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27 フレイア視点
連れて来られたのは暗くじめじめした地下牢だった。
ガチャンと無機質な音が響き渡る。
目の前には太くて冷たい鉄の格子、床は汚いが今の私にはそんな事気にしている余裕はなかった。
だって私の目の前には……
「やぁ、こうしてちゃんと話すのは初めましてだね」
ニコニコと笑みを浮かべ牢の中にいる私を見下ろすこの人は、多分この国に頂点であり一番偉い人だと思う。
何故だろう、この人を目の前にすると……声が出ない。
「僕はシャリオン=グランディーノ。君の元お姉さんにとっては義弟になるね」
「っ……」
「あらら、君の国では自己紹介の仕方を教わらないのかな。……まぁ良いけど」
どこかつまんなさそうに言う彼、シャリオン皇帝陛下はどう見ても私と同い年かもしかしたら年下かも知れない雰囲気だった。
ギュッとドレスの裾を掴む。
「わ、私は……」
「ん?」
「どうなるのでしょうか……」
ぼんやりとした灯りが皇帝陛下の顔を照らす。
私はお姉様に王国に戻ってきて欲しかっただけなのに。
「んーそうだね、とりあえずはこの国での終身刑が妥当じゃないかな?」
「終身、?」
「ただの貴族だったら命を奪う事も出来るが、今の君は仮にも次期王妃を名乗ってここに来ているからね。罪が罪なだけに牢からは一生出られないだろう」
「そんなっ!罪って……私が何をしたと言うのですか!」
冗談じゃない!
一生牢屋の中で過ごすの?
お父様にも、お母様にも、そしてジーク様にも会えないままこんな所で死んでしまうの?!
格子を両手で掴みながら叫ぶ。
なのに、皇帝陛下はただ冷たい視線で見下ろす。
「分からないのかい、自分の罪が」
「私はっ……お姉様に、会いに来て」
「そもそも君とソフィアはもう姉妹ではない。護衛を買収し勝手に侵入、そして彼女に傷をつけた」
「っ!」
「あとはあのドレス、君が破いたドレスは我が国で最も有名なデザイナーが彼女の為だけに作ったオーダーメイドドレスだ。その価値で言ったら……とてもじゃないが今のモニータ王国に肩代わり出来るかどうか」
だって……だって……!
頭の中では沢山の弁解の言葉が巡る。でも私がやってしまった事には変わりはない。
皇帝陛下に見えないように唇をきつく噛む。
どうしよう、どうしたら!
「どんな事でもします!何だってやりますから……だから私を許して下さいっ!」
目一杯に涙を浮かべ縋るように皇帝陛下を見上げる。ちゃんと素直に謝ればきっとこの人だって許してくれるわ。
しばらく沈黙が流れ、チラッと皇帝陛下の顔を見れば何やら真剣に悩んだ顔をしている。
もしかして、釈放を考えてくれて……?
「どんな事でもって……何が出来るの?」
「えっ」
突然の質問に一瞬固まる。
何が出来る?私に?
「貴族としての振る舞いも出来ないし頭も悪い。これといった名家出身でもないし金がある訳でもない。そんな君が出来る事で僕へのメリットって何?」
真剣に悩み本当に疑問に思っているのか、皇帝陛下は真面目な顔で私を見つめた。
私に出来る事……?
私に出来て皇帝陛下に有利な事は……
「私はモニータ王国では妖精と呼ばれています」
「へぇー、だから?」
「私が皇帝陛下のお側に一生お仕え致します!愛するジーク様の元を離れ、皇帝陛下の為にこの身を一生捧げます!」
ジーク様の優しい笑顔を思い出せばまたポロポロと涙が出てくる。
でもこれはしょうがない……私自身が生きていくには、不本意でもこの人に身を捧げなければならないんだから。
「ぷっ!あははっ!」
吹き出すような音。
バッと顔を上げれば皇帝陛下は堪えるように口を押さえ、しばらくして我慢できず大声で笑い始める。
「あー久しぶりにこんなに笑った」
「っ、何がそんなに」
「いやいや、君にそんな価値はないって」
さらっと笑いながら言われた言葉にピキッと時が止まる。
え、何それ……私に価値はない?
「ちやほやされて自分が特別だと思ってた?ソフィアならまだしも、君は交渉に値する程の人間じゃないよ」
「っ、そんな……ひどいっ!」
「事実だろ?ニコニコ笑って男に媚を売り、若さと美しさしかない君なんてさ」
ただの人形だよね。
悪魔のような微笑みと罵声。
人形……私が?
私の中の何かが壊れた音がする。
しばらくしてジーク様が助けに来てくれたが、私は今までのように笑顔を向ける事が出来なくなってしまった。
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