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第六章 進化する豪邸
ぽかぽか
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飛竜と戦った日、ノアは夜遅くまで起きなかった。
クローヴィスはノアが目覚めるまで帰らないと言い張って、結局一日を屋敷で過ごした。
特にテストゥネル様は何も言ってこなかった。心配していないのか、それとも、こちらの様子が分からないのか。
翌日の早朝。
「ボクがしっかりしてればノアはこんなことにならなかったのに。ごめん」
クローヴィスは下を俯いたまま、ボソリと呟き帰還した。
「大丈夫なの。またねクローヴィス」
ノアは、全く気にしていないといった調子で返していた。
ただ、オレにはクローヴィスの気持ちがよくわかった。
クローヴィスの発した一言に、オレも不測の事態にたいして戦えるように備えなくてはならないと思った。この世界に来たとき、当初考えていた攻撃や防御の手段では足りない。
そんなオレの思いとは関係なく、急ピッチで温泉工事の仕上げは進む。オレ達のロープウエイもだ。
温泉宿オープンの前日、バルカンが領主に謁見する日、そしてロープウエイの完成の日を迎えた。
屋敷の3階にある大きな窓を乗り越えると、ロープウエイ乗り場にでる。シンプルな木製の屋根がついた乗り場だ。
「木の香りがいい感じっスね」
屋根を見上げてプレインが楽しげに言った。その言葉を聞いてピッキートッキーは、誇らしげだ。
そこからロープウエイのゴンドラに乗る。
足下に描いた魔法陣に魔力を流すと、ゴンドラが浮き、ゆっくりと進み出す。ほどなく向こう岸、温泉側の乗り場へとゴンドラは到着し、そこから少しだけ歩くと小さめの小屋に辿り着く。さらに小屋を通り抜け、その向こうが温泉だ。
つまりは屋敷からロープウエイを使えば温泉に直行できる。
「揺れず快適だと思います」
「みてみてクローヴィス、お城が見える」
「うごく地面だ」
クローヴィスとノアは大はしゃぎで、二人して窓に顔をくっつけるようにして外をみていた。子供の頃に電車から外をみていた自分を思い出す。
「大丈夫だって、ほらほら良い景色だよ」
「わかってるでち。お兄ちゃん達と皆で作ったでち。大丈夫なのはわかってるでち」
チッキーは震えてミズキにしがみついていた。
「兄ちゃんが変なこと言うから……」
「トッキーだって、一緒に言っただろ」
トッキーとピッキーには何か心当たりのあるようだ。いつも仲が良い兄妹だ。別に放って置いてもいいだろう。
ふと、クローヴィスと目が合った。
「そういやテストゥネル様は何かいってた?」
「ん? 怒られたよ」
クローヴィスは帰った後でテストゥネル様に怒られたらしい。なんでも、守るべき者がいるのに一人油断した其方が悪いと怒られたそうだ。無茶をしたとか、帰らないって理由で無いのが意外だった。案外テストゥネル様はスパルタなのかもしれない。
ちなみに、今日はすぐに温泉に入らない。さらに温泉を抜けて宿へと向かう。
そこにはバルカンが立派な服を着て待っていた。
あと、デッティリアさんもだ。二人して真っ青の顔だ。
これから領主に謁見する緊張からか、ひどくぎこちない笑顔だ。
「しっかりしろよ」
「あー。リーダは他人事だと思って気楽にいうぜ」
苦笑しつつ、頭をガリガリかきながらバルカンは答えた。
そんなやりとりをしていると迎えの馬車がやってきた。
バルカンとデッティリアさんは二人で馬車に向かう。なんだか良い雰囲気だ。
「リア充爆発しろ」
そんな時、囁くようなサムソンの声が背後から聞こえた。
オレもそれに習ってリア充爆発しろと応援する。
二人は、馬車の前で2・3言葉を交わして出かけていった。最後に、デッティリアさんがオレ達をちらっとみて馬車に乗り込んでいた。
とても緊張した表情だった。領主の謁見なんて座っていれば終わる。がんばってほしい。
「ついに温泉です。準備はいいですか?」
職場では見ることができない上機嫌さで、カガミがオレ達を見回して声を出す。
「はいはい。皆、準備できてるよ」
さて、待ちに待った温泉だ。
