1 / 4
前編
しおりを挟む「ロザリア、お前のような不出来な女を娶る趣味はない!さっさと婚約破棄してやるから私の前から消えるのだ!」
今日は国王陛下の生誕パーティーです。
当然、王太子であるルイーズ様の婚約者であるわたくしも参加しています。そうでなくとも父はこの国の筆頭公爵ですからね、こういった社交場にはよく借り出されるのですけど。でも陛下の生誕となれば国中の貴族たちが参加する大切な行事ですから、わたくしも令嬢としてルイーズ様や陛下のお顔に泥を塗らないよう一生懸命振る舞わないとです。
流石にこの状況は想定しておりませんでしたけど。
「えっと……ルイーズ殿下にお尋ねします」
「ならぬっ!黙れ!」
え、質問もダメなのですか?
んー……これはこれは新しいパターンですね。
チラッと見ればルイーズ様の側にはかわいらしいお嬢さんがいらっしゃいました。あれは確か、エリー=チューリッヒ男爵令嬢ですね。チューリッヒ男爵が外に作った愛人の子、それを最近になって迎え入れたと噂に聞いておりました。
なるほど、確かに殿下のタイプですわね。
ですかどうでしょう、フリフリ総レースのドレスなど社交界にデビューしたての子供じゃあるまいし、エリーさんの年を考えれば子供っぽいのではないでしょうか。うーん……幼顔だからアリですかね?
「おいっ!聞いてるのか、ロザリアっ!」
「え?あ、ああ。はいもちろん」
聞いてませんでした。ついうっかり。
「私はこのエリーと生涯を共にする!真実の愛が私たちを結び付けたのだ!」
「まぁルイーズさまぁ」
エリーさんたらメロメロな顔をしてらっしゃいますね。それもそうでしょう、ルイーズ様のお顔立ちは国内でもかなり人気のようですし。彼女からして見れば男爵令嬢ごときの自分が王太子様に見染められたのですから大出世この上ないですもの。
「エリーは元平民だが貴族にはない強かさがある」
「ふふっ、照れてしまいますわぁ」
「それに比べてロザリア、お前は根っからの令嬢気質で命令してばかり。その傲慢さにうんざりしていた!」
気質、というかわたくしは根っからの公爵令嬢です。
それに上に立つ者として下の者に指示を出すのは当然ではないでしょうか。
んー、としばらく考え込んでいるわたくしの態度が気に入らないのか、エリーさんはフンと鼻を鳴らします。
「オルテイル公爵令嬢様、潔く身を引かれてはいかがです?」
「あら、わたくしをご存知ですか?」
「ええもちろん、ロザリア=オルテイル公爵令嬢といえばこの国で知らない人なんていないもの」
まぁまぁ面と向かって褒められると恥ずかしいです。自分で言うのもなんですが、わたくしちょっとした有名人なんですよ。王太子の婚約者というのもありますけどね。
「ルイーズ様は私を愛してくださったの。身分なんて関係ない、本物の愛で私たちは結ばれたのよ」
「本物の愛、ですか?」
「そうよ」
「本物か偽物かなんて貴女が判別できるとでも?」
「なっ!なんですって!」
あら、つい本音が。パッと口を押さえてみましたが時すでに遅しです。エリーさん、ゆでだこのようにお顔が真っ赤、ふふっ、ちょっと面白いです。
「ロザリアっ!エリーを馬鹿にするな!」
「ルイーズさまっ!」
「確かにエリーは夢見がちで学校の成績も良くない」
「る、ルイーズさまっ?!」
「男爵家に引き取られて1ヶ月経つのにまだ基礎的なマナーも言葉遣いもなっていないが!」
「あの……そ、その」
「だが!それを帳消しにするほど可愛らしい!」
それって褒めてるのでしょうか。ほら、エリーさんもちょっと困惑してますよ?ルイーズ様は少々人の気持ちに鈍感なところがありますから。
「例え金目当てで私に近づいて来た性悪女だとしても良いのだ!」
「る、ルイーズさまっ!私はそんなこと、」
「可愛いから許す!」
堂々と宣言するルイーズ様。
なるほど、エリーさんが性悪だと分かってはいるんですね安心しました。当の本人はまさかルイーズ様からそんなこと言われると思っていなかったのか、あたふたとしながら周りの目を気にしています。
でもご安心を。すでに周りにいる皆様は貴女のことを「あぁ……顔だけで選ばれたのね」と、同情の視線を送っていますから。
「だが私だって鬼じゃない!ロザリア、今までの非礼を全て謝れ。どうしてもと言うなら今ここで泣いて私に縋り付くんだなっ!」
まぁ、なんて悪役みたいなセリフでしょう。
まるで安っぽいミュージカルを見に来ているみたいです。ほらご覧になって、隣にいるエリーさんも若干恥ずかしそうです。
でもねエリーさん、こんなのはここにいる全員みんな慣れっこなんですよ。
135
あなたにおすすめの小説
私と結婚したいなら、側室を迎えて下さい!
Kouei
恋愛
ルキシロン王国 アルディアス・エルサトーレ・ルキシロン王太子とメリンダ・シュプリーティス公爵令嬢との成婚式まで一か月足らずとなった。
そんな時、メリンダが原因不明の高熱で昏睡状態に陥る。
病状が落ち着き目を覚ましたメリンダは、婚約者であるアルディアスを全身で拒んだ。
そして結婚に関して、ある条件を出した。
『第一に私たちは白い結婚である事、第二に側室を迎える事』
愛し合っていたはずなのに、なぜそんな条件を言い出したのか分からないアルディアスは
ただただ戸惑うばかり。
二人は無事、成婚式を迎える事ができるのだろうか…?
※性描写はありませんが、それを思わせる表現があります。
苦手な方はご注意下さい。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!
白雪なこ
恋愛
学園の卒業と成人を祝うパーティ会場に響く、婚約破棄宣言。
婚約破棄された貴族令嬢は現れないが、代わりにパーティの主催者が、婚約破棄を宣言した貴族令息とその恋人という当事者の2名と話をし出した。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
婚約破棄されましたが気にしません
翔王(とわ)
恋愛
夜会に参加していたらいきなり婚約者のクリフ王太子殿下から婚約破棄を宣言される。
「メロディ、貴様とは婚約破棄をする!!!義妹のミルカをいつも虐げてるらしいじゃないか、そんな事性悪な貴様とは婚約破棄だ!!」
「ミルカを次の婚約者とする!!」
突然のことで反論できず、失意のまま帰宅する。
帰宅すると父に呼ばれ、「婚約破棄されたお前を置いておけないから修道院に行け」と言われ、何もかもが嫌になったメロディは父と義母の前で転移魔法で逃亡した。
魔法を使えることを知らなかった父達は慌てるが、どこ行ったかも分からずじまいだった。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる