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4巻
4-2
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将軍の居場所へと続く道を、俺たちはクーナの尻尾を見ながらついていく。
周りには古めかしい屋敷がいくつもある。お偉いさんたちが住んでいる区画であり、普通は俺たちのような田舎者がやってくることなどない場所だ。
といっても、俺たち自身はあくまでおまけなのである。クーナの従者ということで、同行を許可してもらっているに過ぎない。
案内してくれている魔物は屈強な鬼で、大剣を腰に佩いている。失礼を働けば、あれで首を刎ねられるかもしれない。
迂闊なことはできないし、気を引き締めていかないと……
緊張気味な俺の前を、ゴブがケダマを転がしながら歩いていく。空気を読めと言うのはもう諦めたが、もう少し主人の気持ちを気遣ってくれてもよくないか?
呑気な二匹を見ていると、ウルフがちょっとだけ歩く速度を遅くして俺の隣に来て、肉球でぽんぽんと叩いて励ましてくれる。
……泥がついたんだけど。
このわんこもたまにはドジってしまうこともあるようだ。緊張しているのかもしれない。
普段ならこれでいいけど、将軍に汚い姿で会うのはなあ。そんなことを思っていたが、ケダマもゴブもすでに汚くなっている……まあいいか。
何度も角を曲がり、入り組んだ道を進んでいく。こうした複雑な街並みになっているのは、防衛のためだろうか。なにかあっても、簡単には逃げられなさそうだ。
そうしているうちに、巨大な城に到着する。
中に入るよう促されるが、なんだか処刑を待っている気分に近い。小心者なので、いざ本番になると帰りたくなるのである。
そんな俺のところにライムがやってきて、俺のズボンの裾を払い、寝癖を直し、服を整えてくれる。そして満面の笑みを浮かべた。
俺は気合を入れて、少し早歩きで歩き始める。クーナはすでに俺をおいて先に行っていたから。
階段を何度も上がって、ようやく辿り着いた屋敷には、俺たち一行だけが通されることになった。
「失礼します」
クーナが扉を開けて中に入ると、内部には巨大な柱が数本ある以外になにもなかった。薄暗い部屋の向こうに鎮座しているのは巨大な鬼。絡新婦がいた屋敷の納屋で見た置物とそっくりだ。
クーナが跪くと、俺も慌てて続く。ポンコツ丸がガシャンと大きな音を立てるのを聞いて不安になりながら、俺はぼんやりしているケダマを掴み、うろうろするゴブをウルフが床に押し付ける。
そして、ぎょろりと剥いた鬼の瞳がこちらに向けられた。
視線の先には、優勝したクーナ――ではなく俺だ。
「……魔物の従者たる魔物使いか! 初めて聞いたな、そのようなものは!」
大笑する鬼の将軍。
一目見ただけで魔物使いとわかるとは、やはり俺のことを知っているのか。ここは魔物が大量に住んでいるから、魔物を連れているだけでは判別がつかないはず。
「不思議そうな顔だな、シン。久しい我が主よ」
俺は鬼と契約したことはないし、どういうことかと思っていると、腰の刀がカタカタと揺れた。
「あー! お前さん、お前さんじゃねえか。なんて言ったかな、まあいいや。久しぶりだなあー。懐かしいな、お前さんが俺を使って、魚を串刺しにして焼いたのは今でも覚えてるぜ!」
「そのような記憶はないな」
……おい! どうなってるんだよナマクラ丸!
知り合いだって言ってたじゃないか。全然会話がかみ合っていない!
