【完結】人形と呼ばれる私が隣国の貴方に溺愛される訳がない

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私の中のフレイアはいつも明るくて、花が綻ぶような笑顔で周りの人間を幸せにしていた。父上も、母上も、ジーク様も最後にはフレイアの元に行ってしまう。

しょうがないと思っていた。

私が可愛くないから。
私が笑顔を上手く見せられないから。

だから欲しいもの全部全部フレイアに奪われてしまったとしてもしょうがないと諦めていた。

でも今は違う。
どうしても諦めたくないものが沢山出来た。
絶対に、誰にだって邪魔されたくない大切なもの。

ここで必ず決着をつける。




*****

ロア様に案内された場所は教会から少し離れた施設。
ここは昔から帝国が管理している罪人を捕虜する建物でフレイアはそこの地下牢に連れて行かれたらしい。私達が到着する頃には沢山の警備兵たちが建物を取り囲んでいた。

建物に入り地下へと繋がる長い階段を降りていく。
最下層へと近付くにつれ何やら話し声らしきものが聞こえてきた。

「先に向かった騎士によると下には君の元妹とモニータの王太子、それの父親であるモニータ国王がいるらしい」

「そうですか……」

「……無理するな」

コツコツと足音だけ響く中、ロア様はやはり心配なのか私の顔を見ながら不安げな表情を浮かべる。

「大丈夫です、もう一人じゃないから」

ギュッと手を握り返し微笑む。
一人ならダメだったかもしれないけど今はロア様もいる。それに皇帝陛下だっていらっしゃる。
一人じゃないという事が心強く感じた。

「……分かった」

ロア様は一言だけ返すと再び前を向き直った。



「フレイア!フレイアを出せっ!」


聞こえてくる怒号にも似た叫び声。
ジーク様の声だ。

「何故彼女がっ!彼女はモニータ国の次期王妃だぞ!」

わんわんと喚き散らす声に頭が痛くなってくるわ。

私とロア様が最下層部へと到着すれば、その突き当たりに位置する大きな牢屋……その中にはさっき会った時よりもやつれたフレイアが座り込んでいた。

その牢にしがみ付くように喚くジーク様。
状況を飲み込めず困惑したままのモニータ国王。
そしてそれを楽しそうに見つめる皇帝陛下。
数人の騎士団の皆様は陛下を守る様に立ち、ジーク様や国王を警戒していた。


「やぁ兄上、ソフィア。結婚式直後に来て貰って悪いね」

陛下がそう言うとそれまで騒いでいたジーク様の声がピタリと止む。私の存在に気付いたのかこちらを見るや否や、ギリっと歯を軋ませる。

「そ、ふぃあ……っ!!」

バッと立ち上がり私に向かって飛び掛かろうとした所を数人の騎士達に取り押さえられる。地面に顔を押し付けられ苦しそうにしながらも私をずっと睨み続けていた。

「ソフィアっ!ソフィアっ!お前のせいで、お前のせいでフレイアが捕まっているんだぞ!お前の、お前のっ!」

「さっきから説明してんだけどさ、彼全然話聞いてないんだけど。こっちのお嬢さんの方がまだ聞き分けが良かったね」

「ソフィア!おいっ!早くフレイアを出せぇ!」

「あーもう煩いなぁ。今から君のパパとお話するんだから黙ってよ」

面倒そうに陛下が呟き、その隣にいる国王へと視線を移す。
先に口を開いたのはモニータ国王だった。

「……若き皇帝よ、未だ状況が分からんのだが。我が国の次期王妃は何故貴国の牢に囚われているのだね」

対峙する国のトップとトップ。
だがその様子はまるで祖父と孫のように見えるくらい年の差があった。
だが陛下はそれに臆する事なく堂々とモニータ国王を見つめ、牢にいるフレイアを指でさしながら淡々と話し始める。

「彼女は挙式前、別棟の新婦控え室に忍び込んでいます。護衛騎士にいくらか金貨を握らせてね」

「ほぉ……フレイアとソフィアは血の繋がりがある姉妹だったと記憶しているが?」

「ええ。ただ忍び込み花嫁の肩に傷を負わせ特注のウエディングドレスを引き裂いたようです。これが血の繋がった妹のする事ですかね?」

クスクス笑う陛下にモニータ国王は苦虫を潰したような顔を見せる。

「それに彼女、ソフィアはティムレット侯爵家との縁を根絶していますからもう妹だからとか関係ないんですよ」

「だが!ソフィアとフレイアが姉妹なのは変わりない!」

「静かにしてよ王子様。そういうもんじゃないんだよ」

ハァと疲れたように大きくため息を吐く。
ジーク様は冷静さを失っているとかの問題ではなく単に理解力が乏しいんだわ。
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