闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第一章

52話 グラーヴェ

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――月日が青白く照らされる光景が歪む中、屋上で空を見上げるレオナは幻想的な時間をかけめぐり、彼女の瞳には未知の感情が宿っていた。施設の深部から聞こえる異常な音とともに、彼女は急速に力を取り戻し、その身に秘めた力を解放し始めた。

「なんで……こんなことになってしまうんだろう?私はただ、正義を貫こうとしていただけなのに……」レオナの声は深い悲しみを秘めていたが、同時に強さも感じさせるものだった。 

異常な音の正体は金属を削る音でその音がますます大きくなる。削る音を聞きながら空を眺める時間を楽しんだその時、金属音が急に止まり、静寂が広がった。レオナは不穏な空気を感じながら後ろを振り向くと、屋上の扉に立つ謎めいた存在が姿を現した。

「あぁ……エリザベスね。なんか用かな?」

エリザベスは謎めいた微笑みを浮かべ、ゆっくりと歩み寄ってきた。

「レオナ、貴方の力、見せてくれるかしら?」彼女の声は優雅で、どこか威圧感を感じさせるものだった。

エリザベスの呼びかけに応じ、レオナはエリザベスに対して激しい拒絶のまなざしを向ける。

「君なんかに私の力を見せる理由なんてない。何のために私に声をかけてきたの?」

エリザベスは微笑みを浮かべたまま、言葉を紡ぐ。

「貴方の力は特別ね。それに、私は貴方がどれだけの可能性を秘めているのか知りたいだけ」

レオナの眉間には深い皺が寄り、エリザベスの言葉に対する警戒心が高まっていた。

「可能性?私の力がどれだけ特別だというの?」

エリザベスは微笑みながら、広がる屋上の風景を見つめながら続けた。

「貴方の力はそのエレメントホルダーにおいてだけでなく、ゲノム遺伝子の中で特異な存在。又は怪物的な存在で、身体能力が通常の人間を遥かに超越している。それはあなたが普通の人間ではないことを示しているのよ」

レオナは言葉に驚きと疑念を交えながらも、自分の力について認めなかった。

エリザベスの言葉に、レオナは内なる葛藤を抱えつつも、彼女の前に現れた理由を尋ねる。

「なぜ私の力がそんなに特別だと思うの? それとも、君が何か知っていることがあるのか?」

エリザベスは深いため息をつくと、知らん振りをする。

「知らなぁい。ただの勘だよ~」

「ただの勘!? ふざけないで!」

怒りに震えるレオナの声が屋上に木霊する。エリザベスはなおも微笑みながら、彼女に対する不気味な愛着を覗かせていた。

「ふざけているのは貴方だよ。ただ貴方の過去は複雑でどういう経緯で戦闘民族になったのか不思議でしょうがないもん」

エリザベスの言葉に対して、レオナは戦慄と共に過去の記憶がよみがえるのを感じた。
エリザベスは話を続けた。

「ただ貴方の正義って、ただ悪者を倒して世界を平和にするってことするんでしょう? でもそれが本当に正義なのか、それとも何か別の力が影響しているのか、私は気になるのよ」

エリザベスの質問に対して、レオナは深い葛藤に囚われながらも、自分の信じる正義について語り始めた。

「私の正義はただの悪者を倒すだけじゃない。私は虐げられる者たちを守りたい。だからこそ、あの連中に立ち向かっていた。でも……でも、なんでこんなことになってしまったんだろう」

エリザベスは先程興味心身だったが目を合わせず適当に返事をする。


「へー、で? 何? ただ平和になりたいだけ? 私はそういう貴方みたいな平和は嫌いなんだよ」

エリザベスは冷酷なまなざしでレオナを見据え、言葉を続けた。

「私は私なりの平和がある。でも、それは貴方のような正義ではない。私の平和は楽園のような場所で手に入れるもの。力、支配、そして絶対的な自由。それが私の望む平和だ」

エリザベスの言葉に、レオナは戸惑いと反発心を交えた表情を浮かべる。

「私たちは違う。私は他者を守り、正義を貫こうとしている。君が求める平和は何なの?他人を犠牲にすることで手に入れるものなら、それは本当の平和じゃない」

エリザベスは冷淡な微笑みを浮かべ、次第に異次元のエネルギーが彼女を包み込むようになった。

「レオナ、君も気づいているはず。この世界は複雑で、単純な正義だけでは解決できない。力が必要だし、時には妥協も必要なのだ」

レオナはエリザベスの言葉に耳を傾けながらも、自らの信念を曲げずに立ち向かう決意を固める。

「私の信念を曲げない。私の力は他者を守るためにある。君の言う平和なんて受け入れられない」

レオナは冷酷なまなざしでエリザベスを見つめるとため息をついた。

「それが貴方の選択ならば仕方ない。ただし、私の計画に立ちはだかる者は容赦しないことを覚えておくといい」

言葉を残して、目の前から急に消えた。
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