優勝したのはクーナなんだから、本来は彼女が話すべきところだが、名前を呼ばれた以上は俺が話すべきだろう。
なにから聞こうか。
「やはり変わらないな。疑問が顔に出ているぞ。ならば一つずつ、説明するとしようか」
そう考えていると先に言われてしまったので、俺は頷くばかり。
ゴブがやれやれ、とでも言いたげに見てきた。こいつ、あとで晩飯に大量のからしを仕込んでやるから覚悟しておけ。
やがて鬼が語り始めた。
かつて一つの世界があった。その世界には自己を保存、複製する機能が備わっており、千年の時を経るごとに初期化して一からやり直してきた。
「主の言葉で説明するならば、バックアップを復旧してきたといったところか。世界が始まってから千年後、破滅へと向かいつつある世界は、それを回避するために、何度も過去の世界をロードした。千年間存在し続けた世界は消え去り、また一から世界が始まる。何度も何度も、同じことを繰り返してきた」
いったいなんの話であろうか。例え話なのか、それともこの世界にはそういった概念があるのか。
しかし、何度も世界がゲームオーバーからコンティニューし続けたところで、ゲームじゃあるまいし、時間はたっているのではないか。
「やり直したところで、それはよく似た世界が複製されただけではないのか?」
「いいや。時間すらも元に戻ってしまうゆえに、その世界は存在そのものがなかったことになり、新しい世界が取って代わる。そこに住まう者の意志も尊厳も生きた証もなにもかもが、完全に消え去ってしまう。だから世界に反旗を翻した者がいた」
世界云々についてはよくわからないが、自身の存在を消されるのに反抗したというのは、よくある心理だろう。
その者は、新しい世界に上書きされるのに抗ったという。
「そうして残ったのが、天に浮かぶ旧世界と呼ばれるものだ。あれは千年前、この我々がいる世界に上書きされて消されるはずの、滅びゆく世界だった」
そうあっさりと、俺が追い求めつづけた真実を告げる将軍。
旧世界は二千年前に生じ、千年前に消えるはずの世界だった。あまりにもあっけない解答に、俺は拍子抜けしてしまう。
「だが、消滅に抗ったとて、世界は破滅へと向かっている。だから旧世界の者たちは生き残るため、千年前の新世界へと攻め込んだのだ」
さらに続く言葉に、俺は言葉を失った。
「消滅を拒んだ者も、旧世界からの侵攻と戦った千年前の魔物使いのどちらもお主だ、シン」
「へ……?」
俺がこの世界に来てからやったことといえば、今いるゴブやウルフたち魔物を集めたことくらいだ。そんな壮大なスケールの戦いなんて、経験したことはない。
そもそも俺はこの世界に来る前、日本でゲームをやっていたはずだ。平凡な人生を過ごしていたと記憶している。まさか、それが夢だったなんてこともあるまい。
「言ったであろう、この世界には複製する機能が備わっていると。他の世界から文化や技術をランダムに丸ごと複製し、その中で優れた結果を残した選択が後の世界に引き継がれていく。そうしてこの世界は進化してきた……シンという存在は、己が知る限り、三度複製されている」
言われてみれば、思い当たる節がある。
この世界に来て、古代都市でDVDと思しきものが見つかった。この魔物の街は、江戸の街並みによく似ている。ナマクラ丸が前の魔物使いについて語るとき、俺の知っている知識が何度も出てきた。レイスの遺跡を二度目に訪れたときゴブリンが生まれたのは、この複製の機能を使って旧世界から呼び出したということだろう。
しかしそうなると俺という存在は、日本に住まうカミヤ・シンの複製品に過ぎないということになる。
「錆刀丸よ、お主は千年前に存在していたあの刀で間違いないのだな?」
「おうとも。俺の記憶に間違いはねえ」
さっき、間違えたばかりじゃないか。本当に調子のいい刀め。
というか、そんな名前だったのか。前の魔物使いに貰った名前と言っていたが、別の俺がつけたってことだろう。
「これからは錆刀丸って呼んだほうがいいのか?」
「いんや、これまで通りでいいぜ、親友。今は親友の刀だからな」
ナマクラ丸が言う。
そう、親友だ。出会ったときから言っていた。
馴れ馴れしい奴だなあとばかり思っていたが、ちゃんと意味があったというわけだ。千年ぶりに会って、ほとんど覚えていないながらも俺を親友と呼んだこの刀は、主君に尽くす侍の魂を持っているのかもしれない。
しんみりとする俺に鬼は続ける。
「そして来年には、新世界が生まれてから丁度千年がたつ。再び選択のときが訪れ、旧世界と新世界が争い、どちらかが生き残ることになろう。我々は決断を迫られているのだ。無理強いはしない。戦うも、逃げて最期を待つのも自由だ、シン」
「困っているなら俺は手を貸すよ。よくわからないけれど、できることならやろう」
自然とそんな言葉が口をついて出た。なんとなく懐かしい気がした。
鬼はふと笑い、俺の前に立つ。見た目だけじゃなく存在が大きくて、俺は息を呑む。千年もの重みを実感せずにはいられない。
「ならば手を貸してくれ。己と千年前のお主から受け継いだ記憶と力を、受け取るがいい」
告げるなり、鬼の体がふっと煙になって俺の体に巻き付き始め、ゆっくりと力が体内に染み込んでくる。今のこの姿は、絡新婦の屋敷にあった魔物使いの像とよく似ているのだろう。
クーナとライムが慌てて俺に駆け寄ってくる。
問題ないと二人に言おうとするも言葉にはならず、俺は心地よい懐かしさに身を任せて静かに意識を手放した。
2
鬱蒼と茂る森を歩いていく。
足は勝手に動き、視界は目まぐるしく変わる。そこに俺の意はまったく介していない。
だからこれは夢に違いない。
そう考えた俺はのんびりと構えて、勝手に変わる風景を楽しみ始めた。
先ほどまで森の中にいたかと思いきや、いつの間にか街道に出ていた。俺の隣には、小さな緑の頭が見える。ゴブリンだ。
俺はあの間抜けなゴブの姿を思い浮かべたが、すぐにそんなわけないな、と判断する。その緑の小鬼はするすると木登りして、俺にぽんぽんと果実を投げてよこすなり、すたっと着地したのだから。ゴブならば足を滑らせ頭を打っているに違いない。
そんなゴブリンと一緒に歩いていると、またしても光景が流れていく。俺はぼんやりと、眺めるばかり。
次にはっきりと見えたのは妖狐の集落だった。
俺はオークに襲われていた里を思い出す。それと比べると妖狐の数が少なく、家々もほとんどない。どうやら外で生活しているようだ。
狐たちが楽しげに走り回っている中、俺は角が生えたゴブリンと一緒にいた。そのほかに、小さなドラゴンが増えている。
集落の中を歩いていくと、狐耳と尻尾が生えた二人の女性と出くわす。一人は微笑み、俺に抱きついてきた。
嬉しい状況だが、触感がないため幻でも見ている気分になる。いや、実際そうなんだろうけれど。俺にそういうことをしてくれるのは、ライムとクーナくらい――
と、そこで俺の記憶に引っかかるものがあった。
クーナの里には伝説の魔物使いにまつわる口伝があったと聞いている。魔物を合成したという内容だと言っていた。ということは、これは千年前の俺の記憶なんだろうか。
そうして見れば、女性の顔には見覚えがあった。尻尾があるため気付かなかったが、クーナの里の姫さんと瓜二つだ。このときから千年を経て、天狐から空狐へと進化を遂げたのだろう。もちろん、確証はないけれど。
俺は姫さんのそっくりさんをその場に置いて、もう一人の狐娘さんと歩き始める。
悲しげな姫さんの顔が視界の端に消えていったかと思いきや、もう場面は変わっていた。
木々が枯れ、大地が割れた土地が広がっている。空がどんよりと曇り、たびたび雷が落ちる。とても人が暮らしていけるような環境ではない。
そこにいる俺の近くには、数多の魔物が集まっている。目立つのは、黄金色の毛並みが美しい妖狐、鮮やかな緑色の鱗を持つ大きな竜、そびえ立つ巨人。そして俺が乗っている鬼だ。
かつてライムと一緒に読んだ本に記されていた魔物たちである。あの伝説は嘘ではなかったのだ。
俺が指示を出すと、十体の魔物が前に出た。
続いて百の魔物が一斉に動き出し、さらに千の魔物が地を踏み鳴らした。
そうして向かっていく先に、立ちはだかる魔物の姿が見え始める。上空を闇が覆ったかと思えば、飛び下りてくる影とともに鋭い刃が煌めき――
◇
攻撃を防ぐべく、咄嗟に腰の刀を抜かんとした俺であったが、掴んだのは布団であった。
木目の入った天井が見える。それから障子や襖など、和風の様式が目に入った。
あれ、俺はなにしてたんだっけ。確かゲームをやってて、それから……
ここは俺の家か? まさか。そんなはずはあるまい。こんな立派な屋敷なんか知らないし、お金持ちのお嬢様も知り合いにいない。
さて、どういうことだろう……
少し頭の中を整理しようとした瞬間、声が聞こえた。
「お目覚めか、我が主よ」
ぬっと眼前に現れたのは鬼の頭。
「うわあ、なんだ! ……ってお前か。まったく、驚かせるなよ」
俺は安堵の息を吐く。
近くをふよふよと飛ぶ鬼の頭を見ていると、少しずつ冷静さを取り戻していく。
「寝ぼけていたようだから、荒療治が必要かと思ってな」
「まったく、お前というやつは。えーっと……なんだっけ、鬼太郎でいいんだっけ?」
どうやら記憶が定着したようだ。具体的なエピソードとかは言えないが、千年前の俺が持っていた知識が頭の中にある。
「覚えていたのか。その通りだ」
「しょうもない名前だな」
鬼太郎は顔をしかめた。
そういえば、ナマクラ丸も前の名前はネーミングセンスに欠けていたなあ。
俺はゆっくりと、あの夢の続きを思い出す。切り掛かってきたのは俺自身だ。旧世界と新世界の戦いがあったのだろう。
戦いの結果、旧世界の俺、つまり二千年前の俺が生き残っているのはなんとなくわかる。だからこそ、再びこの世界に危機が迫っているのも。
では、千年前の魔物使いはどうなったのか。
鬼太郎がここにいることや、姫さんに会っていないことから、おおよそ推測はできる。
やっぱり聞かないことにしておこう。実際に自分の耳で確かめてしまうと、実感を持ってしまうから。何事も知っていればいいというものではない。最後まで曖昧なほうがいいことだってある。
「死んだぞ」
「せっかく聞かないようにしていたのに!」
まったく、配慮ができない鬼である。どうして俺の魔物たちはこうなのか。
……そういえば、本当に俺の魔物になったんだろうか。
主従契約のスキルを用いると、八体目の魔物が確認できる。
《鬼神 Lv1》
ATK999 DEF999 MAT999 MDF999 AGI999
【スキル】
「身体強化」「身体変化」
なにこのスペック。どうなってるのこれ。
