父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】

ぴろ

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未来へ

ヨエルの困惑

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「ヨエルはどう思う?」

まただ…ダニール様はいつも俺の考えを確認する。
僕は兄上のように優秀な王子ではないし、誰かに意見を求められる事なんて殆どない。

今日はドラゴアに新しく導入された路面魔動車の話をカイ様が説明されたんだ。

「確かに画期的ですが、国土が狭く人口密度の高いドラゴア以外はまだ早急に整備する必要はないと思います。シールズもフォレストも国土が広いですから転移門の方が使い勝手がよいのでは?」

「確かに…ヨエルは凄いな…」

調子が狂う…凄くなんかないよ、どうせ僕は可愛いだけの第二王子なんだから…

「ヨエルの言う通りだ、今のシールズは三ヶ国に比べて圧倒的に転移門の数が少ない。使えるのも特権階級のみ…まずはそこを変えていくべきだと思う」

カイ様まで…

「それにヨエルは作物の品種改良の知識は学者級なんだろう?シールズに今最も必要な分野だと思うぞ。魔道具も大事だが農業の発展も大事だ」

「そうなのか?ヨエルは凄いな、今度詳しく話が聞きたい…」

「王宮の温室で趣味の延長みたいな研究をしているだけですよ、お役に立てるかどうか…」

「クラウスがいつも褒めているぞ、王宮の庭師達も一目置いていると…」

「属性が地なので…それに褒められる程の結果を出している訳ではありません…」

「研究というのは長い積み重ねの先に成果があるのだろう?私は知識がないから詳しくは分からないが、ヨエルの頑張りがこの美しい庭園なら誇るべきだ」

本当に調子が狂う…
褒められるのは慣れていないんだ。

「ありがとうございます?」

僕の周りの男性達は土いじりすると僕の手が荒れてしまうって言うのに…この人は止めないし誉めてくれる…

「何故疑問形なんだ?ヨエルは若いのにきちんと自分の考えを持っていて凄いなといつも思っているぞ?」

ほら…また…

ダニール様はこの二週間で物凄く変わった。最初は僕と一緒にへばっていた鍛練も、今はアキ兄様と打ち合いが出来るまでになっている。

アキ兄様は女神の加護持ちで鍛練なんか必要ないのにメチャクチャ強い。
初めて鍛練場に行った時に見て驚いた。平和な世界で育ったのに何故?って聞いたら守られるだけは嫌なんだって。
産める男性は守られるべきだと思ってた僕には衝撃だった。

「守りたい人達が沢山できたからね、それにカッコいいじゃん…」

そう言ったアキ兄様は最高にカッコよくて、綺麗で眩しかった。最初はミハイル様目当てで参加した鍛練だったけど、今は自分の為に参加している。
僕も守られるだけは嫌だ。

ダニール様の変化はアキ兄様の料理の影響も大きいと思う。
毎日お昼に食べるとおどろくほど調子がいい。とびきり美味しいのはもちろんだけど、多分癒しの力が入ってる。
あの居心地のよい部屋で過ごす時間が終わってしまうのかと思うと寂しいな…

「ヨエル、カイ、そろそろアキの部屋に行こうか。今日は何だろう?」

「親子丼とかいう料理らしいぞ、オムライスみたいに卵がトロトロらしい…」

「異世界料理ですね、楽しみ~」

明後日にはダニール様はシールズに戻る。
次に会えるのは兄上の結婚式。
その時までに小麦の新しい品種が形になるといいな…
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