【完結】狼王子は婚約破棄をしたいだけ。

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前編

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「ロザリア、お前のような不出来な女を娶る趣味はない!さっさと婚約破棄してやるから私の前から消えるのだ!」

今日は国王陛下の生誕パーティーです。
当然、王太子であるルイーズ様の婚約者であるわたくしも参加しています。そうでなくとも父はこの国の筆頭公爵ですからね、こういった社交場にはよく借り出されるのですけど。でも陛下の生誕となれば国中の貴族たちが参加する大切な行事ですから、わたくしも令嬢としてルイーズ様や陛下のお顔に泥を塗らないよう一生懸命振る舞わないとです。
流石にこの状況は想定しておりませんでしたけど。

「えっと……ルイーズ殿下にお尋ねします」
「ならぬっ!黙れ!」

え、質問もダメなのですか?
んー……これはこれは新しいパターンですね。
チラッと見ればルイーズ様の側にはかわいらしいお嬢さんがいらっしゃいました。あれは確か、エリー=チューリッヒ男爵令嬢ですね。チューリッヒ男爵が外に作った愛人の子、それを最近になって迎え入れたと噂に聞いておりました。
なるほど、確かに殿下のタイプですわね。
ですかどうでしょう、フリフリ総レースのドレスなど社交界にデビューしたての子供じゃあるまいし、エリーさんの年を考えれば子供っぽいのではないでしょうか。うーん……幼顔だからアリですかね?

「おいっ!聞いてるのか、ロザリアっ!」
「え?あ、ああ。はいもちろん」

聞いてませんでした。ついうっかり。

「私はこのエリーと生涯を共にする!真実の愛が私たちを結び付けたのだ!」
「まぁルイーズさまぁ」

エリーさんたらメロメロな顔をしてらっしゃいますね。それもそうでしょう、ルイーズ様のお顔立ちは国内でもかなり人気のようですし。彼女からして見れば男爵令嬢ごときの自分が王太子様に見染められたのですから大出世この上ないですもの。

「エリーは元平民だが貴族にはない強かさがある」
「ふふっ、照れてしまいますわぁ」
「それに比べてロザリア、お前は根っからの令嬢気質で命令してばかり。その傲慢さにうんざりしていた!」

気質、というかわたくしは根っからの公爵令嬢です。
それに上に立つ者として下の者に指示を出すのは当然ではないでしょうか。
んー、としばらく考え込んでいるわたくしの態度が気に入らないのか、エリーさんはフンと鼻を鳴らします。

「オルテイル公爵令嬢様、潔く身を引かれてはいかがです?」
「あら、わたくしをご存知ですか?」
「ええもちろん、ロザリア=オルテイル公爵令嬢といえばこの国で知らない人なんていないもの」

まぁまぁ面と向かって褒められると恥ずかしいです。自分で言うのもなんですが、わたくしちょっとした有名人なんですよ。王太子の婚約者というのもありますけどね。

「ルイーズ様は私を愛してくださったの。身分なんて関係ない、本物の愛で私たちは結ばれたのよ」
「本物の愛、ですか?」
「そうよ」
「本物か偽物かなんて貴女が判別できるとでも?」
「なっ!なんですって!」

あら、つい本音が。パッと口を押さえてみましたが時すでに遅しです。エリーさん、ゆでだこのようにお顔が真っ赤、ふふっ、ちょっと面白いです。

「ロザリアっ!エリーを馬鹿にするな!」
「ルイーズさまっ!」
「確かにエリーは夢見がちで学校の成績も良くない」
「る、ルイーズさまっ?!」
「男爵家に引き取られて1ヶ月経つのにまだ基礎的なマナーも言葉遣いもなっていないが!」
「あの……そ、その」
「だが!それを帳消しにするほど可愛らしい!」

それって褒めてるのでしょうか。ほら、エリーさんもちょっと困惑してますよ?ルイーズ様は少々人の気持ちに鈍感なところがありますから。

「例え金目当てで私に近づいて来た性悪女だとしても良いのだ!」
「る、ルイーズさまっ!私はそんなこと、」
「可愛いから許す!」

堂々と宣言するルイーズ様。
なるほど、エリーさんが性悪だと分かってはいるんですね安心しました。当の本人はまさかルイーズ様からそんなこと言われると思っていなかったのか、あたふたとしながら周りの目を気にしています。

でもご安心を。すでに周りにいる皆様は貴女のことを「あぁ……顔だけで選ばれたのね」と、同情の視線を送っていますから。

「だが私だって鬼じゃない!ロザリア、今までの非礼を全て謝れ。どうしてもと言うなら今ここで泣いて私に縋り付くんだなっ!」

まぁ、なんて悪役みたいなセリフでしょう。
まるで安っぽいミュージカルを見に来ているみたいです。ほらご覧になって、隣にいるエリーさんも若干恥ずかしそうです。

でもねエリーさん、こんなのはここにいる全員みんな慣れっこなんですよ。
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