闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春

文字の大きさ
38 / 165
第五章

エリザベスの真偽

しおりを挟む
「ユキ!」空はすぐに反応し、後ろを振り向くとエリザベスがユキを人質に取っているのが見えた。エリザベスの顔は冷徹で、彼女が手に持っている銃剣リボルバーをユキの頭に狙う。



「エリザベス! 何をしているんだ!」空が叫びながら前に出ようとすると、エリザベスは冷たく笑った。



「静かにしてね、空」エリザベスは冷静に言った。「貴方達。まだこの人と一緒なの?」



「エリザベス、どうしてこんなことを?」空は声を震わせながら問いかける。エリザベスの表情は冷たく、まるで今までの仲間関係が全く意味をなさないかのようだった。



「どうして…?」エリザベスは薄く笑みを浮かべた。「どうしてって、教えないわ。でも、一つ言うとしたら別に虐めてるわけじゃないの。私はただ、みんなが目を覚ますきっかけを作りたかっただけよ。」



空はその言葉に驚き、戸惑いながらも冷静に考えようとする。エリザベスの冷徹な表情には何かが隠れているのが感じ取れた。彼女は以前から少し不安定な一面を見せていたが、まさかこんな形で自分たちに対抗するとは思っていなかった。



「目を覚ますって、何を言っているんだ?」空が問い返す。



「空、まだユキのことを心配しているのね。」エリザベスは冷たく言い放った。「あの時、輪上ユキは何をしてたと思う?」エリザベスの言葉に、空は一瞬息を呑んだ。彼女の目の前に立つユキが、人質となっている状況に、空の頭は混乱していた。



ユキは恐怖に満ちた表情で、エリザベスの銃剣リボルバーに狙われているのを感じ取っていた。空は必死に冷静さを保ち、ユキを守る方法を考えようとする。



「エリザベス、どういうつもりだ!」ムラトが怒声を上げながら、周囲を見渡し警戒した。「あんた、何か誤解してるんじゃないか?」



「誤解?」エリザベスは不敵に笑った。「違うわ。私がしているのは、みんなに真実を見せることよ。ユキが何をしたか、あなたたちがどれだけ知らないか、分かる?」



空の心の中で、何かが引っかかった。ユキの過去に何かがあったのは知っていたが、今まではそれをあまり深く掘り下げていなかった。ユキが何か秘密を抱えていると感じていたが、まさかエリザベスがそれを暴こうとしているとは思わなかった。



「ユキ、何を…?」空はもう一度ユキに問いかけるが、ユキは沈黙したまま顔を伏せている。



エリザベスはユキの反応を見て、ますます冷たく語った。「ユキが私たちと一緒にいたのは、最初から計画的だった。彼女は、私たちの仲間を裏切り、最初から戦争を引き起こそうとしていたんだよ。」



その言葉に、空はショックを受け、目を見開いた。「それは…本当なのか、ユキ?」



ユキはついに口を開く。「違う! 私は…私は、ただ…」言葉が途切れ、ユキは視線を逸らした。



「ほら、やっぱり。」エリザベスは鋭く言い放った。「ユキが言えないことが全てだわ。私は、彼女に真実を聞き出す必要があっただけよ。」



「いや、待ってくれ!」空は焦りながらも前に出る。「ユキがそんなことをするわけがない。ユキはただ、みんなと一緒に戦って、平和を望んでいるんだ!」



「平和?」エリザベスの口調が鋭くなる。「その平和が、本当に実現できると思っているの?ユキがやってきたことが、どんな結果を招くか分かっているのか?」



空は、ユキの表情を見ながら一瞬黙り込む。ユキは本当に何も言わないが、その目には後悔と痛みが浮かんでいるようだった。



その時、突然レナが冷静な声で言った。「エリザベス、もういい。ユキを放せ。今、あんたが何を言おうと、私たちはユキを信じている。」



アリスも続けて言う。「エリザベス、そんなことで仲間を傷つけるなんて、あなたらしくない!」



レナも言葉を発する。「何があったにせよ、こんなことを続ける意味がない。ユキを傷つけても、何も解決しない!」



その言葉に、エリザベスの表情が少しだけ崩れたように見えた。しかし、すぐに彼女は冷静さを取り戻し、銃をユキから離すことなく言った。「あなたたちの信じるものが、どんな結末を迎えるか、私は見届けるつもりよ。」



