異世界召喚されて神様貴族生活

シロイイヌZ

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第九十話

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 エイミーさんとの面談を終えた所で、タイミング良く使用人の入浴が終わったと連絡が入った。
「ダーリン、またお願いできますか?」
治癒魔法のことだ。
俺の治癒魔法はその強さから傷跡も残さず治すことが出来るし、欠損してしまった手足も元に戻すことが可能だ。
「うん、分かったよ。陽菜も呼んで健康チェックをして貰おう」
『健康診断』と言っても、陽菜は看護師だし、俺は治癒魔法で治療が出来るだけで医者じゃないから、真似事みたいな物だけどね。
「畏まりました。明日はメイドと使用人全員の健康診断を予定していますし、ちょうど良いタイミングかも知れませんね」
 サナとそんな会話を交わして、『異界渡航』の窓を呼び出して日本の店に居る陽菜を呼びに行く。
陽菜はちょうど事務所で書類仕事が一段落したところだったようで、休憩していた。
「陽菜、疲れてるところ悪いけど、健康診断に付き合ってよ」
「うん。そのお手伝いをすることが、お屋敷での私の存在意義だもん。全然良いよ」
快く引き受けてくれて、一緒に屋敷に戻った。
 風呂場の脱衣所に行くと全裸の少女が溢れていて、なかなかの見応えだった。
いやいや…入浴の手伝いをしていただけの使用人たちまで、なんで全裸のまま待っているんだよ。
 新たに屋敷に来た使用人たちは、やはり背中を中心に鞭で打たれた痕が残っている。
これを見せられる度に、つくづく奴隷商人を絶滅させたくなる。
手足が欠損して身体の自由が利かない者にまで鞭を振るう必要性を認められない。
 俺は彼女たちを見てそんな事を考えていたんだが、新しく入って来た使用人たちはそんなことは一切知らないから、いきなり全裸を見られたことで警戒してしまっている。
 脱衣所に彼女たちを一列に並ばせる。
足が無くて立つことが不便な者は、使用人が介助をしている。
「裸の所にいきなり入って来て申し訳ない。これは君たちの健康状態の確認と治療のために必要な事だから、理解して欲しい。まずはこの医療担当の陽菜に健康状態をチェックしてもらってくれ。その後、俺が君たちを治癒魔法で治療する。それが終わったら、ここに居るメイド統括のサナの身体測定を受けてくれ。最後にメイド長のアイナから服を受け取って、その服を着てそこで待っていてくれ」
 一人ずつ陽菜が触診をしながら痛い場所などが有無や病気の確認をしてくれる。
一人目は栄養失調以外には健康状態に問題は無い。
メイド付き使用人のリンに付き添われて俺の目の前に来た娘は、左足の膝から下が無い。
「君の名前はアリシアだね。膝下を失っているようだけど、何が有ったの?」
「貴族の馬車に轢かれた…。それで親に奴隷商に売られて、この街に連れて来られた」
足を失って働けなくなった子供の面倒を見るのがイヤで売ったのか?
なんて酷い親なんだ。
「それは酷い目に遭ったね。奴隷商には酷いことをされたり、させられたりしなかったかい?」
「…酷い事って、どんな事?」
「身体を売らされたり、無理矢理犯されたり、意味も無く殴られたり」
「無理矢理犯されたことは無い。商品価値が下がるからって、性については厳重に管理されてた。でも、鞭で叩かれるのは日常的だった」
うん。おっさんの『全員処女』の言葉は嘘ではなさそうだな。
「そうか。足が元に戻ったら、何がしたい?」
少し考えたアリシアは
「…故郷に戻って私を轢いて逃げた貴族を殺したい…」
と呟いた。
「なるほど。俺が足を戻して奴隷から解放してあげたら、復讐なんて忘れてこの屋敷の為に働いてくれるかい?」
「そんな事、出来るはずないし…」
「アリシア、御館様を信じなさい」
リンが横から穏やかな口調で諭すように言う。
「…本当にそんな事が出来たら、お屋敷の為に一生懸命働くよ…」
瞳に涙を浮かべ、悔しそうに呟いた。
「それが出来ないから、親に売られたんだもん…」
大粒の涙をボロボロと零して泣き出す。
そんなアリシアの左足に魔力を流し込む。
アリシアの身体が瞬間的に明るく光ると、瞬く間に足が元に戻る。
それと同時に額の奴隷印の焼印も消しておく。
「これでどうだい?」
アリシアが目を開くと、そこには失われたはずの左足が有る。
「そんな…ウソ…でしょ…?」
信じられない物を見たように、目を見開いている。
それを見ていた娘たちからもどよめきが起きる。
そこにはもう、あの死んだ目をしていたアリシアは居ない。
「ウソじゃないよ。さぁ、自分の足で立ってごらん」
アリシアの手を取って立たせると、アリシアは自分の両足で床を踏みしめる。
その感触を確かめるように何度も足踏みをし、指を開いたり閉じたりする。
「私の足だ…。私の足が戻ってる!!」
「良かったね。そして君は、もう奴隷じゃない。この屋敷の使用人である『新しいアリシア』に生まれ変わったんだよ」
俺がそう言うと横に控えていたリンが手鏡を渡し、アリシアに額の奴隷印が無くなっていることを確認させる。
「奴隷印も消えてる…!」
「言っただろう。俺が失われた足を戻して奴隷から解放してあげるって」
「まさか本当に出来るだなんて…。嬉しいっ!」
その一言が聞きたかったんだ。
「アリシア、私も先日まで奴隷だったんですよ」
「ウソ!?そんなに健康的なのに!?」
リンも他の使用人たちも、日に日に健康的な体つきになり、表情も明るくなった。
この屋敷の来た時とはえらい変わりようだ。
「本当ですよ。実は私、貴女とは奴隷小屋でお会いしたことが有るんですよ?」
「…え?私にパンを分けてくれた、あの時のリンさんなの…?」
「そうですよ。お久しぶりですね、アリシア」
なんと、この二人は顔見知りだったのか。
まぁ、同じ奴隷商の所から来たんだから、そう言う事も有るか。
周囲にも数人そういうパターンが有るらしくて、ちょっとした騒ぎになる。
 「皆、少しだけ聞いてくれ」
椅子から立ち上がって、皆の注意を引く。
「今から君たち全員の傷を癒し、欠損した部位を元に戻す。そして君たちの奴隷印を消して、君たちを奴隷から解放する!」
大きな声で宣言する。
「さっき君たちの入浴を手伝ってくれた先輩たちも、先日まで君たちと同じ奴隷として扱われていた。だが、今は違う。この屋敷で使用人として働いてくれている大切な仲間だ。俺も含めこの屋敷の皆が君たちにも仲間になってもらいたいと願っている。今日まで辛い思いをして来ただろう。『忘れろ』と言っても忘れられない程悔しい思いもしただろう。それでも、君たちは今日この場で新しい自分に生まれ変わり、気持ちを新たにしてこの屋敷で働いて貰いたい」
そう言うと、使用人も含めて歓声が上がる。