どうやらステータスの数値は999が限界のようだ。となれば、最強の魔物同士は、技量の違いで優劣が決まるのだろう。
「身体強化」は常に強化されるだけでなく、一時的に底上げすることもできるようだ。そして「身体変化」は、鬼の体を用いることができるスキルらしい。
それにしても、このステータスが還元されるということは、俺も……
気になって仕方がないので、自分自身のステータスを鑑定してみる。
《シン・カミヤ Lv99》
ATK858 DEF857 MAT808 MDF770 AGI737
【スキル】
「大陸公用語」「鑑定」「主従契約Lv9」「魔物合成」「小型化」「ステータス還元Lv9」「成長率上昇Lv9」「バンザイアタック」「スキル還元」「スキル継承Lv9」「血の代償」「経験値継承」「経験値増大」「盟主」「炎魔法Lv9」「氷魔法Lv9」「水魔法Lv9」「幻影術Lv9」「神通力Lv9」「風魔法Lv9」「魔力弾」「身体強化」「身体変化」
「……なにこれ」
「言ったであろう、前のお主の力を継承すると。増えたスキルはそのためだ」
増えたのは、合成しても経験値を引き継げる「経験値継承」と「経験値増大」、「盟主」の三つだ。
「この『盟主』っていうのがよくわからないんだけど」
魔物を束ね、ステータスを還元してもらうスキルっぽいが、いまいちよくわからない。
「魔物たちの盟主になるということだ。お主が従える魔物の下に、さらにグループを作成することができる。ピラミッド型の構造が出来上がり、お主に力が集約されることになる」
どうやら、主従契約をしている魔物の下に二番手の魔物を十体つけられるらしい。その二番手の魔物の下にさらに三番手を十体、と階層構造を作ることができるようだ。そのたびにステータス還元の恩恵は小さくなっていくため、強い魔物を上位においたほうがいいことになる。
それにしても、実感が湧かない。これが俺の力だなんて。
本当に、世界の命運を分ける戦いに赴くことになるんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えていると、慌ただしく駆けてくる足音が聞こえて、飛び込んできたのは、俺の魔物たちである。
「ぐはっ!」
ケダマが転がってきて、俺の胴体に直撃。クーナとライムがぎゅっと抱き着いてきた。ゴブやウルフが俺を頻りに叩き、ポンコツ丸がナマクラ丸を俺の腰に差す。
「なんだよお前ら、大げさだなあ。ちょっと寝ていただけだろ」
見回すと、ライムもクーナも涙目になっていた。
そして咎めるような顔をする。そんな表情さえも実に素敵なのだから、なんともずるい。
「一年間、眠ってたんですよ」
そう、クーナが告げてきた。
俺はしばし呆気にとられながら、魔物たちと言葉の重みを実感していた。どうやら俺が思っている以上に、事態は深刻だったのかもしれない。
衝撃の事実を告げられた俺はなにかを告げることもできずに、腹を鳴らした。
「……お昼にしましょうか」
クーナがちょっと呆れたように言う。シリアスな雰囲気が台無しだ。
しかし、これも仕方ないことである。俺は数日寝ていたくらいの感覚なのだから。一年と言われたって、ドッキリとしか思えない。
起き上がろうとするも、俺はうまく体を動かせずに倒れ込んだ。
まだ頭は寝ぼけているようだ、と思うのだが、何度やっても同じことだった。そこで俺はようやく、一年という長い年月を実感する。長期間、動かないでいて筋力が落ちてしまったのだろう。
クーナとライムが肩を貸してくれ、ウルフの上に乗っかって廊下を進んでいく。どうやらここは鬼太郎がいた屋敷のようだ。
情けない格好で進んでいった俺だが、目的の一室に到着すると、小鬼たちが料理の準備をしてくれるそうで、それまで寛ぐことにした。
俺は手を握ったり開いたり、足を動かしたり、体の具合を確かめる。まるで老人になった気分だ。ステータスの恩恵も、これではあってないようなものである。
「一年もかかるなら、先に言ってくれればいいものを」
俺が愚痴をこぼすと、俺の前腕からにゅっと鬼の頭が出てきて返事をする。
「そんなにかかるとは思わなかったのだ。許せ、主よ」
そう言われてしまうと、いつまでも愚痴るのは器が小さく思われる。過ぎたことだ、気にしないようにしよう。
腕から生えた鬼の頭を見て、俺はふと思う。
「なあ、四六時中一緒ってことはさ、プライバシーとかなくないか?」
「心配するな。己は主がどのような趣味を持っていようと気にはせん」
「俺に問題があるみたいに言うなよ!」
ゴブが俺のところにやってきて、仕方ないなあ、みたいな顔をして肩を叩く。
なんだよくそ、ゴブの癖に。一年間で増長してやがる。
周りには古めかしい屋敷がいくつもある。お偉いさんたちが住んでいる区画であり、普通は俺たちのような田舎者がやってくることなどない場所だ。
といっても、俺たち自身はあくまでおまけなのである。クーナの従者ということで、同行を許可してもらっているに過ぎない。
案内してくれている魔物は屈強な鬼で、大剣を腰に佩いている。失礼を働けば、あれで首を刎ねられるかもしれない。
迂闊なことはできないし、気を引き締めていかないと……
緊張気味な俺の前を、ゴブがケダマを転がしながら歩いていく。空気を読めと言うのはもう諦めたが、もう少し主人の気持ちを気遣ってくれてもよくないか?