カガミが何かの歌を口ずさみながら軽やか足取りで先行する。
小屋の中で二手にわかれ温泉へとはいる。
見晴らしのいいとても大きな露天風呂だ。
大きな敷居の向こうで、ノアとミズキがはしゃいでいる声がする。
オレの後ろでは、クローヴィスとピッキーが泳いでいる音や、サムソンとトッキーが、ロープウエイ乗り場をどうするか話している声がする。
「感無量っスね」
プレインの言葉に、無言で頷き顎まで湯につかった。それからじっくりと温泉を堪能する。
ボンヤリと空を眺めて温泉を堪能する。
「つかったままだからだ」
「いいお湯ですから、仕方ないと思います」
堪能しすぎてのぼせてしまい。小屋の中で横になる羽目に陥ってしまった。
「大丈夫?」
ノアが心配そうに、オレを見下ろしている。
「あぁ、のぼせただけだ、すぐに良くなるよ」
「そっか」
「今回もノアには助けられたね。ありがとう」
「一生懸命だったの」
ノアはいつも必死だ。皆のことを考えている。だからデッティリアさんも無事だったし、オレも無事だ。
「そうだね。ノアが一生懸命に魔法を練習していたから飛竜を倒せた」
おかげで魔物よけも作れた。
魔物よけ。飛竜を倒した日、屋敷で調べると威圧の魔導具についての記述をすぐに見つけることができた。
それは魔物の骨に、魔法陣を描いてつくる魔導具だった。
頭蓋骨が一番有効らしい。材料にした魔物が威嚇しているような存在感を作り出す魔導具だそうだ。
強力な魔物を材料に作れば、低位な魔物は、その作り出される存在感だけで逃げ出すらしい。
翌日には作りあげることができた。これはバルカンにあげた。
これで温泉宿は大丈夫なはずだ。
「あのね。クローヴィスはもっと強くなるんだって。テストゥネル様やジタリアさんに稽古つけてもらうって言ってたの」
「そうか」
クローヴィスも頑張るっていうなら、おれも負けていられない。
「わたしもがんばるね」
笑顔で頷く。
「さて、そろそろ落ち着いたし帰ろっかな」
グッと反動をつけて、ことさら元気よく体を起こす。
「うん。温泉ポカポカして気持ちいいね」
「あぁ。これからは、たくさん温泉に入れる。毎日がポカポカだ」
オレの言葉をきいてノアは思い切りの笑顔で頷いた。
クローヴィスはノアが目覚めるまで帰らないと言い張って、結局一日を屋敷で過ごした。
特にテストゥネル様は何も言ってこなかった。心配していないのか、それとも、こちらの様子が分からないのか。
翌日の早朝。
「ボクがしっかりしてればノアはこんなことにならなかったのに。ごめん」
クローヴィスは下を俯いたまま、ボソリと呟き帰還した。
「大丈夫なの。またねクローヴィス」
ノアは、全く気にしていないといった調子で返していた。
ただ、オレにはクローヴィスの気持ちがよくわかった。
クローヴィスの発した一言に、オレも不測の事態にたいして戦えるように備えなくてはならないと思った。この世界に来たとき、当初考えていた攻撃や防御の手段では足りない。
そんなオレの思いとは関係なく、急ピッチで温泉工事の仕上げは進む。オレ達のロープウエイもだ。
温泉宿オープンの前日、バルカンが領主に謁見する日、そしてロープウエイの完成の日を迎えた。
屋敷の3階にある大きな窓を乗り越えると、ロープウエイ乗り場にでる。シンプルな木製の屋根がついた乗り場だ。
「木の香りがいい感じっスね」
屋根を見上げてプレインが楽しげに言った。その言葉を聞いてピッキートッキーは、誇らしげだ。
そこからロープウエイのゴンドラに乗る。
足下に描いた魔法陣に魔力を流すと、ゴンドラが浮き、ゆっくりと進み出す。ほどなく向こう岸、温泉側の乗り場へとゴンドラは到着し、そこから少しだけ歩くと小さめの小屋に辿り着く。さらに小屋を通り抜け、その向こうが温泉だ。
つまりは屋敷からロープウエイを使えば温泉に直行できる。
「揺れず快適だと思います」
「みてみてクローヴィス、お城が見える」
「うごく地面だ」
クローヴィスとノアは大はしゃぎで、二人して窓に顔をくっつけるようにして外をみていた。子供の頃に電車から外をみていた自分を思い出す。
「大丈夫だって、ほらほら良い景色だよ」
「わかってるでち。お兄ちゃん達と皆で作ったでち。大丈夫なのはわかってるでち」