 順番に治療して、全員の傷を癒して欠損を治した。
「お屋敷と御館様に、生涯尽くします!」
と、声を揃えて宣言されてしまったが、そんな事より幸せになってもらえたらそれで良い。
全員が栄養失調の症状が出ていたが、他に大きな病気は無いようで一安心だ。
栄養失調は今後この屋敷の食事を食べることで改善されるだろう。
早速、部屋着であるTシャツと短パンを支給して着てもらっている。
腐る物では無いから、非常用に部屋着をたくさんストックしておいて良かった。
サイズもフリーサイズだから気にしなくても良いし、大変便利だ。
 健康チェックと同時に採寸もしてもらったから、明日にでもメイド服を買いに行こう。
縫製工場からもメイド服の試作品が完成した連絡が入っているが、量産には間に合わないだろうから、今回は買って来る。
サイズ更新の際にでも、此方こちら産のメイド服を導入しよう。
メイドたちの制服も試作品が出来ているらしいし、サナと一緒に見に行こう。
 いつも通り全員を連れて売店に行き、下着を二セットとシャンプーとコンディショナーのセット、歯ブラシセットとタオル一式を支給する。
朝のうちにサナから新しい休日体制について説明してもらい、使用人の中で最年長のクロエを『使用人頭』に任命してもらった。
 クロエは今後、朝のミーティングにも出席することになる。
使用人は人数も多いから点呼も大変だろうが、頑張ってもらいたい。
 新しい休日では日曜と月曜を休日として二班制にし、半日休暇を終日休暇とする。
日曜が休暇だった班は翌週は月曜が休み、月曜が休みだった班は翌週は日曜が休みとなる。
これで身体をしっかり休めてもらうことも出来るだろう。
 給料は金貨一枚で安いままだが、メイドや騎士とは違って退職金制度を導入している。
退職金については本人たちにも秘密にしていて、サナと俺しか知らない。
 なので、退職金制度以外のことについて、使用人頭のクロエから新しく入った十三人に説明をしてもらった。
その後は屋敷の中を巡ってオリエンテーリングをしていたが、欠損が治って奴隷から解放された十三人は、なんだか生き生きして見えた。
 使用人達から『御館様』と呼ばれることに異議を申し立てたい所なのだが
「私たちから敬意を込めて『御館様』とお呼びさせてください」
と熱心に言われたので、渋々了承したんだ。
 使用人たちの仕事熱心さには、レイナもアイナも感心していた。
「彼女たちの向上心は素晴らしいです。本人たちが望めば、従士試験を受けさせて、いずれ騎士への道を目指してもらっても良いかも知れないです」
「メイド付きの皆も同じです。サナ様と私が推薦状を書けば、実務経験ありという事でメイド学校を出ていなくても国家試験の受験資格を得られますので、受けさせてあげても良いかも知れないです」
と言ってくれていた。
 サナからも同じ話を聞いていたが、まずはこの世界ではメイドと言う職業には国家資格が必要であることに驚かされた。
「そうか。もし本人たちがその道を望むようならば、その時は相談に乗ってやって欲しい。俺に出来る事が有れば協力も惜しまないから、声を掛けてくれ」
と言っておいた。
 彼女たちが試験を受けてこの屋敷を出ることは、淋しくはあるけれども喜ばしいことだと思っている。
一度は生きる希望を失った彼女たちがせっかく掴んだチャンスなんだから、それを活かして幸せになってくれると嬉しい。
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