呑気な二匹を見ていると、ウルフがちょっとだけ歩く速度を遅くして俺の隣に来て、肉球でぽんぽんと叩いて励ましてくれる。
……泥がついたんだけど。
このわんこもたまにはドジってしまうこともあるようだ。緊張しているのかもしれない。
普段ならこれでいいけど、将軍に汚い姿で会うのはなあ。そんなことを思っていたが、ケダマもゴブもすでに汚くなっている……まあいいか。
何度も角を曲がり、入り組んだ道を進んでいく。こうした複雑な街並みになっているのは、防衛のためだろうか。なにかあっても、簡単には逃げられなさそうだ。
そうしているうちに、巨大な城に到着する。
中に入るよう促されるが、なんだか処刑を待っている気分に近い。小心者なので、いざ本番になると帰りたくなるのである。
そんな俺のところにライムがやってきて、俺のズボンの裾を払い、寝癖を直し、服を整えてくれる。そして満面の笑みを浮かべた。
俺は気合を入れて、少し早歩きで歩き始める。クーナはすでに俺をおいて先に行っていたから。
階段を何度も上がって、ようやく辿り着いた屋敷には、俺たち一行だけが通されることになった。
「失礼します」
クーナが扉を開けて中に入ると、内部には巨大な柱が数本ある以外になにもなかった。薄暗い部屋の向こうに鎮座しているのは巨大な鬼。絡新婦がいた屋敷の納屋で見た置物とそっくりだ。
クーナが跪くと、俺も慌てて続く。ポンコツ丸がガシャンと大きな音を立てるのを聞いて不安になりながら、俺はぼんやりしているケダマを掴み、うろうろするゴブをウルフが床に押し付ける。
そして、ぎょろりと剥いた鬼の瞳がこちらに向けられた。
視線の先には、優勝したクーナ――ではなく俺だ。
「……魔物の従者たる魔物使いか! 初めて聞いたな、そのようなものは!」
大笑する鬼の将軍。
一目見ただけで魔物使いとわかるとは、やはり俺のことを知っているのか。ここは魔物が大量に住んでいるから、魔物を連れているだけでは判別がつかないはず。
「不思議そうな顔だな、シン。久しい我が主よ」
俺は鬼と契約したことはないし、どういうことかと思っていると、腰の刀がカタカタと揺れた。
「あー! お前さん、お前さんじゃねえか。なんて言ったかな、まあいいや。久しぶりだなあー。懐かしいな、お前さんが俺を使って、魚を串刺しにして焼いたのは今でも覚えてるぜ!」
「そのような記憶はないな」
……おい! どうなってるんだよナマクラ丸!
知り合いだって言ってたじゃないか。全然会話がかみ合っていない!
