闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第一章

28話 merci

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エリザベスはお決まりのポーズで、ハットを外し、胸に当てお辞儀をした後、顔を上げると、歯を立てながら顔を90度、上部へ傾ける。
「merci(よろしくお願いします)」
レオナに対して丁寧に挨拶をした。
そのポーズを見た瞬間、レオナは背筋が凍り付き、自分が相手にしていた人物が今まで以上に恐ろしく感じられてしまう。

こうなったのも自分の甘さからだったと彼女はそう言い聞かせ、心を落ち着かせると彼女は銃を下ろし、エリザベスに話し出す。
「qui es-tu ?(何者なの?)」と、尋ねると、エリザベスは初めてフランス語と会話できる相手が現れて喜び、彼女もフランス語で返す。
「merci, pas de quoi?(ありがとう、私が何かなんて訊かないで)」
――2人は無言になると、互いを睨みつけた後、レオナが先に口を開いた。
「親御さんは? 面倒見る人がいないと」
という彼女の問いに対して、エリザベスは首を横に振りながら答える。
「今日は晩餐会だから一人で活動中」と、答えるとレオナは首を傾げる。
保護者が居るなら同伴するはずなのに何故晩餐会に?と考えている間にも彼女は考えていたことがある。
何故、エリザベスが世界を憎んでいるのか、何故、他人を殺そうとするのかを考えながら距離を少しずつ詰めていく。そこでようやくエリザベスが動き出した時に言葉を発する。
「仲間になりたいの? 心強くて助かるわ」と、笑いながら話しかけるとレオナは顔を横に振りながら言葉を返す。
「もう、飽きたよ」と、エリザベスに声をかけるとさらに彼女は笑顔になるが、すぐに真顔になり銃を発射する。
彼女の頬に1発の銃弾が掠れ、苛つく表情をするレオナは再度構えて連射し続けた。
エリザベスは素早い移動で回避すると腕を伸ばし、狙いを定めて二発放った銃弾の軌道をレオナは一発の銃弾を撃ち弾いた、二発目の弾丸は本体に掠れプラスチックが焼けた香りがした。
そして銃声が響いて障害物から姿を現したエリザベスは華麗な宙返りすると刃をレオナの首元に斬りつける所をぎりぎりで避けた。
その反射神経にエリザベスは驚いたような表情を浮かべていた。
しかし、レオナの身体を蹴り飛ばすと、空中から数個のグレネードを取り出し、それを地面に爆発すると、車の硝子や塵が飛び舞う。
爆発した所から黒い煙が噴出する。その爆風に飛ばされてしまった彼女は何とか着地をしてエリザベスを探すが既に消えてしまった。
「また逃げられたか……次こそは殺そう」と呟き、武器をしまうとケビンが心配そうな顔をしながら近づいてきて、レオナは安心させるように声をかけた。
「大丈夫、今度はきっと殺れるよ」
「でも、今の感じじゃあダメだよ、全然ダメージを与えれてなかった。一つも傷を付けれなかったんだよ?」と、言うと、ケビンが首を横に振る。
「いや、今の試合は、あいつがわざと負けてくれたんだ。もし本気で殺しにかかってたら確実に殺されてるよ」とポジティブに答えると、彼女は考え込むように顎に手を当ててから続けて話した。
「やはり、どの作戦でも無理みたい……ごめんなさい、お兄様」
少女は悲しげに、しかし、どこか諦めを感じさせるような声でそう呟いた。
「そうだな。奴等は本物のアウレリアだ」
そう言って、ケビンは自分の首筋に指を当てる。
「ここに紋章がある。これはエレメントホルダーの中で尊殿に携えた者の証だ」
と、男は言う。
それは、不思議な力を持った人々の集団である、エレメントホルダーという組織の一員であることを証明するものらしい。
「これがなければ、君がエレメントホルダーだと証明できない。このバッジがなければ、君はただの人に過ぎない。そして、我々が最もエレメントホルダーの中で力を持っていて、最も重要な任務を任されているのだ」

彼の首についているエンブレムに目を向ける。そこには、五つの星のようなものが描かれており、それぞれ赤、青、緑、黄、白の色をしていた。それらは、夜空に輝く星のように見える。
「お前なら奴を倒せる!頼む、戦ってくれ!」
突然、男が懇願するように、レオナに頭を下げてきた。彼は真剣に頼み込んでいるようだ。しかし、どうして彼がこんなに必死になっているのか理解できなかった。そもそも、彼と会ってまだ数ヶ月ぐらいで、何故、知り合いの人間がそこまでするのか、不思議だった。
「わかった。私があいつを倒すから、安心してちょうだい」と、少女がケビンに向かって微笑みながら告げる。まるで、何かに怯えるような顔をしていた彼の表情が、一瞬にして明るくなった。
「ありがとうございます!どうか、よろしくお願いします!」
と、彼は言うと、少女の手を握っていた手を離した。少女は、握られていた自分の手を見つめて、少しの間だけ悲しそうな顔をする。
そんな彼女を見ていると、何故か胸が苦しくなった。どうしてなのかは、わからない。でも、彼女には笑顔が似合うと思った。
「さぁ、レオナ! あの奴等を早く倒すか!」と、ケビンはレオナと目を合わせながら叫んだ。
少女もこちらを目が合うと、「えぇ、行きましょう。ケビン」と、言って笑う。
先程、見せた悲しみに満ちた顔が嘘のように思えるほどだ。表情が曇っていた理由は、あのケビンにあるらしい。
ケビンは元戦場カメラマンだというが、今は傭兵をしていると言っていた。戦場カメラマンとは、戦争の現場に赴き、戦争の被害や悲惨さを人々に知らしめる仕事だと聞いている。
つまり、人を殺す場所を公開する仕事をしているということだ。
この世界の平和は、表面上だけだ。裏では、常に誰かが戦っている。
人々は日々、死と隣り合わせの生活を送っているのだ。もちろん、同じように何度も死を経験した。
今日は、いつもより激しい戦闘があった。多くの仲間が殺された。
生き残ったのは、全員含めて数人しかいない。チーム仲間は、みんな優秀な奴等ばかりだ。彼らを失ったのは、正直辛い。
つまり、戦場カメラマンは、優秀でリスクある戦士が行くような所なのだ。
おそらく、彼らはそこしか生きる道がなかったのだろう。素晴らしい一人の兵士だが、正直、戦場にいていい人間ではない。
なぜなら、この中でケビンの性格は、人を悲しませるからだ。現に、今もそうだ。彼の発言のせいで、悲しくなった。
きっと、彼と一緒にいたくないのだろうと脳が検知した。そう思った時、すぐにその場から離れて、自分のテントに向かった。
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