闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第二章

67話 空とアリスのお買い物

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「てか、ここいい場所だね。外に出れば駅がすぐ目の前だし、歩いてすぐいけるね」

辺りを見回しながら耕平の魅力をアリスが語る。確かにここならアリス達の生活も不自由はしないし、アリスと一緒に居れると高速も公共交通機関も使えるからここら辺が一番無難な区域になるかもしれないな。

「そうだな、元々15年前の景色は空の心を癒す為だったし、ここで時間費やせるからな。ゆっくりするのに良い場所のはずなんだが・・・」

「空の子供の頃ってどんな性格だった?教えてほしいなー」

その発言に少し空は考えてから言葉を紡ごうとしたが、諦めた。何せ子供の頃、散々な人生だったのだろうかと振り返って嫌々だった。なので話したくない。だがアリスはそんな空の様子を察したのか、それともただの興味本位なのか、しばらくして彼女は別の話題を切り出した。

「まぁ、いいよ。無理に話さなくてもいいわ。でも、もし何か話したくなったら私がここにいるから」

彼女の優しい言葉に、空は微笑んだ。そう、彼女がここにいてくれることが、何よりも心強かった。

その後、空たちはモール内をさらに探索し、他の生存者や敵の気配は見当たらなかった。しかし、この状況がいつまで続くのか、そして皆がどうなっているのか、まだ分からないことが多かった。

「ここは一旦拠点として使うことにしよう。外の情報を仕入れつつ、必要な物資を集めるのも良いだろう」空はアリスに提案した。

彼女も同意し、空たちはモール内の一室を仮の拠点として使うことにした。必要な物資は一通り、1週間分の買い物コーナー、二階には洋服と本屋、まだ電気が駆動してるゲーム機一台。そして軽食を提供する出店が集まった一つのモールである。

外を出れば思い出させるような静かな小雨、壁に腰掛けて灰色に覆われた雲を眺めれば未来を憂う。数か月の任務だ、成功すればこの景色で語るのも最初で最後だし、また来ても同じことをするかどうかは未来予知をしても分からないし、希望があるのならここで引っ越すのもありだ。

そして肝心の風呂を思い出すと、このモール近くに銭湯なんてない。ましてや無償でシャワーを借してくださいとか、そんなサービスはここにはない。なので匂いと汚れを拭きとるために、ウェットティッシュが必須だ。

店に戻り、アリスにこのモールの二階にある洋服屋と本屋で服や本を買いに行くように頼んだ。空もついでに何か買ってくることにしよう。

「肉は品切れ、野菜は傷みあり……っと、昼は塩焼きそばだな。アリス、今日はレトルト生活かもしれない」

「えー!?味気無さは嫌いだよー!」

アリスは頬を膨らませて不満を露にする。

「あーあ、空ってさ、顔は可愛いのに性格があれだからモテないんだよねー」

続けてアリスが文句たらして悪口を言ってくる。こいつに言われると無性に腹が立つ。

「欠点があってすまんな、変態金髪少女」と空は言い返す。するとアリスが煽り返してきて、「ムキーッ!」と言って空に襲いかかってきた。

買い物を終えて二階から一階に降りてくると、ムラトが既に腕を組みながら見つめていた。どうやら空らが出かけるときに後をついてきたらしい。

「お、おうムラト。来てたんだ」空はいきなり現れたムラトに声をかける。ムラトは頷き、そして口を開いた。

「単刀直入に聞くけど、雇う必要あった?護身術できる奴が私たちなら三人、いざとなったら殺し合いになるのに、雇う身はそれに協力しないなんて。もしかして朝日にも嫌なことでもあって悲観してるだけか?」ふむ、流石アビリティーインデックス2位。勘が鋭いというか観察力が並じゃない。大した奴だ。空は口を開こうとした瞬間、ムラトは空より先に口を開いた。「まぁ、人間なんてそんなもんだよね。感情を持つ生き物だからこそ、理屈とか力の前に折れてしまうこともあるさ。それは別に間違ってはいないと私は思うよ。大人って心深いからね」空はこいつの性格の良さに少し感心した。見た目は子供なのに、心は大人なんだなぁという認識を得ることができた。一理ある。確かに自分勝手な行動だし、周りに流されるがままにしていた。でももっとちゃんと考えて行動すべきだったな。空は少し反省すると同時にムラトに謝罪した。

「すまんな、ムラト」と空は言ったが、ムラトは気にするなとばかりに頭を横に振った。

「あれ、もしかして怒ってないか?拗ねてるとかそういうのとか」

と空は聞くと、ムラトは目を合わせながら人を見下すような目つきで答えた。

「いや?怒ってないよ?むしろいつでも一生待ちますよ。依頼を解約するまではね」とムラトは言う。子供に見下された気分になるが、不思議と嫌ではないというかむしろ清々しい気持ちになった。まぁ、こんぐらい言ってもらった方がやる気上がるし頑張ろうと思う気にもなるだろう。しかし、少し気になることがある。何故ムラトはアビリティーインデックス2位に上り詰めることができたのか。アビリティーインデックスは、その年に最も優秀な人材を選抜して組織がランク付けをするシステムだ。1位から10位まではアビリティーインデックスの上位に名を連ねる。しかし、1位から10位までの能力はアウレリアを占めており、中位以下の連中の能力の平均値を上回っている。そこから考えれば、ムラトの能力をそこまで上げることはほぼ不可能だ。何故ならアウレリアのほとんどは人間じゃない。遺伝子から生み出したアビリティーインデックスは、人間の能力値を遥かに超えた能力を持つ者しか上位に名を連ねることができない。つまり、アウレリアは人間でもアビリティーの数値が高いため、ムラトがアウレリアに勝てるはずがないのだ。例えばアビリティーインデックス1位のエリザベスは一人で、東郷機関の4個班を全滅させるほどの強さだと言われている。その1個班は50人分で、1人でゲノム少女3万以上を相手に出来るらしい。そんな奴に勝てるわけが無いのだ。だが、ムラトはアビリティーインデックス2位に上り詰めた。もしアウレリアなら空たちの部隊を全滅させてもおかしくないはずだ。にも関わらず、出会って一回もアウレリアと戦った履歴のある奴らは誰一人いない。奴らなら空の仲間たちを壊滅できたはずなのにだ。不審に思って仕方が無い。そこで空は一つムラトに質問をしてみたんだ。「なぁムラト。一度だけ、アウレリアと対決したことはあるか?」そう空は聞いてやった。だが、ムラトはこう答えた。

「いいえ。一度もありませんよ。中立派なので」もちろんその言葉を鵜呑みにしたわけじゃない。そこからまた質問を続けた。質問内容は以下の通りだ。「アビリティーインデックスの1位を羨ましいと思わないのか?」

この質問に対してムラトはこう答えたのだ。「別に、なんとも思いませんけど」この言葉も鵜呑みにしたわけじゃない。確かめる必要があったからだ。

そこで空は最後の質問としてこう質問した。「エリザベスが羨ましいと思わないのか?」この質問に対してムラトはこう答えた。「あーエリザベスですね。強いですよねあの速いエイムと身体能力、全部羨ましいと思いますよ」その時に空は確信した。ムラトのアビリティーは2位じゃなく、本当の1位はムラトだと。今は腕を組んで依頼が来るのをただ待つことしかできない。 しかし、いざ能力が解放されると、ムラトの能力はチート級以上、一人で国家を壊滅できるほどの力を持っていた。そんなムラトに勝てる奴なんているはずがないのだ。なので、今のうちに攻撃対象にするか、それともエレメントホルダーを封印して生かしておくべきか空は迷っていた。
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