優勝したのはクーナなんだから、本来は彼女が話すべきところだが、名前を呼ばれた以上は俺が話すべきだろう。
なにから聞こうか。
「やはり変わらないな。疑問が顔に出ているぞ。ならば一つずつ、説明するとしようか」
そう考えていると先に言われてしまったので、俺は頷くばかり。
ゴブがやれやれ、とでも言いたげに見てきた。こいつ、あとで晩飯に大量のからしを仕込んでやるから覚悟しておけ。
やがて鬼が語り始めた。
かつて一つの世界があった。その世界には自己を保存、複製する機能が備わっており、千年の時を経るごとに初期化して一からやり直してきた。
「主の言葉で説明するならば、バックアップを復旧してきたといったところか。世界が始まってから千年後、破滅へと向かいつつある世界は、それを回避するために、何度も過去の世界をロードした。千年間存在し続けた世界は消え去り、また一から世界が始まる。何度も何度も、同じことを繰り返してきた」
いったいなんの話であろうか。例え話なのか、それともこの世界にはそういった概念があるのか。
しかし、何度も世界がゲームオーバーからコンティニューし続けたところで、ゲームじゃあるまいし、時間はたっているのではないか。
「やり直したところで、それはよく似た世界が複製されただけではないのか?」
「いいや。時間すらも元に戻ってしまうゆえに、その世界は存在そのものがなかったことになり、新しい世界が取って代わる。そこに住まう者の意志も尊厳も生きた証もなにもかもが、完全に消え去ってしまう。だから世界に反旗を翻した者がいた」
世界云々についてはよくわからないが、自身の存在を消されるのに反抗したというのは、よくある心理だろう。
その者は、新しい世界に上書きされるのに抗ったという。
「そうして残ったのが、天に浮かぶ旧世界と呼ばれるものだ。あれは千年前、この我々がいる世界に上書きされて消されるはずの、滅びゆく世界だった」
そうあっさりと、俺が追い求めつづけた真実を告げる将軍。
旧世界は二千年前に生じ、千年前に消えるはずの世界だった。あまりにもあっけない解答に、俺は拍子抜けしてしまう。
「だが、消滅に抗ったとて、世界は破滅へと向かっている。だから旧世界の者たちは生き残るため、千年前の新世界へと攻め込んだのだ」
さらに続く言葉に、俺は言葉を失った。
「消滅を拒んだ者も、旧世界からの侵攻と戦った千年前の魔物使いのどちらもお主だ、シン」
「へ……?」
俺がこの世界に来てからやったことといえば、今いるゴブやウルフたち魔物を集めたことくらいだ。そんな壮大なスケールの戦いなんて、経験したことはない。
そもそも俺はこの世界に来る前、日本でゲームをやっていたはずだ。平凡な人生を過ごしていたと記憶している。まさか、それが夢だったなんてこともあるまい。
「言ったであろう、この世界には複製する機能が備わっていると。他の世界から文化や技術をランダムに丸ごと複製し、その中で優れた結果を残した選択が後の世界に引き継がれていく。そうしてこの世界は進化してきた……シンという存在は、己が知る限り、三度複製されている」
言われてみれば、思い当たる節がある。
この世界に来て、古代都市でDVDと思しきものが見つかった。この魔物の街は、江戸の街並みによく似ている。ナマクラ丸が前の魔物使いについて語るとき、俺の知っている知識が何度も出てきた。レイスの遺跡を二度目に訪れたときゴブリンが生まれたのは、この複製の機能を使って旧世界から呼び出したということだろう。
しかしそうなると俺という存在は、日本に住まうカミヤ・シンの複製品に過ぎないということになる。
「錆刀丸よ、お主は千年前に存在していたあの刀で間違いないのだな?」
「おうとも。俺の記憶に間違いはねえ」
さっき、間違えたばかりじゃないか。本当に調子のいい刀め。
というか、そんな名前だったのか。前の魔物使いに貰った名前と言っていたが、別の俺がつけたってことだろう。
「これからは錆刀丸って呼んだほうがいいのか?」
「いんや、これまで通りでいいぜ、親友。今は親友の刀だからな」
ナマクラ丸が言う。
そう、親友だ。出会ったときから言っていた。
馴れ馴れしい奴だなあとばかり思っていたが、ちゃんと意味があったというわけだ。千年ぶりに会って、ほとんど覚えていないながらも俺を親友と呼んだこの刀は、主君に尽くす侍の魂を持っているのかもしれない。
しんみりとする俺に鬼は続ける。
「そして来年には、新世界が生まれてから丁度千年がたつ。再び選択のときが訪れ、旧世界と新世界が争い、どちらかが生き残ることになろう。我々は決断を迫られているのだ。無理強いはしない。戦うも、逃げて最期を待つのも自由だ、シン」
「困っているなら俺は手を貸すよ。よくわからないけれど、できることならやろう」
自然とそんな言葉が口をついて出た。なんとなく懐かしい気がした。
鬼はふと笑い、俺の前に立つ。見た目だけじゃなく存在が大きくて、俺は息を呑む。千年もの重みを実感せずにはいられない。
「ならば手を貸してくれ。己と千年前のお主から受け継いだ記憶と力を、受け取るがいい」
