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『などと被告は供述しており、』
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調書.
しかり、下着とは書物に他ならないわけであります!その訳が、貴君らにはおわかりでしょう。
第一に形状の酷似があげられます。
よいですか?下着というものは元来、股下にはくものでありまして、したがって、その形状は股布を中心にして、線対称になっております。下着とは、局部の保護や衛生を目的としておりますから、下着の命とは、この中心部の股布なわけであります!
して、書物の形状を考えてみても、これは同様。書物とは背があるゆえに表紙と表紙が離れずにすむのです。中心を軸として両翼を拡げたるこの形状!
書物と下着の、形態上の仕組みは同義なのであります!
第ニに、我々の取り扱い方があげられます!
貴君らは、書物の類を取扱うときどのようにあつかうか?おそらく、紙の汚れることを嫌い、カバーにシワのつくことを嫌い、できることなら、買ったときのまま綺麗にしておきたいと、そう思うのではありますまいか?
そして、綺麗に読了した後も、本棚にしまいこみ、しばらくすると、うえに積もるホコリをはらうために、ことあるごとに掃除をしてやる始末。口もきかない紙切れ相手に、なんという甲斐甲斐しさでしょう!
分かります、分かります。貴君らはきっとこのように言うのでしょう。いや、我が家の本棚には、薄汚れたボロちり紙のような本が腐るほどあると。
しかし、私はこう思うわけです。それは時の流れとともに、偶発的につもった、汚れの結果であり、貴君らはすすんで汚そうとしたわけではなく、結果として汚れた書物であると。
そうです、何人も、すすんで書物を無下にしたりはしないのであります。我々の心には、無意識のところに書物にたいする畏怖、畏敬という感情が、深く刻まれているのであります。結果、それが我々の書物への取り扱い方に現れるのです。
下着も同じように取り扱うことは、言うに及びますまい。誰がすすんで下着を汚したりしましょうか。我々はできるかぎり綺麗な形で、清潔に、清廉に下着を取り扱いたいに決まっているのです。
第三に、これが最後にして、最も重要な類似点でありますが、下着というのはじつはそれ自体が色とりどりで、香り豊かな物語なのであります!
このことに貴君らは頷かないわけにはいかないでしょう!仮にそうでない者がいたとしても、それは自分の心に虚偽を施す、愚かな詐術師にすぎません!
我々は心の奥底で下着のもつその豊かな魅力に心の底からやられてしまっているのです!それは、物語で想像の旅路に出るのと、おなじ魔力!
それぞれが、それぞれに個性的な魅力をもち、香り、味わい、眺め、触り、そして履くことによって、我々は完全に下着という物語に没入するのであります!
これが書物と言わずして、一体なんと言いましょうか!
さて、ここで勘のいい貴君らなら、お気づきいただかれたでありましょうが、書物というのは全ての者に平等に開かれた物になっていなくてはなりません。ここで国家は公共財として、書物を自由に貸出できるサービスをつくり、それを行う施設を図書館とよびました。書物は全てのものに等しく行き届くようになったわけです。
して、下着は?
下着は書物と同義であるのに関わらず、貸し出しするサービスも、施設も未だどこにも存在しないのです!こんな事態が許されて宜しいのでしょうか!
答えは否です!
下着は、書物として早急に、全人に開かれた物にならなくてはなりません!そして、誰かがその責務を負わなくてはならない!
そこでわたしは、すすんでその役を買ってでることに致したわけです。
賢明なる貴君らにはこの責務の重要さが、お分かりいただけたでしょう?
具体的には……
────────────…………
「いきしっ」
「風邪?」
「……いや、かふんしょう」
「ああ、春だもんね」
「うん、春」
「ティッシュいる?」
「いや、いい。もってる」
「そう。……あ、そういえばさ」
「なに?」
「最近、ちょっと話題になったニュースでさ、これ知ってる?」
「……なにこれ?」
「うーんとね、町中の下着をバレないように、バレないように、こっそり盗んでた人なんだけど、5年ぐらい?かけて盗んでたんだけど、」
「……5年。よくつかまったね」
「それが、急に捕まったんだよ。えとね、急に街中に『図書館やってます。ただし、書物は置いてません。置いてあるのは下着です。蔵書数2万枚以上』って張り紙がはられ始めてね、」
「……?」
「意味わかんないなぁー、って思った人が、住所も載ってたから、行ってみたんだって」
「……うん」
「それで行ってみたら、やっぱり家の前におなじ張り紙が貼ってあってね、入ってみたら下着が2万枚、綺麗に折り畳まれて、飾ってあったんだって。なんか、貸し出しとかもしてたみたい」
「貸し出し……?」
「うん、貸し出し。気持ち悪いよね」
「……」
「それで、その人が、そのまま通報したんだって。なんかね、捕まった時にね、『下着とはすなわち、これ書物なり』って、言ってたらしいよ」
「……」
「意味わかんないよね」
「……なんていうかさ」
「なんていうか?」
「……春だな」
「うん、春だよねぇ」
しかり、下着とは書物に他ならないわけであります!その訳が、貴君らにはおわかりでしょう。
第一に形状の酷似があげられます。
よいですか?下着というものは元来、股下にはくものでありまして、したがって、その形状は股布を中心にして、線対称になっております。下着とは、局部の保護や衛生を目的としておりますから、下着の命とは、この中心部の股布なわけであります!
