闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第三章

突然のパンク

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突然、装甲車の左後ろのタイヤから耳障りな音が響き、車体がぐらついた。空はすぐにハンドルを握り直し、車を安定させようと必死になった。

「何だ!?」空が叫び、装甲車を止めるためにブレーキをかけた。タイヤが路面をこすり、車内に緊張感が一気に戻った。

「パンク!?それとも爆発!?」アリスが警戒心をあらわにして助手席の窓から外を確認しようとした。

レナが装甲車から降り、拳銃を構えながら周囲を見渡す。空とアリスも武器を手にして警戒態勢を取った。ムラトはその様子を冷静に見守りつつ、何かを感じ取ったようにゆっくりと車外へと出た。

夜の静寂を切り裂くかのように、不気味な金属音が遠くから響いてくる。装甲車の左後ろのタイヤは確かにパンクしていた。その原因はタイヤに突き刺ささった針だった。

「この辺に針でも落ちたか?」

ムラトがタイヤを覗き込みながら呟くと、レナが辺りを警戒しつつ低い声で返した。「そんな単純な話じゃないと思う。もし落ちてたら刺さることもないし、刺さったとしてもこのタイヤの層は空気漏れを防止してくれるから大抵の針なら防いでくれるはず」

「確かに……何か意図的なものを感じる」とムラトが険しい表情で言いながら、装甲車の下を確認した。

「アリスちゃん、トランクの中から黒いポーチ持って来て」

レナがアリスに指示を出すと、アリスは「了解!」と返事をし、装甲車のトランクへと急いだ。トランクを開け、指定された黒いポーチを取り出すと、すぐにレナの元へ駆け寄った。

「これでしょ?」アリスがポーチを手渡すと、レナは頷きながらポーチを受け取った。「そうそう、それ。タイヤの修理キットが入ってる」

レナはポーチを開け、迅速にタイヤの修理作業を始めた。周囲を警戒しながら、手早くパンクの原因を確認する。刺さった跡を丁寧に調べた後、レナは険しい顔つきでつぶやいた。

「複数の針跡確認……って、これ穴空いた針だわ!?」

「穴空いた針?」アリスが驚きの声を上げる。

「ええ、これは偶然なパンクじゃないわ」レナは慎重に針を取り外しながら、細かく観察した。「この針、車のタイヤをパンクさせるために使われた可能性がある。しかも、かなり鋭く頑丈に作られている……テロ関連か、あるいはベータかもしれない」

空が険しい表情で言葉を継ぐ。「つまり、タイヤが狙われたってことか。偶然じゃなくて、誰かが仕掛けた?」

レナは頷き、針をビニール袋に入れて保存した。「その可能性が高いわ。この装甲車が狙われた理由は分からないけど、少なくとも敵意を持った誰かがいることは間違いない」

ムラトがタイヤの周囲を調べながら静かに言った。「不気味な金属音がしていたのは、これと関係があるのかもな。周囲に潜んでいる可能性がある。動的阻止として『BCA ニード4』を開始する」

その言葉に全員が緊張を強め、各々の武器を構えながら周囲を警戒した。空は通信機を手に取り、応援を要請するかどうかを迷っていたが、状況を判断してすぐに決断した。「念のため、応援を要請する。周囲の状況を確認しながら待機しよう」

アリスが散開して周囲を警戒し始め、レナはタイヤの修理を急ぐ。ムラトは装甲車の周りを歩きながら、不審な音や動きを探している。

「……何か、近づいてきてるかも」アリスが低い声で警告した。

その時、不気味な影が街路樹の間から気配を感じた。空が目を凝らすと、暗闇の中から小さい異形のシルエットが急に飛び出し、反射的に空は照準を、目の前の影に向けて引き金を引いた。銃声が夜の静寂を切り裂き、異形のシルエットが地面に叩きつけられる。弾丸が命中したその影は、綿が散乱したただの馬のぬいぐるみであり、車内は一瞬、静まり返った。空は銃を構えたままそのぬいぐるみをじっと見つめ、眉をひそめた。「何だ……これは?」

アリスが慎重にその場に近づき、ぬいぐるみを拾い上げた。「ただのぬいぐるみ……のわけがない。こんな状況で置かれるはずがないでしょ」

レナもその場に歩み寄り、ぬいぐるみを観察した。「見た目は普通のぬいぐるみだけど……でも中身も何も入ってないただのぬいぐるみだわ」

「ぬいぐるみ……ただの気味が悪い演出ってことか」空が慎重に言葉を選びながら、ぬいぐるみを見向きもしなかった。するとその時、彼の後頭部から銃口を突きつけられる冷たい感触が走った。
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