闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第三章

ベータ144の異常個体

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『臨時ニュースです。先ほど、大和市海森区にて「ベータ144」と呼ばれる突然変異生物が目撃され、現在警察および特殊捜査機関による封鎖が行われています。ベータ144は、これまでにも報告されている異常個体の一種とされており、地域住民には厳重な避難指示が出されています。この生物に近づくことは極めて危険であり、当局は近隣住民に対し速やかな避難と安全確保を呼びかけています。なお、この生物に関する詳細な情報はまだ発表されておらず、現在調査が続けられております』

『WHO(世界保健機関)の声明によれば、ベータ144に類似する突然変異生物の存在が、他国でも確認されているとのことです。これらの生物は突如変異を起こした生体として国際的な注目を集めており、その原因は未だ解明されていません。WHOは世界各国の研究機関と協力し、この現象の解明に向けた取り組みを強化していると発表しました。一方で、ベータ144を目撃した大和市海森区では、住民にさらなる避難指示が出されており、事態は緊迫した状況にあります』

『小林首相は本日、記者会見を開き、ベータ144の事態に関する政府の対応方針を発表しました。「この突然変異生物の脅威に対し、政府は全力で取り組むとともに、住民の安全を最優先とすることを約束します。現在、特殊部隊を含む捜査機関が現場に派遣され、徹底した封じ込め作戦を進行中です。また、国内外の研究機関と連携し、原因の解明および今後の対応策を早急に打ち出してまいります」と述べました。』

小林首相の発表は全国に緊張をもたらし、ベータ144に関する情報が次々と報道されていた。テレビ画面に映し出される異常な光景に、視聴者たちは不安を隠せない。街中の大型スクリーンでも緊急ニュースが放送され、人々は立ち止まってその映像を見つめている。

『理化学研究所によると、ベータ144は通常の生物と比較して異常な変異を遂げており、従来の生態系では確認されていない特異な生態を持つとされています。研究者たちは、この変異が遺伝子レベルでの変化によるものか、それとも外部要因による突発的な影響なのかを解明するため、調査を進めています。しかし、現時点では解明が難航しており、原因についてはまだ不明です』

家電店に展示されるテレビ画面には封鎖された海森区の様子が映し出され、厳重な警戒態勢の中、特殊部隊が展開している様子が確認できる。住民たちは避難指示に従い、必死に現場を離れる姿が映し出されていた。

大和市の街中では既に緊張が張り詰め、人々がざわめきながら避難指示に従って動いていた。行き交う車両がサイレンを響かせ、緊急車両が次々と海森区へ向かう姿が目立つ。子供を抱えた母親や荷物を手にした人々が、避難所へと急ぐ姿が見られ、周囲には一種の緊迫感が漂っていた。

時間が経つその頃。その様子を見つめていた謎の二人の少女が、ビルの屋上から避難する人々を静かに見下ろしていた。片方の少女は長い黒髪を風になびかせ、鋭い目つきで封鎖区域を見つめている。その表情には、どこか冷徹さと焦燥感が交じり合っていた。もう一人の少女は、短い銀髪を持ち、少し怯えたような表情で仲間の肩越しに下の混乱した光景を見ていた。

「これが……ベータ144か……」黒髪の少女が低い声でつぶやいた。その声には怒りとともに何かを決意するような響きがあった。

「姉ちゃん、どうするの?こんなところでじっとしていていいの?」銀髪の少女が不安そうに問いかける。彼女の名前はケリーだった。

黒髪の少女は年上の女性の問いかけに目を細め冷静な表情で答えた。「もう少し、いいタイミングで始めるわ」

黒髪の少女はしばらく沈黙を保ちながら、海森区の封鎖されたエリアを鋭い目で見つめていた。彼女の名前はリナ。特殊な力を持つ姉妹として幼少期から数々の危険な任務を乗り越えてきた。彼女はアビリティーインデックス12位、危険度メリディアンであり、戦闘能力や判断力で知られる存在だった。その名を聞いた者の間では畏怖と尊敬が入り混じった感情を引き起こす、まさに特異な存在だ。

幼少期から特殊な力を持つリナとケリーの姉妹は、常に過酷な訓練と試練を課されてきた。幼少期から彼女たちは、普通の人々が決して理解することのできない異能を持って生まれていた。その能力ゆえに政府の監視下に置かれ、秘密裏に任務をこなしてきたのだ。

リナはアビリティーインデックス13位、危険度メリディアン。冷静沈着であり、圧倒的な戦闘能力と鋭い判断力を持ち、どんな状況でも動じない強さを備えていた。一方、ケリーは姉と異なり、優れた感受性を持ち合わせており、その力で危険を察知したり、周囲の気配を読み取ることができた。

二人は特別な訓練施設で育てられ、過去にさまざまな任務を成功させてきた。彼女たちが直面してきた危険な任務の数々は、数え切れないほどある。しかし、今回の「ベータ144」に関する事態は、二人にとってはこれまでの任務よりもさらに困難で予測不能な挑戦であった。

ベータ144の知能がこれまでの異常個体と異なる進化を遂げている可能性が示唆されており、その行動パターンが極めて予測困難であると研究者たちは警鐘を鳴らしていた。従来の異常個体は攻撃的な特性や破壊衝動を見せることが多かったが、ベータ144は独自の知能や戦術を持ち、人間の行動を冷静に観察しているという目撃証言が増えていた。そのため、捜査機関や特殊部隊も対応に苦慮しており、従来の封じ込め作戦が効果を発揮しない恐れが高まっていた。

リナはそんな情報を得て、目の前の状況に対して自らの判断を練っていた。海森区の封鎖エリアには、すでに多くの捜査機関の職員が配置されているが、リナにはそれでも状況が制御不能に陥る危険性が見えていた。ベータ144がどのような力を持ち、何を目指しているのかが不明である以上、いかなる備えも万全ではないからだ。しかし相手はゲノム少女、彼女は戦闘経験豊富なのだ。

「ケリー、準備はいい?」

ケリーは目を伏せながらも小さく頷いた。リナは静かに息を吐き、冷たい眼差しを再び封鎖区域へと向けた。

「Lady……GO!!」

リナの号令とともに、ケリーは意を決したように一歩前へ出た。ビルの屋上から彼女たちは風を切り、音もなく宙を舞う。特殊な能力によって、空中で驚異的なスピードをもって移動することが可能であった。二人は夜の闇に溶け込むように封鎖区域の方向へ飛び込み、姿を消していった。
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