告げるなり、鬼の体がふっと煙になって俺の体に巻き付き始め、ゆっくりと力が体内に染み込んでくる。今のこの姿は、絡新婦の屋敷にあった魔物使いの像とよく似ているのだろう。
クーナとライムが慌てて俺に駆け寄ってくる。
問題ないと二人に言おうとするも言葉にはならず、俺は心地よい懐かしさに身を任せて静かに意識を手放した。
2
鬱蒼と茂る森を歩いていく。
足は勝手に動き、視界は目まぐるしく変わる。そこに俺の意はまったく介していない。
だからこれは夢に違いない。
そう考えた俺はのんびりと構えて、勝手に変わる風景を楽しみ始めた。
先ほどまで森の中にいたかと思いきや、いつの間にか街道に出ていた。俺の隣には、小さな緑の頭が見える。ゴブリンだ。
俺はあの間抜けなゴブの姿を思い浮かべたが、すぐにそんなわけないな、と判断する。その緑の小鬼はするすると木登りして、俺にぽんぽんと果実を投げてよこすなり、すたっと着地したのだから。ゴブならば足を滑らせ頭を打っているに違いない。
そんなゴブリンと一緒に歩いていると、またしても光景が流れていく。俺はぼんやりと、眺めるばかり。
次にはっきりと見えたのは妖狐の集落だった。
俺はオークに襲われていた里を思い出す。それと比べると妖狐の数が少なく、家々もほとんどない。どうやら外で生活しているようだ。
狐たちが楽しげに走り回っている中、俺は角が生えたゴブリンと一緒にいた。そのほかに、小さなドラゴンが増えている。
集落の中を歩いていくと、狐耳と尻尾が生えた二人の女性と出くわす。一人は微笑み、俺に抱きついてきた。
嬉しい状況だが、触感がないため幻でも見ている気分になる。いや、実際そうなんだろうけれど。俺にそういうことをしてくれるのは、ライムとクーナくらい――
と、そこで俺の記憶に引っかかるものがあった。
クーナの里には伝説の魔物使いにまつわる口伝があったと聞いている。魔物を合成したという内容だと言っていた。ということは、これは千年前の俺の記憶なんだろうか。
そうして見れば、女性の顔には見覚えがあった。尻尾があるため気付かなかったが、クーナの里の姫さんと瓜二つだ。このときから千年を経て、天狐から空狐へと進化を遂げたのだろう。もちろん、確証はないけれど。
俺は姫さんのそっくりさんをその場に置いて、もう一人の狐娘さんと歩き始める。
悲しげな姫さんの顔が視界の端に消えていったかと思いきや、もう場面は変わっていた。
木々が枯れ、大地が割れた土地が広がっている。空がどんよりと曇り、たびたび雷が落ちる。とても人が暮らしていけるような環境ではない。
そこにいる俺の近くには、数多の魔物が集まっている。目立つのは、黄金色の毛並みが美しい妖狐、鮮やかな緑色の鱗を持つ大きな竜、そびえ立つ巨人。そして俺が乗っている鬼だ。
かつてライムと一緒に読んだ本に記されていた魔物たちである。あの伝説は嘘ではなかったのだ。
俺が指示を出すと、十体の魔物が前に出た。
続いて百の魔物が一斉に動き出し、さらに千の魔物が地を踏み鳴らした。
そうして向かっていく先に、立ちはだかる魔物の姿が見え始める。上空を闇が覆ったかと思えば、飛び下りてくる影とともに鋭い刃が煌めき――
◇
攻撃を防ぐべく、咄嗟に腰の刀を抜かんとした俺であったが、掴んだのは布団であった。
木目の入った天井が見える。それから障子や襖など、和風の様式が目に入った。
あれ、俺はなにしてたんだっけ。確かゲームをやってて、それから……
ここは俺の家か? まさか。そんなはずはあるまい。こんな立派な屋敷なんか知らないし、お金持ちのお嬢様も知り合いにいない。
さて、どういうことだろう……
少し頭の中を整理しようとした瞬間、声が聞こえた。
「お目覚めか、我が主よ」
ぬっと眼前に現れたのは鬼の頭。
「うわあ、なんだ! ……ってお前か。まったく、驚かせるなよ」
俺は安堵の息を吐く。
近くをふよふよと飛ぶ鬼の頭を見ていると、少しずつ冷静さを取り戻していく。
「寝ぼけていたようだから、荒療治が必要かと思ってな」
「まったく、お前というやつは。えーっと……なんだっけ、鬼太郎でいいんだっけ?」
どうやら記憶が定着したようだ。具体的なエピソードとかは言えないが、千年前の俺が持っていた知識が頭の中にある。
「覚えていたのか。その通りだ」
「しょうもない名前だな」
鬼太郎は顔をしかめた。
そういえば、ナマクラ丸も前の名前はネーミングセンスに欠けていたなあ。
俺はゆっくりと、あの夢の続きを思い出す。切り掛かってきたのは俺自身だ。旧世界と新世界の戦いがあったのだろう。
戦いの結果、旧世界の俺、つまり二千年前の俺が生き残っているのはなんとなくわかる。だからこそ、再びこの世界に危機が迫っているのも。
では、千年前の魔物使いはどうなったのか。
鬼太郎がここにいることや、姫さんに会っていないことから、おおよそ推測はできる。
やっぱり聞かないことにしておこう。実際に自分の耳で確かめてしまうと、実感を持ってしまうから。何事も知っていればいいというものではない。最後まで曖昧なほうがいいことだってある。
「死んだぞ」
「せっかく聞かないようにしていたのに!」
まったく、配慮ができない鬼である。どうして俺の魔物たちはこうなのか。
