投げ飛ばし、満面の笑みになるシリウス。りんごは、そのままオスカー達のいるところにごろごろ転がっていった。
「あたし、今日ずっと先生のこと考えてた!」
「ちょー嬉しい♪俺もだよ」
「………っっ!!」
おいいいいいっっ
こんな可愛い俺を投げ捨ておって…っ!
何が考えてた、だ!さっきまで別の女といたくせに!!
つーか俺だって、お前の過去が変わったせいでここ数日、片時も忘れたことねえからなぁ?!
「おい!オスカー、仕返しーーー!」
と、りんごがオスカーに向けて言った時だった。
ーーーーバキィイイっっ!!
「?!?!?!?!」
オスカーの手から、先程握り潰したのであろう、いかにも高そうなペンが無惨な姿で地面に落ちる。
りんごの額から冷や汗が流れ落ちた。
さらに、すぅう、と静かに息を吐き出す様子にびびり上がる拓哉とりんご。
「ど、どったの?」
「ーーどうしたもこうしたもないです。
通りでずっと顔を見かけないと思ったんですよねぇ?番人が捕まった今おとなしくしてるかと思ったのですが、まさか、ここに通っていたとは盲点でした。」
と言うと、オスカーがペンを踏み潰し、ズンズンとシリウスと女の方へ進んでいく。
「クレアちゃんって普段どんな仕事してるの?ここ最近、毎日会いにきてくれてるけど日常の話したことないから、知りたいなぁ?」
「え?あたし?んー、あたしはだいぶゆるい系のとこかなぁ?でも上司が苦手っていうか、絶対眉毛どうにかしたらイケメンなのに、勿体無いって言うか。でも頭の硬い人なのよねぇ。それであたしがどれだけ苦労してるかーーー」
と、クレアが言ったところで背後に悪寒が走る。
「ほぉお?苦労ねぇ?むしろ、私の方があなたの尻拭いをさせられているんですがねぇ?」
「ーーーー?!?!?!」
ガタッと立ち上がるクレア。
振り返ると、顔に筋を浮かべたオスカーが立っていたのだった。
「げげっっ!きてたんですね…オスカーせんぱい…」
その返事を聞いた後、オスカーがシリウスに背を向けるようにクレアを引っ張っていき、小声で叱責する。
「来てたんですねぇ?じゃないでしょうが!未来のチャラ男だけでは飽き足らず、とうとう過去にも手を出したようですねぇ?この恥晒しが!貴方のおかげでここ最近ロストチャイルド課の評判が駄々下りなんですよ!」
「いやいやいやいや?!待ってください!違いますよ?!あたしもちゃんと未来政府に任命されてきたんですから!
そんな罪人みたいな言い方やめてください!
調査のためにいやいや、仕方がなく!!彼に近づいたんですから!!」
「彼って言うのやめてもらってもいいですかねぇ?気持ちが悪くて、はらわたが煮えくりかえりそうなので」
「あらぁ、もしかしてですけど先輩、僻んでます?男のくせになっさけなぁい♪」
その言葉をきっかけに2人の間にバチバチと火花が飛び散る。
すると、シリウスが痺れを切らして話しかける。
「んん?クレアちゃん、そいつだれ?」
笑いながら、クレアに話しかけてはいるが、目は全く笑っていない。
その表情に血を吐き、クレアは顔の全ての筋肉が緩んだ笑いをする。
その表情にドン引きするオスカー。
強引に引っ張られ、今度はクレアが耳打ちする。
「可愛くないですか?
嫉妬してくれてるんですよ、あたしに!!未来の大人な雰囲気も素敵ですけど、幼い感じも本当に素敵ですよね❤️やっぱ、先輩とは違うっていうか!!」
「何なんですか?それは。先輩の私を貶してるんですか?」
「やだぁ、被害妄想やめてくださいよ」
また、険悪なムードになるが、シリウスには2人が耳打ちしている様子が仲睦まじそうに見えたようで、さらに機嫌を悪くして、ひきつった笑顔で聞いた。
「もしかして、そいつクレアちゃんの彼氏?」
「そんなわけあるか!!気持ち悪い!!」
「そんなわけがないでしょうが!!!気色が悪い!!」
シリウスの問いかけに2人同時に大声で否定する。クレアの声はドスが効いており、先程シリウスに向けて言ったトーンとは、にオクターブくらい低かった。
この声に、少しだけ後退りするシリウス。
ようやく気を取り直したクレアが後退りするシリウスに飛びつき、先程の2オクターブ高い、甘えた声で言った。
「ごめんね、雲河せんせえ。あたし、急用を思い出しちゃった。また明日も来るから今日は帰るね」
「はぁ?何を言ってるんですか、貴方は。明日もなんて、そんなの許すわけーーーぐふっっ?!」
「ややこしくなるので黙っててくれますぅ?」
と、ドスを効かせた後、
「じゃあせんせえ❤️またね」
「ーークレアちゃんーちょっと待って?」
シリウスを半ば強引に、病院の中へ押しやるクレア。
推しやった後すぐに上司であろう女のヒステリックな声が聞こえてくる。
「雲河くん?!どこで油売ってたのよ?!?!」
それを聞くなり、クレアが同情しながら言う。
「わー、怖そ~。ごめんなさぁい、せんせ」
シリウスがいなくなると、オスカーが声を荒げてクレアに詰め寄る。
「一体どう言うことなんですか?これは。なぜ貴方がここにいるんです?」
オスカーが、頭を抱えながら言う。上になんと言えばいいかを考えているようだった。
「その話よりも!」
と、クレアがオスカーにりんごたちには聞こえないように小声で怒る。
「先輩こそ、始末書ですよ!
ーーあの子を一旦未来に連れてくるって会議で決まってたっていうのに!」
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