【完結】人形と呼ばれる私が隣国の貴方に溺愛される訳がない

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26 ジーク視点


フレイアが会場を出てから数時間が経った。

「遅い……遅すぎるっ」

フレイアは式が始まる前にソフィアに会いに行くと言い、花嫁がいるであろう別棟へと駆けていった。途中護衛が居る事は想定済みだった為少しばかりの金貨を握らせ見送ったのだが……

やはり僕も一緒に行くべきだったか。

「ジークよ、フレイア嬢はどこに行ったのだ?」

流石にフレイアの姿がない事に気付き父上が聞く。いくら父上でもこの計画を知ったらただじゃ済まされない。

これから結婚式を挙げようとする花嫁を側室にしようとしているなど、決してバレてはいけない計画だった。

計画はこうだ。
フレイアに説得されたソフィアはでこの結婚を辞める。理由は僕への想いを諦められなかった。当然帝国サイドは怒り狂うかも知れない……だが、そんな時の為の父上なのだ。

グランディーノ帝国は我が国から独立した新国。
歴史も、立場もモニータ王国の方が上だ。
それに相手は皇帝の実兄だが皇位を継げなかった出来損ないの公爵風情、王太子である僕の方が立場は上だろう。
現皇帝だって僕より若いみたいだし、ちょっと脅せばコロッとこちらの思い通りになる。

王国に連れ帰ってしまえば後はこっちの問題。
ソフィアの処遇など好きに扱える。

ソフィアさえ連れてきてしまえば………



式がもうそろそろ始まってしまう。
ここはグランディーノ帝国で最も格式の高い教会。
後ろの扉が開きパイプオルガンの演奏と共に花嫁と新郎が入場してくるのがセオリー。
参列者達の視線は美しいドレス姿の花嫁に集まるが……

今日そのバージンロードを歩く花嫁は居ない。

重厚な音が教会内に響く。
演奏が始まった!
大丈夫、きっと呆然とした公爵だけが突っ立っているに違いない。何故なら僕たちの作戦は完璧だから。

次第に盛り上がるオルガンの音と共に、ゆっくりと扉が開き会場の誰もがそこに注目する。

そう、そこに花嫁がいるはずは………




サァと風が通り抜け、花の香りが吹き込んでくる。



「そんな……」


そこには白い花を見に纏う純白の花嫁が微笑んでいた。


嘘だ、何でソフィアがここに居る!
今頃フレイアの指示を受け何処かで身を隠している予定なのに!

「素敵……あれが噂のソフィア様なのね!」

「美しすぎる……まさしく妖精の様なお方だわ」

参列する女性達からは羨望の眼差しを、男達はその美しい花嫁に言葉を失い見惚れていた。

ソフィアの顔が美しいのは当たり前だが、何よりもあのドレスがそれを際立たせていた。腰元には添えられた白い薔薇たちがその清廉さを高めている。
ただ……僕の知っている彼女とは少し違う。


僕の前ではあんな幸せそうに笑った事はない。


傍らの新郎、グランディーノ公爵にエスコートされる姿から嫌と言うほど幸せな雰囲気は伝わる。
時折視線を合わせ恥ずかしそうに笑うソフィアを見て、僕は無意識のうちに唇をきつく噛んだ。

「くそっ…!なんで…」

「失礼。モニータ王国の王太子、ジーク=モニータ様でいらっしゃいますか」

突然声を掛けられ振り返れば、帝国の者だろうか……やたらと背の高い男が声を掛けてきた。

「なんだ、式の最中だぞ」

「申し訳御座いません。お連れ様……フレイア=ティムレット嬢の件でお声がけ致しました」

「っ、フレイアか!彼女は今どこに?!」

少し大きな声で反応した為周りの参列者の視線がこちらに集まる。
フレイア……そうだ、ソフィアがこの場に居るなら彼女はどこにいるんだ!

父上は何が起こっているか全く分かっていない様でオロオロと怒る僕を見ている。

「……ご案内致します」

そう言ってその男は僕の言葉もろくに聞かずスタスタと教会内から出て行った。

周りの参列者たちにぶつかりながら人混みを掻き分け必死に男の跡を追う。悪態をつかれようが関係ない、今はフレイアの安否さえ分かれば!






男は地下に潜り薄暗い階段をゆっくりと降りていく。
ここは教会とは別の……多分帝国が管理している施設だと思う。

「フレイアは無事なんだろうな?!おいっ!」

「……」

男の反応はない。
クソッ、たかが使用人の分際で僕を無視するなんて!

どんどん地下に潜っていけばぼんやり明るくなっていく。

階段を降り切り、その正面には冷たく太い鉄格子に囲われた部屋が一つだけ存在していた。


「やぁ、王子様!待ちくたびれたよ!」


「あ………あ、……」


そこには満面の笑みを浮かべる若い男と、
牢屋の中で酷く怯え汚れきったフレイアの姿があった。
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