みにくいおでぶの子

みちる

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 おふっ、随分と可愛らしく、ぷちゅっと吸われちまった。ふはっ、それにこの匂い……。
 一瞬だけ吸い付いた可愛い唇はすぐに離れてしまったが、その濡れた感触はしっかりとナハムの唇に残っていた。
 そのうえ、以前にも匂った花の香りがフンワリ漂いナハムは心で密かに笑う。前回は油断しているところを不意打ちだったため、その特殊すぎる能力に不覚をとったが、二度目ともなれば簡単に防ぐことは可能で何の問題もない。
 軽く魔力を練ると容易く霧散してしまうそれが逆に惜しいぐらいで、無意識にその能力を発動させてしまうハァルが健気で可愛くて堪らない。

 それにしても、突然の天使堕ちとはたまんねぇな。
 ハァルが吸い付いてきた行為は、赤ん坊が乳に吸い付くような完全に無垢な行為ではなく、間違いなく欲や色を含んでいる上に、受身じゃなく自発的なものであった。
 それが例え庇護された感謝の気持ちの延長線上のものだったとしても、ナハムの昂揚する気持ちを止めるのは難しい。
 甘く誘って少し触れでもすれば簡単に落ちてくるだろう今のハァルなら、堂々と愛し合った上で女神の審判を抜けることも可能だろう。そんな危うさもナハム限定であると思えばなんとも心地良いものである。

 少しくらい怯えてくれたほうが刺激的でいいんだが……怯える柔らかい身体を押さえつけて、こう、ガツガツッと、あー、やりてぇなぁ。
 いや、まぁ、やらねぇけど。
 凶暴な欲求を抑えこむのもそろそろ快感になりつつあり、別の扉を開きそうな勢いだ。

「ああ、なんてかわいいんだろう。ふふふ、お肌がプルップルだ」

 くすぐったいような気持ちのまま、ナハムは恥かしげに赤く染まったハァルの顔を覗き込むと、鼻や口を戯れに擦り合わせ、軽くチュッチュとリップ音をたてる。
 まだ律儀に言われたとおり目をギュッと閉じている様が、堪らなくナハムの心を刺激した。

 ああ、可愛すぎて腹ん中がグルグルする。
 おまえ、いいのか? こんな簡単に騙されて……。
 柔らかいプリプリと太った美味そうな獲物が、食べて食べてと飢えた肉食獣の目の前で一番美味しい柔らかな部位を晒しているかのようなその様に、ナハムは肉食獣の立場でありながら獲物の心配をしてしまう。

 まぁ、この凶悪に可愛い奴は一生俺のものだし、騙しても俺の嫁になるのだからいいのか?
 ハァルを未来の嫁と決めたのなら成人まできっちり待つのは当然のことだ。
 成人までたっぷりある時間を我慢の時間と捉えるのならば、それは結構な苦行と言えるが、親愛に毛が生えた程度のハァルの可愛らしい感情を育て上げ、未成熟な身体をゆっくりじっくり仕込んで自分好みに染め上げる時間だと考えれば、ナハムにとってそれは想像するだけでゾクゾクする愉しいひとときとなる。
 愛情を向けることにも向けられることにも慣れていないハァルが、ナハムへの恋に悩んだり、ナハムに恋焦がれたりする。そんな甘美な日々への期待でナハムの頬が緩む。

 まぁ、でも、とりあえずは将来に向けて、まずは身体に教え込んでやらねぇとな……。
 ナハムはうっそり悪い笑みを浮かべながら画策する。

 まずは全身舐めしゃぶって消毒のついでに感度チェックか……。
 後は順々に口と、喉奥と、乳首と――。
 無垢な身体を自分好みに開発し奪いつくす悪辣な手管を具体的に脳裏に描けば、ナハムは自分でもあきれるほどに高ぶってしまう。

 今だって十分感度良好のこいつを更に上手く育て上げれば……いいじゃないか。いいじゃないか。
 淫らな妄想に耽るナハムの愛は残念ながらいつも唐突な一目惚れと強引な身体の関係から始まるのが常で、今回のように必死に我慢を重ねることは非常に珍しい。
 ナハムの碌でもない思考など知りもしないハァルは、抱き寄せられるままにその胸に顔を摺り寄せ、力強くてしなやかな感触にうっとりと顔を綻ろばせている。

 ちゅってしちゃったけど、ナハム怒ってないみたい。よかった。
 軽やかな笑い声と顔中に落とされた軽い口付けにドキドキしながらも、ハァルはホッと安堵していた。誠実で責任感の強そうなナハムに可愛い可愛いと可愛がられていても、ハァルはそれを犬猫に向けるものとあまり大差ないものだととらえていた。
 それでもハァルはどうしようもないほどに、ナハムが好きになってしまっていて、抱き寄せられれば幸せで嬉しくて胸が痛くなってしまう。

 ねぇ、僕、子供じゃないよ。
 切なく心で囁くが、ハァルにはそれを口にする勇気なんてとてもでない。
 子供だからナハムが保護してくれたと思えば自分が成人している事実なんて隠したほうがいいとハァルは閉じた目にギュッと力をいれた。

















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