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おまけ 王妃殿下の幸せな日常
しおりを挟む「おかあしゃまーーー!!」
後ろから聞こえて来る声に振り返ると、小さくて愛らしい男の子と女の子がこちらに駆け寄って来ます。
「まぁ、ヨハンとエルザ。何故ここに」
この子たちはわたくしの愛おしい子供たちです。
上の男の子が7つ、下の女の子が3つになります。
「おかあしゃまに会いに来たのぉ!」
「えっと、その、エルザがかあさまに会いたいって。だからぼくっ、仕方なくついてきたんです」
ここは王宮内の執務棟、例え国王夫妻の子であり王太子と王女と言う立場でもそう簡単にここに来てはならないのに。
全く、仕方ない子たちですね。
ニコッと微笑み2人の頭を優しく撫でます。
「ここまではどうやって来たのですか?」
「えっと、とうさまが」
正直に答えるヨハン、薄々分かっていましたがしょうがない人ですねほんと。
わたくしの後ろに控える宰相と護衛たちが顔を見合わせている。まぁそうなりますよね、だって国王陛下が王宮内のルールを知らないはずがありませんから。
「……2人とも、ここは遊びに来てはならない場所だと知っていますね?」
「っ……はい、」
「エルザ、あなたにもちゃんとわかるように教えてあげましたね?」
「っでもね、あの、おかあしゃまにあいたくて!」
「だからお母様との約束を破ったのですか?」
「っ!!!」
2人はことの重大さに気付いたらしく小さく震えています。寂しくなって母に会いに来た、それ自体は悪くありません。わたくしだって嬉しいですよ?ですが、ここは国の運命を握る重要な場所、遊ぶ場所ではないと口酸っぱく教えてあげたことですから。
「あの、かあさまっごめんなさい!」
「ごめんなしゃい……」
「分かってくれれば良いんですよ」
泣きそうな2人を優しく抱き締め、そして後ろに控える宰相へと顔を向けます。
「今回は見逃して下さいますか?」
「……王妃殿下のお願いとあらば」
「ふふっ、ありがとう。さぁ2人とも。お兄さん達にもちゃんと御免なさいをしましょうね」
「「ごめんなさい」」
2人は素直に頭を下げました。うんうん、素直でいい子に育ってくれました。これも付きっきりで子育てをしてくれるルイーズ様のおかげですね。
……そういえば最近執務ばかりで会っていませんでしたね。きっとヘソを曲げてわざと2人をこちらに寄越したのかも知れません。これは後でフォローしておかねばです。
*****
ルイーズ様と結婚し、王妃の座に就いてすぐに国政を任されたあの日。ルイーズ様に仕えていた宰相や使用人たちはわたくしに向けて深々と頭を下げました。
国王であるルイーズ様に背を向けるようにして。
彼は不出来な王太子でした。頭も良くないし口も良くない、自慢できるのは整ったそのお顔だけです。流石に前国王であるお義父様もそれだけで息子を廃摘する訳にもいかず頭を悩ませていました。
そして一つの方法を思いつきます。
優秀な妻を娶らせ、代わりに国を治めさせようと。
なかなかぶっ飛んだ作戦ですよね?でもそんな案が通ってしまうほど国は困っていたのです。これで王家の血は絶やさず国も守れる、わたくしとルイーズ様の結婚はまさに作戦通りという訳です。
「ルイーズ様」
本日の仕事も終わり、家族が待つ屋敷へと戻れば、寝かしつけを終えた夫は不貞腐れるようにベッドに潜っていました。
彼は、結婚してからますます塞ぎ込んでいます。
当たり前ですよね、今までは誰もが彼の命令に従ってたのに急に突き放されてしまうんですから。
「寝てらっしゃいます?」
「………ようやく帰って来たか」
「ええ。不在の間、ヨハンとエルザの面倒を見てくださってありがとうございます」
「はっ!私にはそれしか出来んからな」
「あらあら、意地悪言わないで下さいませ」
これはこれは、いつにも増して拗ねてらっしゃる。
「国王のくせに子守しか任されん」
「立派なお仕事ですわ」
「お前は嘘つきだ」
まぁ、ルイーズ様がそれを仰るなんて。
わまくしはたまらずクスクスと笑ってしまいました。
「何がおかしいっ!」
「ですが少し……昔を思い出したので」
「昔だと?」
「ええ。貴方が沢山の女性に求婚し、あまつさえわたくしを捨てようとなさった頃ですわ」
「……忘れたなそんなこと」
「ふふっ」
ほら、やっぱりルイーズ様は嘘つきです。
ですがまぁ良いでしょう。国王ではあるものの、今のルイーズ様は何も出来ないただの男ですから。それでも、わたくしや子供たちにとっては大切な人です。国中の人間が彼を不要だと罵ったとしても、わたくしたちにとっては唯一無二の存在なのです。
そっとベッドに上がり不貞腐れている彼を優しく抱き締めました。
「愛してますわ、ルイーズ様」
「……私は嫌いだ」
「ええ、それでも愛しています。だからずっと、わたくしたちの側に居てくださいね」
返事は何も返ってこない。
それでも、背中におずおずと回された腕にわたくしはそっと笑みをこぼしました。
*****
これにて完結です。
ご愛読頂き誠にありがとうございました。
2021.08.07
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