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おもちゃの硬貨

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それを見つけたのは、実家にある勉強机を整理していた時だった。
引き出しの奥をガサガサと探り、ノスタルジーにふけっていた時のこと。


一枚の硬貨が出てきた。
表面には8の字を倒した無限のマーク。裏にはウルトラマンみたいな謎の絵柄。


その時、とても懐かしい感じがした。
このコインで遊んでいた。そんな気がした。


「これ、なんのおもちゃだっけな~」


何となくそのコインを財布にしまう。






その日の夕方、コインパーキングの駐車料金が払えなかった。
新しい500円玉に対応しておらず、都合の悪いことに1000円札までしか使えない。


財布の中に条件にあったお金は無く、わざわざコンビニで崩さなくてはならなかった。


そんな時、ふとあの硬貨に目が行く。
手に取り、硬貨投入口に入れる。


どうせ使えない。ガチャンと落ちてくるだけ。
と、思っていた。


「ご利用ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」


くぐもった女性の声でそう聞こえた。
どうやら何の間違いか支払いが出来てしまった。


どうしよう、これ捕まるかな?
不安になった私は精算機の脇に書いてある番号に電話をかけた。


結論から言うと支払いに問題はなく、あったとしてもこちらの不手際なので気にしないでいいとの事。
なんと、あのおもちゃが使えたのだ。


がめつくもレシートを受け取るために、返却口に手を入れる。
そこには、あの硬貨が入っていた。


本来は使用できない硬貨やお釣り、返金の際にしか出てこないはず。
何故、この硬貨はここにあるのか。


何となく試してみたくなった。
まずは機械相手に支払うところで何度か使ってみた。


自販機、交通ICカードのチャージ、コンビニの自動精算機。
どれも問題なく使え、誰からも不審に思われない。


一番驚いたのは、どの支払いもピッタリの料金で済ませられること。
1枚の硬貨なのに端数までキリよく認識される。


段々と怖くなってきていた。
これは、犯罪なのだろうか。
そもそも意味がわからない。オカルト的な解釈だと悪魔による仕業。



それは流石に考えすぎだとしても、恐ろしく感じている。


財布を開き硬貨を見ようとした。
しかし、何度見てもそれは見当たらない。


先程まではあったはずなのだが、完全に無くしてしまったようだ。


その瞬間から、あれに対する懐かしさはどんどん薄れていった。
あんなもの持ってないよな。何だったんだろう。


不気味さを感じつつも少し安心する。
それと同時にもっと使っておけば良かったなと、お菓子がいっぱいに入ったレジ袋を見つめる。
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