父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】

ぴろ

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始まりの予感

貴公子様は反芻する

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アキの手に触れた…
手の甲に口づけた…
自分の研究室に戻ったカイは、椅子にもたれ目を閉じた…

氷の貴公子という呼び名のおかげで、無理して笑顔を作る必要はない。
表情が乏しい俺を心配する母上に父上は言ったんだ。

「私も君に会うまでは微笑み方を知らなかった。カイも運命に出会えば変わるよ」

昨日アキに再会して、変わりたいと思った。

朝の応接室でアキに声をかけられ、昨夜の礼を告げる事ができた。
上手く笑えなかったが、俺の言葉にアキが微笑んだ、嬉しい。

エーミル様に挨拶をする。
アキと仲良くなったかと問われたのに返事ができない。
ルーカスの笑えない冗談すら羨ましい…あんな風にアキに近づきたい。

話し合いの内容は正直よく覚えていない。シールズが何かを企んでるとか…もしアキに害を成すなら全力で潰すまでだ。
隣に座るクラウスに分からないことをこっそり尋ねるアキが可愛い…隣に座れたら私にも尋ねてくれただろうか…

アキの御披露目に合わせてクラウスの婚約発表を行うらしい。
ライバルが一人減った事に安堵していると、エーミル様から信じられない提案が…御披露目でアキのエスコートが出来るらしい。
皇太子の息子で良かったと初めて思った。案の定ルーカスは剥れている。

別れの時…ルーカスがまたしても経験値の差を見せつけてきた。
アキを抱きしめ髪に口づけた瞬間、俺を見てニヤリと笑った。
挑発するような言葉とともにアキの額に口づける。
離れろ…そう言いたいのに動けない。アルト様が来て二人を引き離しルーカスはサファに帰っていった。

帰り際に会いに行く許しを得る。はにかみながら頷くアキの手の甲に口づけたあの瞬間、いままで知らなかった感情が沸き上がってきた。
嬉しいとはこんな気持ちなのか。
気がつけば自然に笑みがこぼれていた。驚いた顔のアキ…
父上母上に続いてアキを抱きしめる。さりげなく優しく、邪な気持ちに気付かれないように…

「不自然ではなかったはず…」

閨教育も断り周囲とも距離を取ってきた私の知識は全て書物から得たもの。片膝を付き手の甲に口づける、それすらも初めての経験だ。
無論エスコートなどしたことはない。

「練習が必要だな」

まずはアキの等身大人形を作ろう。
エスコートに必要な動作とダンスの動きも覚えさせたい。欲を言えばアキの表情も再現したいが今の俺の技術ではそこまでは無理だ。
アキの部屋で見た道具をもう一度見せてもらって異世界の技術を取り入れたら良い物が出来るかもしれない…

「日がないな、急ごう」

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