召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二章 屋敷の外へと踏み出して

ごーれむづくりはむずかしい

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 あのヘイネルという男の出した選択肢の中で、最もオレ達の利益になるものがゴーレムを作り献上するものだった。可能性がゼロでない限り挑戦しない手はない。
 さて収穫祭まで、どのくらいの日数があるのだろうか。
 半年くらいあればいいなとロンロに尋ねる。

「あと、5が4回くらいかしらぁ」

 5が4? そう言えばこの世界の人は、数の数え方が変だ。1・2・3・4・5まで数えると5が一つと1が一つと言う。7なら5が一つと2。
 ただし、時間と暦に限っては王様を表す6と太陽を表す7を使うそうだ。わけがわからない。
 おかげで、店での買い物などで値段を聞いたり交渉するのがめんど臭かった。
 ただし、不思議なことに相手が10進数で話を進めてくる事もあった。
 最初は、4回に1回くらいが10進数だったのが、今では数を示すときには殆どが10進数での会話が成立する。
 この世界に来てから、元の世界と同じ言葉が相手に通じている。
 聞こえる言葉もなじみのある言葉だ。相手の口の動きから察するに、話す言葉が不思議な力で翻訳されているようだ。さしずめ数の話は、その翻訳機能が調整されてきたということなのかもしれない。
 ノアが5以上の数を数えるのに、しどろもどろだったのは数え方が違うからだったようだ。ちなみに、どうして5区切りなのかを聞いたら、ノアは当然のように指が5本あるからだと言っていた。この世界の常識なのだろう。
 カガミがノアに10進数とアラビア数字を教えたので、意思の疎通はかなり楽になった。数字の数え方や表記方法が違うだけで、意思疎通がこんなにも変わってくるのかと驚いたものだ。
 ロンロにも数字について説明したほうがいいかもしれない。

 さて、その考え方からいくと、あと20日か。

「うぇ、期限まであと20日しかない……」
「なんだか、私達って、何処にいっても納期に追われると思います。そう思いません?」
「確かにカガミ氏の……」
「アァー聞こえない聞こえない。アー聞こえない」

 両耳に手をやって首をブンブン振り回す。
 うすうす感じていた嫌な考えを同僚達が言語化しやがった。
 なんてことだ。元の世界でも無茶な納期に追われていたが、こちらに来ても納期に追われることになるかもしれない。
 運命じみたものを感じて、嫌な気分になる。朝から、テンションだだ下がりだ。

「みんな、落ち着け。落ち着くんだ! 資料を当たろう。そう死霊のように静かにだ……えっと、ここでいう死霊って、あのお化けの死霊で、牛とか牛が食べるものじゃ無くて……」
「とりあえず、リーダが落ち着きなよ」

 そうだ。そうしよう。気を取り直して資料をあたる。
 あのコンパクトヒゲ親父。ブラウニー共に作らせた目録のおかげで、ゴーレムの製法に関する資料はすぐに見つかった。さっと目を通したカガミがサムソンに、サムソンがオレに、それぞれ無言で製法の書かれた本を回して来た。とりあえずパラパラと流し読みする。資料を読むのは割と得意だ。

「わぁ、無理だ」

 あまりのひどさに、諦めの声を棒読みで口にする。
 とんでもなく魔法陣が複雑だった。今まで召喚魔法などで、複雑だなと思ったりしたが、段違いだ。
 コンピュータのプログラムに例えると、今まで数百行のソースコードを長いなと思っていたら、数十万行のソースコードがやって来たとかそんな感じ。最低限の大きさも指定してあって、この本に載っているものをそのまま使うこともできない。
 切実に、コピペが欲しくなる。
 ペラペラとページを進めても、部分部分の魔法陣の詳細な図解が続くだけ。それが終わったら、また無理だとしか言えない量の触媒が載っている。
 触媒とその説明だけで10ページ以上ある。最初の方をざっと見ると、石や宝石、海水や石灰といったものや、多種多様な魔法の品物なども必要だと書いてある。この調子で後半も載っているかと思うとますますハードルが上がる。
 さらに先には、必要な魔力。なんか大量の人が魔力を流している図が載っている。すり鉢状になっている舞台に、ぞろぞろとローブを来た人が万歳している図だ。例えるなら、相撲を観戦している人たちのような配置と言えるだろうか。相撲取りが土俵にいる代わりに、魔法陣の上にゴーレムがいる。指で何人いるかと数えたら100人以上いた。オレたちがどのくらいの魔力を持っているのか知らないが流石に100人分はないだろう。
 
 詠唱もこれまた長い。全5章からなっている。
 延々と続く詠唱の言葉に、覚えるは無理だと悟る。途中、書き込みがしてあったので何だろうと見ると『ここで水を飲むと声が嗄れない』と書かれていた。
 今更いらないよ、そんな情報。
 ちなみにゴーレムは魔導生物というらしい。他にも沢山の種類があるようだ。
 オレが先ほど読んだのは、ストーンゴーレム。同僚達は、アイスゴーレムをはじめ他のゴーレムにかかる資料を読んでいる。
 どの本も分厚い。一番薄いのはミズキが読んでいる本だろうか、よく見るとゴーレムの資料ではない。
 あれは確かウッドマウスとウッドバードと呼ばれる魔法で動く木製のおもちゃが載っているはずだ。少し前にチラ見したときに、おもちゃにも魔法で動くものがあるのだなと、少しだけ感心したのを思い出す。
 多分、一番薄いのを選んだのだろうが、ゴーレムの資料をあたっとくれよと思った。少しだけ。

「アイスゴーレムの資料、触媒に、トレショートカジャカ山脈の永久凍土の万年雪と1万年を過ごした氷って、最初の数行でギブアップっス」

 プレインが諦めの表情で資料を投げてよこす。魔法陣も複雑で、ページ構成も似たようなものだったので、早々にギブアップした。無理だ。

「無理なの?」

 クイックイとズボンを引っ張られて下を見るとノアが不安そうに聞いて来た。

「大丈夫さ、手ならいくらでもある。いくらでもあるんだ」

 ニコリと笑って返事をする。ここで不安な態度は出せない。
 だいたい、いつもの仕事と似たようなものだ。予測のつかない仕事なら慣れている。
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