【完結】人形と呼ばれる私が隣国の貴方に溺愛される訳がない

文字の大きさ
17 / 39

17 シャリオン視点


※ グランディーノ帝国皇帝シャリオン目線です。







「何がそんなに楽しいのですか?」

兄上の屋敷を出た後、馬車の中でノーマンに言われた一言。ありゃ、無意識のうちに笑っちゃってたか。
数分前まで話していた彼女を思い出すと、ついね。

「いやー、不器用な兄夫婦を持つと骨が折れるね!」

「不器用?……誰のことですか」

「お前のお姉ちゃんだよ。相手の事なんか関係なく自分の幸せを優先しちゃえば良いのにね」

不器用で美しい義姉の事を思い浮かべる。


ソフィア=ティムレットの第一印象は可哀想な女。

彼女がモニータ王国の雑用係だという事はひと目見た瞬間に分かった。毎回のごとく我が国に来てはテキパキと公務を進めていく彼女を、最初は宰相か外交担当で派遣された使用人なのかと思ったくらい。

だが話に聞けば彼女はモニータの王太子ジーク氏の婚約者だと言うじゃないか。

ジーク=モニータと言えば顔だけの能無しだと話には聞いていたが、そんな奴の婚約者がこれ程までの切れ者だとは……向こうの宰相はまぁまぁ頭が良いらしい。


さてと、こっちはこっちで仕事しちゃうかー。

「で?向こうに行ってる密偵からの報告は?」

何気なくそう言えばノーマンはまた懐から書類を取り出しそれに軽く目を通す。実はこっそりモニータ王国に密偵を送ってたんだよねー。
やっぱり僕って出来る皇帝すぎる。

「王宮内はパニック状態のようですね。姉さんが抜けた後の国政は上手く行かず、ジーク氏も政治はど素人なので戦力外。ですが国王は重い腰を上げず今まで通り下の者に任せっきりの状態だそうです」

「ここまで来てもまだ動かないか。……あのじーさんももう潮時だなぁ」

「それと次期王妃の座に着いたフレイア=ティムレットですが、現在教養レッスンに追われる日々らしくその出来の悪さから王宮内での評判は最悪です」

「ぷっ!」

思わず吹き出しちゃった。
おいおいどんだけ嫌われてんだよコイツら。

「いかが致しますか」

「そのまま監視続けてて。あともうちょっとだから」

「承知致しました」

兄上にも言ってなかったけど、僕は兼ねてからモニータ王国に目をつけていた。
歴史が古いだけの国。
国民を顧みない踏ん反り返っただけの王家。
攻め入るには絶好のカモ。

だって密偵を送り込んでも気付かないんだもん。
まぁ王宮はそれどころじゃないんだろうね。

僕のシナリオじゃモニータなんて国は一瞬で崩壊する。
唯一危険視するべきはソフィアだけだった。

それがまさか……こうも上手く行ってしまうんだから笑いは止まらないよね。

「あー、自分の天才さが恐ろしいよ」

「?」

「まぁ最初に彼女に目をつけたのは兄上だけどねぇ」




確かあれはソフィアが初めてグランディーノに来国した時だったかな。滅多に社交界に現れない兄上が僕の護衛として渋々ついて来た時、いつもの仏頂面のまま言われたんだっけ。


『シャリオン、彼女はどういった人なんだ』

舞踏会の最中、華々しい令嬢や子息達から離れた一角に1人佇む女性。控えめなドレスに小ぶりの装飾を見に纏った彼女を兄上は指差す。

『んー?ああ、あの壁の花?モニータ王国からきた王太子代理だよ。確か……ティムレット嬢だったかな?』

『ティムレット嬢……』

『王太子の婚約者だそうだよ。……何、兄上が女性を気にするなんて初めてだけどどうしたの?』

『……いや、何でもない』


兄上のあんな顔は初めて見た。
彼女から目を離さずただ見つめる姿は、まるで恋をした少女のようだった。対する彼女は下を俯き冷たい表情のまま時が過ぎるのを待っているみたい。

普段戦場にしかいない兄上が何故ソフィアに興味を持ったのかは知らない。
僕が知らないだけで2人は既に出会っていたのかも。
でもそんな事は結構僕にはどうでも良くて……


単純に興味が湧いたんだ。


血塗れの番犬と呼ばれ敵からも味方からも恐れられ、誰も寄り付かなくなってしまった兄上。

有能であっても誰からも愛されず、婚約者に都合よく使われるソフィア=ティムレット。


この2人が出逢うべくして出逢った時、そしたらどうなっちゃうんだろうね。






「……あーあ、僕も早く運命と呼べるような可愛い女性と結婚したいなぁー」

「……今まで断っていた縁談、今からでも間に合います」

「そうじゃないよ、ばぁーか!」
感想 196

あなたにおすすめの小説

謹んで、婚約破棄をお受けいたします。

パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。

「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの
恋愛
「失礼いたしますわ」――断罪の広場で令嬢が告げたのは、たった一言の沈黙だった。 侯爵令嬢レオノーラ=ヴァン=エーデルハイトは、“涙の聖女”によって悪役とされ、王太子に婚約を破棄され、すべてを失った。だが彼女は泣かない。反論しない。赦しも求めない。ただ静かに、矛盾なき言葉と香りの力で、歪められた真実と制度の綻びに向き合っていく。 「誰にも属さず、誰も裁かず、それでもわたくしは、生きてまいりますわ」 これは、断罪劇という筋書きを拒んだ“悪役令嬢”が、沈黙と香りで“未来”という舞台を歩んだ、静かなる反抗と再生の物語。

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

シスコン婚約者とはおさらばです。

火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢シャロンには、悩みがあった。 それは婚約者であり、ホロウス侯爵子息のアランが極度のシスコンで、妹のエミリーを溺愛していること。 二人きりの時も、彼女の話ばかり。 さらにエミリーと婚約したクラレンスを敵視しているようだった。 そして夜会の時に事件が起こる。 「よくもエミリーの心を傷付けたな……お前との婚約は破棄させてもらう!」 ついにアランから婚約破棄を言い渡されてしまう。 しかも良からぬ噂まで広まり、落ち込むシャロン。 それでも何とか立ち直ろうとしていると、意外な人物がシャロンの前に現れた。 ※ツギクル様、なろう様でも連載しています。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。