その言葉の後、しばらくの沈黙が続く。空は目を閉じ、深呼吸をしながら心の中で冷静さを取り戻そうとした。ユキが裏切り者だったのか、それともエリザベスが誤解しているのか。どちらにせよ、今はただ仲間として信じ合うことが最も大切だと、空は感じた。



「ユキ。」空はゆっくりと彼女に呼びかける。「君が何かを隠していても、今はそのことを問い詰める時じゃない。君が仲間であることに変わりはない。」



ユキは目を見開き、少し驚いた表情を浮かべたが、やがてその目に涙を浮かべながら、静かにうなずいた。「ありがとう、空…」



「今貴方達が動けば彼女の頭は吹き飛ぶわよ。」エリザベスの冷たい声がその場に響いた。緊張がさらに高まり、空たちはその場で立ち止まった。



「エリザベス、本当にこんなことを続けるつもりか?」空が一歩前に出ながら言う。「お前がどんな理由でこんなことをしているのか知らないが、これ以上は無意味だ。話し合おう。」



「話し合い?」エリザベスは皮肉げに笑った。「話し合いなんて、戦場では何の役にも立たない。それに、ユキが何をしたか分かっているのに、まだ守るつもりなの?」



「エリザベス!」アリスが鋭い声を上げた。「私たちは仲間だよ! こんな形でお互いを傷つけて、何になるの?」



その言葉に、エリザベスの表情がわずかに揺らいだ。しかし、すぐに彼女はその動揺を隠し、銃を握る手をさらに強くする。



「ユキがやったことを知ったら、あなたたちも後悔することになるわ。」エリザベスは低く、冷たく言った。「でも、私が代わりに背負ってあげる。この真実を…」



その瞬間、ユキが震える声で口を開いた。「待って、皆…私はもう大丈夫」



ユキの声が震え、空気がさらに重くなる。その場の全員が彼女に視線を向けた。ユキは深く息を吸い込み、涙をこらえながら続けた。



「私はどうでもいい…だから、みんなを巻き込まないでください。それだけです」



「白い……輪上ユキ。言い訳はないの?」



エリザベスの冷徹な声が場を支配し、ユキの肩がわずかに震えた。ユキの表情はさらに苦しげなものになっていった。空たちはその言葉に戸惑いながらも、何か重大な意味を感じ取った。



「ん?なんて…?」空が疑問の声を漏らすと、エリザベスは冷笑を浮かべた。



「ん?何でもないよ。とりあえず、どうする?撃つか、この人から離れるか」



その言葉に場が凍りつくような緊張感に包まれた。空たちは身動きが取れず、全員の視線がエリザベスとユキに集中する。空は拳を強く握りしめ、なんとかこの状況を打開する方法を探ろうとしていた。



「エリザベス…お願いだ、こんなことはやめてくれ。」空が静かに、しかし力強い声で呼びかける。「もし何か事情があるなら、話してくれ。それを解決するのが俺たち仲間だろ?」



その言葉に、エリザベスの瞳がわずかに揺れるのを空は見逃さなかった。しかし、彼女はすぐに冷静さを取り戻し、再び銃を構える手を強くした。



「話して解決できるようなことじゃないのよ、空」エリザベスは低い声で答える。



「さぁ、撃つか離れるか」

「おい紳士、何お飯事してるんだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

十二輝の忍神 ーシノビガミ― 第一部

陵月夜白(りょうづきやしろ)
歴史・時代
天明三年――浅間山が火を噴いた。 神の怒りに触れたかのように、黒い灰は空を塞ぎ、郷も田畑も人の営みも、容赦なく呑み込んでいく。噴火と飢饉が藩を蝕み、救いを求める声の裏で、名もなき影が蠢いた。灰の夜を踏むのは、血も温もりも失った“黒屍人”。誰が、何のために――。 その災厄に呼応するように、忍びの郷に封じられていた「十二輝の干支の珠」が、ひとつ、またひとつと眠りから解かれる。 珠は器を選び、器は力に喰われ、力は人を裏返す。 伊賀と甲賀の長い因縁、奪われる珠、引き裂かれる同胞。 そして、灰の国で拾い集められていく十二の輝きが揃う時、世界の秩序そのものが――動き出す。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...