……そういえば、本当に俺の魔物になったんだろうか。
主従契約のスキルを用いると、八体目の魔物が確認できる。
《鬼神 Lv1》
ATK999 DEF999 MAT999 MDF999 AGI999
【スキル】
「身体強化」「身体変化」
なにこのスペック。どうなってるのこれ。
どうやらステータスの数値は999が限界のようだ。となれば、最強の魔物同士は、技量の違いで優劣が決まるのだろう。
「身体強化」は常に強化されるだけでなく、一時的に底上げすることもできるようだ。そして「身体変化」は、鬼の体を用いることができるスキルらしい。
それにしても、このステータスが還元されるということは、俺も……
気になって仕方がないので、自分自身のステータスを鑑定してみる。
《シン・カミヤ Lv99》
ATK858 DEF857 MAT808 MDF770 AGI737
【スキル】
「大陸公用語」「鑑定」「主従契約Lv9」「魔物合成」「小型化」「ステータス還元Lv9」「成長率上昇Lv9」「バンザイアタック」「スキル還元」「スキル継承Lv9」「血の代償」「経験値継承」「経験値増大」「盟主」「炎魔法Lv9」「氷魔法Lv9」「水魔法Lv9」「幻影術Lv9」「神通力Lv9」「風魔法Lv9」「魔力弾」「身体強化」「身体変化」
「……なにこれ」
「言ったであろう、前のお主の力を継承すると。増えたスキルはそのためだ」
増えたのは、合成しても経験値を引き継げる「経験値継承」と「経験値増大」、「盟主」の三つだ。
「この『盟主』っていうのがよくわからないんだけど」
魔物を束ね、ステータスを還元してもらうスキルっぽいが、いまいちよくわからない。
「魔物たちの盟主になるということだ。お主が従える魔物の下に、さらにグループを作成することができる。ピラミッド型の構造が出来上がり、お主に力が集約されることになる」
どうやら、主従契約をしている魔物の下に二番手の魔物を十体つけられるらしい。その二番手の魔物の下にさらに三番手を十体、と階層構造を作ることができるようだ。そのたびにステータス還元の恩恵は小さくなっていくため、強い魔物を上位においたほうがいいことになる。
それにしても、実感が湧かない。これが俺の力だなんて。
本当に、世界の命運を分ける戦いに赴くことになるんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えていると、慌ただしく駆けてくる足音が聞こえて、飛び込んできたのは、俺の魔物たちである。
「ぐはっ!」
ケダマが転がってきて、俺の胴体に直撃。クーナとライムがぎゅっと抱き着いてきた。ゴブやウルフが俺を頻りに叩き、ポンコツ丸がナマクラ丸を俺の腰に差す。
「なんだよお前ら、大げさだなあ。ちょっと寝ていただけだろ」
見回すと、ライムもクーナも涙目になっていた。
そして咎めるような顔をする。そんな表情さえも実に素敵なのだから、なんともずるい。
「一年間、眠ってたんですよ」
そう、クーナが告げてきた。
俺はしばし呆気にとられながら、魔物たちと言葉の重みを実感していた。どうやら俺が思っている以上に、事態は深刻だったのかもしれない。
衝撃の事実を告げられた俺はなにかを告げることもできずに、腹を鳴らした。
「……お昼にしましょうか」
クーナがちょっと呆れたように言う。シリアスな雰囲気が台無しだ。
しかし、これも仕方ないことである。俺は数日寝ていたくらいの感覚なのだから。一年と言われたって、ドッキリとしか思えない。
起き上がろうとするも、俺はうまく体を動かせずに倒れ込んだ。
まだ頭は寝ぼけているようだ、と思うのだが、何度やっても同じことだった。そこで俺はようやく、一年という長い年月を実感する。長期間、動かないでいて筋力が落ちてしまったのだろう。
クーナとライムが肩を貸してくれ、ウルフの上に乗っかって廊下を進んでいく。どうやらここは鬼太郎がいた屋敷のようだ。
情けない格好で進んでいった俺だが、目的の一室に到着すると、小鬼たちが料理の準備をしてくれるそうで、それまで寛ぐことにした。
俺は手を握ったり開いたり、足を動かしたり、体の具合を確かめる。まるで老人になった気分だ。ステータスの恩恵も、これではあってないようなものである。
「一年もかかるなら、先に言ってくれればいいものを」
俺が愚痴をこぼすと、俺の前腕からにゅっと鬼の頭が出てきて返事をする。
「そんなにかかるとは思わなかったのだ。許せ、主よ」
そう言われてしまうと、いつまでも愚痴るのは器が小さく思われる。過ぎたことだ、気にしないようにしよう。
腕から生えた鬼の頭を見て、俺はふと思う。
「なあ、四六時中一緒ってことはさ、プライバシーとかなくないか?」
「心配するな。己は主がどのような趣味を持っていようと気にはせん」
「俺に問題があるみたいに言うなよ!」
ゴブが俺のところにやってきて、仕方ないなあ、みたいな顔をして肩を叩く。
なんだよくそ、ゴブの癖に。一年間で増長してやがる。
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