して、書物の形状を考えてみても、これは同様。書物とは背があるゆえに表紙と表紙が離れずにすむのです。中心を軸として両翼を拡げたるこの形状!
書物と下着の、形態上の仕組みは同義なのであります!
第ニに、我々の取り扱い方があげられます!
貴君らは、書物の類を取扱うときどのようにあつかうか?おそらく、紙の汚れることを嫌い、カバーにシワのつくことを嫌い、できることなら、買ったときのまま綺麗にしておきたいと、そう思うのではありますまいか?
そして、綺麗に読了した後も、本棚にしまいこみ、しばらくすると、うえに積もるホコリをはらうために、ことあるごとに掃除をしてやる始末。口もきかない紙切れ相手に、なんという甲斐甲斐しさでしょう!
分かります、分かります。貴君らはきっとこのように言うのでしょう。いや、我が家の本棚には、薄汚れたボロちり紙のような本が腐るほどあると。
しかし、私はこう思うわけです。それは時の流れとともに、偶発的につもった、汚れの結果であり、貴君らはすすんで汚そうとしたわけではなく、結果として汚れた書物であると。
そうです、何人も、すすんで書物を無下にしたりはしないのであります。我々の心には、無意識のところに書物にたいする畏怖、畏敬という感情が、深く刻まれているのであります。結果、それが我々の書物への取り扱い方に現れるのです。
下着も同じように取り扱うことは、言うに及びますまい。誰がすすんで下着を汚したりしましょうか。我々はできるかぎり綺麗な形で、清潔に、清廉に下着を取り扱いたいに決まっているのです。
第三に、これが最後にして、最も重要な類似点でありますが、下着というのはじつはそれ自体が色とりどりで、香り豊かな物語なのであります!
このことに貴君らは頷かないわけにはいかないでしょう!仮にそうでない者がいたとしても、それは自分の心に虚偽を施す、愚かな詐術師にすぎません!
我々は心の奥底で下着のもつその豊かな魅力に心の底からやられてしまっているのです!それは、物語で想像の旅路に出るのと、おなじ魔力!
それぞれが、それぞれに個性的な魅力をもち、香り、味わい、眺め、触り、そして履くことによって、我々は完全に下着という物語に没入するのであります!
これが書物と言わずして、一体なんと言いましょうか!
さて、ここで勘のいい貴君らなら、お気づきいただかれたでありましょうが、書物というのは全ての者に平等に開かれた物になっていなくてはなりません。ここで国家は公共財として、書物を自由に貸出できるサービスをつくり、それを行う施設を図書館とよびました。書物は全てのものに等しく行き届くようになったわけです。
して、下着は?
下着は書物と同義であるのに関わらず、貸し出しするサービスも、施設も未だどこにも存在しないのです!こんな事態が許されて宜しいのでしょうか!
答えは否です!
下着は、書物として早急に、全人に開かれた物にならなくてはなりません!そして、誰かがその責務を負わなくてはならない!
そこでわたしは、すすんでその役を買ってでることに致したわけです。
賢明なる貴君らにはこの責務の重要さが、お分かりいただけたでしょう?
具体的には……
────────────…………
「いきしっ」
「風邪?」
「……いや、かふんしょう」
「ああ、春だもんね」
「うん、春」
「ティッシュいる?」
「いや、いい。もってる」
「そう。……あ、そういえばさ」
「なに?」
「最近、ちょっと話題になったニュースでさ、これ知ってる?」
「……なにこれ?」
「うーんとね、町中の下着をバレないように、バレないように、こっそり盗んでた人なんだけど、5年ぐらい?かけて盗んでたんだけど、」
「……5年。よくつかまったね」
「それが、急に捕まったんだよ。えとね、急に街中に『図書館やってます。ただし、書物は置いてません。置いてあるのは下着です。蔵書数2万枚以上』って張り紙がはられ始めてね、」
「……?」
「意味わかんないなぁー、って思った人が、住所も載ってたから、行ってみたんだって」
「……うん」
「それで行ってみたら、やっぱり家の前におなじ張り紙が貼ってあってね、入ってみたら下着が2万枚、綺麗に折り畳まれて、飾ってあったんだって。なんか、貸し出しとかもしてたみたい」
「貸し出し……?」
「うん、貸し出し。気持ち悪いよね」
「……」
「それで、その人が、そのまま通報したんだって。なんかね、捕まった時にね、『下着とはすなわち、これ書物なり』って、言ってたらしいよ」
「……」
「意味わかんないよね」
「……なんていうかさ」
「なんていうか?」
「……春だな」
「うん、春だよねぇ」
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