チッキーは震えてミズキにしがみついていた。
「兄ちゃんが変なこと言うから……」
「トッキーだって、一緒に言っただろ」
トッキーとピッキーには何か心当たりのあるようだ。いつも仲が良い兄妹だ。別に放って置いてもいいだろう。
ふと、クローヴィスと目が合った。
「そういやテストゥネル様は何かいってた?」
「ん? 怒られたよ」
クローヴィスは帰った後でテストゥネル様に怒られたらしい。なんでも、守るべき者がいるのに一人油断した其方が悪いと怒られたそうだ。無茶をしたとか、帰らないって理由で無いのが意外だった。案外テストゥネル様はスパルタなのかもしれない。
ちなみに、今日はすぐに温泉に入らない。さらに温泉を抜けて宿へと向かう。
そこにはバルカンが立派な服を着て待っていた。
あと、デッティリアさんもだ。二人して真っ青の顔だ。
これから領主に謁見する緊張からか、ひどくぎこちない笑顔だ。
「しっかりしろよ」
「あー。リーダは他人事だと思って気楽にいうぜ」
苦笑しつつ、頭をガリガリかきながらバルカンは答えた。
そんなやりとりをしていると迎えの馬車がやってきた。
バルカンとデッティリアさんは二人で馬車に向かう。なんだか良い雰囲気だ。
「リア充爆発しろ」
そんな時、囁くようなサムソンの声が背後から聞こえた。
オレもそれに習ってリア充爆発しろと応援する。
二人は、馬車の前で2・3言葉を交わして出かけていった。最後に、デッティリアさんがオレ達をちらっとみて馬車に乗り込んでいた。
とても緊張した表情だった。領主の謁見なんて座っていれば終わる。がんばってほしい。
「ついに温泉です。準備はいいですか?」
職場では見ることができない上機嫌さで、カガミがオレ達を見回して声を出す。
「はいはい。皆、準備できてるよ」
さて、待ちに待った温泉だ。
カガミが何かの歌を口ずさみながら軽やか足取りで先行する。
小屋の中で二手にわかれ温泉へとはいる。
見晴らしのいいとても大きな露天風呂だ。
大きな敷居の向こうで、ノアとミズキがはしゃいでいる声がする。
オレの後ろでは、クローヴィスとピッキーが泳いでいる音や、サムソンとトッキーが、ロープウエイ乗り場をどうするか話している声がする。
「感無量っスね」
プレインの言葉に、無言で頷き顎まで湯につかった。それからじっくりと温泉を堪能する。
ボンヤリと空を眺めて温泉を堪能する。
「つかったままだからだ」
「いいお湯ですから、仕方ないと思います」
堪能しすぎてのぼせてしまい。小屋の中で横になる羽目に陥ってしまった。
「大丈夫?」
ノアが心配そうに、オレを見下ろしている。
「あぁ、のぼせただけだ、すぐに良くなるよ」
「そっか」
「今回もノアには助けられたね。ありがとう」
「一生懸命だったの」
ノアはいつも必死だ。皆のことを考えている。だからデッティリアさんも無事だったし、オレも無事だ。
「そうだね。ノアが一生懸命に魔法を練習していたから飛竜を倒せた」
おかげで魔物よけも作れた。
魔物よけ。飛竜を倒した日、屋敷で調べると威圧の魔導具についての記述をすぐに見つけることができた。
それは魔物の骨に、魔法陣を描いてつくる魔導具だった。
頭蓋骨が一番有効らしい。材料にした魔物が威嚇しているような存在感を作り出す魔導具だそうだ。
強力な魔物を材料に作れば、低位な魔物は、その作り出される存在感だけで逃げ出すらしい。
翌日には作りあげることができた。これはバルカンにあげた。
これで温泉宿は大丈夫なはずだ。
「あのね。クローヴィスはもっと強くなるんだって。テストゥネル様やジタリアさんに稽古つけてもらうって言ってたの」
「そうか」
クローヴィスも頑張るっていうなら、おれも負けていられない。
「わたしもがんばるね」
笑顔で頷く。
「さて、そろそろ落ち着いたし帰ろっかな」
グッと反動をつけて、ことさら元気よく体を起こす。
「うん。温泉ポカポカして気持ちいいね」
「あぁ。これからは、たくさん温泉に入れる。毎日がポカポカだ」
オレの言葉をきいてノアは思い切りの笑顔で頷いた。
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