闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

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第五章

おしゃべり化け物対決

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怪物は異様なオーラを放ち、周囲の空気を震わせていた。その巨体から発せられる威圧感は、これまでの戦いとは比較にならないほどだった。



「ムラトと言ったな。この俺に勝てると思うか?」

怪物の口が開き、人間のような声が不気味に響いた。その声は深く、地の底から直接耳に届くような感覚を与える。



ムラトは一瞬だけ目を細めたが、すぐに冷たい笑みを浮かべた。「おしゃべりな化け物だな。だが、俺は言葉より結果を重んじる主義なんでな。」



怪物が嘲笑するように唸り声を上げた。「結果だと? 面白い……ならば、その薄っぺらい覚悟、今すぐ叩き潰してやる!」



巨大な触手が勢いよく振り下ろされ、地面が砕け散る。衝撃波が広がり、空気そのものが唸りを上げるほどの破壊力だった。しかし、ムラトはそれを紙一重で避けると、地面を蹴って一気に間合いを詰めた。



「お前の手数が増えたところで、狙う場所は変わらねえ!」

ムラトの刀が閃き、怪物の触手の一部を正確に斬り落とす。その動きは流れるようで、まさに人知を超えた技術の結晶だった。



「流石!」背後でエリザベスが喝采する。



「そっちも早く倒せ!」ムラトは叫びながら、さらに深く怪物の核心部を狙い始めた。しかし、怪物はただの巨体ではない。その再生能力と無数の触手がムラトの動きを封じようとする。



「しつこい野郎だ!」ムラトは再び切り込むが、怪物の動きは先ほどよりもさらに洗練されていた。一撃を加えても、それをすぐに再生し、逆に隙を作ろうと攻撃を仕掛けてくる。



エリザベスはそんな状況を冷静に見つめ、ついに呪文を完成させた。「ムラト、次の攻撃がチャンスよ! この一撃に合わせて核を狙って!」



「静粛に!!」ムラトは短く答えると、全神経を集中させた。



エリザベスの手から放たれた光の波動が怪物を直撃し、その巨体を一瞬だけ硬直させる。その隙を見逃さず、ムラトは全力で跳躍した。



「ここだ!」

ムラトの刀が怪物の胸部にある核を正確に貫いた。その瞬間、怪物が耳をつんざくような悲鳴を上げ、懐から手榴弾を取り出すと無理矢理に口に押し込んだ。



「あばよ!」



その言葉が途切れた瞬間、手榴弾の引き金が引かれ、爆発的な衝撃が広がった。周囲の空気が振動し、爆風がムラトとエリザベスを巻き込む。光と熱が一瞬にしてすべてを包み込み、周囲の地面が揺れ、破壊される。ムラトは爆風を受けながらも、瞬時に身をひるがえして背を向け、エリザベスを守るように体をかばう。



爆発の後、すべてが静寂に包まれ、煙と塵が立ち込める中で、ムラトはゆっくりと立ち上がった。目を細めながら煙を払いのけ、周囲を見渡す。残されたのはただの破壊された空間と、消し飛んだ怪物の痕跡だけだった。



エリザベスもその場に立ち、少し息を整えながら冷静に言った。「完全に消し飛ばされたわね。でも、あの一撃で本当に終わったのかしら?」



ムラトはしばらく無言で周囲を警戒しながら立ち尽くした後、低い声で答えた。「見れば分かるだろ?跡形も無く消えた。ただ、確認したいなら君が直接確認すればいい。」ムラトは冷静に言いながら、再び周囲を警戒しつつ、エリザベスに視線を向けた。爆風の中で彼の鋭い目は、消えた怪物の痕跡を追い続けている。焦ることなく、むしろ冷徹に状況を観察しているようだった。



エリザベスは少し考えると、慎重に前に進みながら辺りを見回す。「ふーん、確かに何も残ってないわね。『合格』っと言いたいところかしら」



彼女の言葉通り、周囲の空間は破壊され、あたりには黒い煙と塵が漂っているが、怪物の姿はどこにも見当たらない。爆発がすべてを消し去ったかのように見える。



「だろ?確実に木っ端微塵にしたからな」ムラトが小さく呟き、足元を見ながら慎重に歩みを進めた。



その言葉が途切れると同時に、ムラトは視線を前方に集中させ、確信を持ったようにうなずいた。爆風が収まり、煙が晴れた空気が少しずつ流れ込んでいく中で、彼は再び刀を構えた。



「んで、あの水色の少女をどうする?」



ムラトの声は冷静でありながらも、どこか危険な響きを含んでいた。周囲の煙が薄れ、視界が少しずつクリアになっていく中で、彼はエリザベスに向かって目を細めた。その目線は一瞬、焦点が合い、そして再び周囲を警戒しながら戻った。



エリザベスは少し沈黙した後、冷徹な表情で答えた。「彼女はー、後回しにしましょう。」



その言葉には、どこか意味深い響きがあった。水色の少女という存在は、戦いの中で一度も登場していなかったが、明らかに重要な役割を果たしている人物であることは彼女自身も感じ取っていた。だが、今はそれどころではない。



「後回し?」ムラトは眉をひそめ、少し不満げに呟いた。「今、戦いが終わったわけでもないだろう。あいつのことを後回しにしている間に、何か起きる可能性もあるんじゃないか?」



エリザベスはその言葉に対して軽く肩をすくめ、「そうね。美味しい物は最後まで取っととく。あの少女に対する試合はもう少し後にしないと、つまらないからね」と、再びその冷徹な表情を見せた。



ムラトはその言葉を黙って聞き、しばらく考え込んだ。確かに、目の前の脅威が完全に消えたわけではない。まだ何かが潜んでいる、もしくは隠れている可能性がある。それに、あの少女の存在が今後の戦いにどう影響を与えるのか、まだ完全に把握していなかった。



「分かった。」ムラトは一瞬ため息をつくと、刀を構え直して再び周囲を警戒し始めた。「だが、次は早めに片を付けろよ。」



エリザベスは無言で頷き、彼とともに周囲を見回しながら慎重に進んでいく。その姿勢からは、次なる危機に対する警戒心が強く感じ取れた。
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