ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

文字の大きさ
57 / 396
第1章 少女が統べる国と嘱託補導員

052 〈迷宮悪戯〉

しおりを挟む
「イリュファさん、どういうことですか?」

 突然、石造りの迷宮に空間転移したが如き状況。
 それを前にして、まるで学園長たるトリリス様の関与があるかのような呟きを漏らした彼女に、緊急事態と判断して俺の影の中から出てきたサユキが不審そうに問いかける。
 相変わらずイリュファにだけ敬語だ。

「申し訳ありません。トリリス様の悪い癖です」
「悪い癖? 一体どういうことよ」

 同じく、周囲に人の気配がなくなったからか表に出てきたフェリトが強い口調で尋ねる。

「……元々あの方達はショウジ・ヨスキ様からこの国を託された少女化魔物ロリータなのです。そして、その使命の中には救世の転生者の補助も含まれます」
「矛盾してる、です」

 影の中で一人きりは嫌らしく、そそくさと傍に来たリクルが指摘する。
 ついでにフェリトの問いの答えにもなっていない。
 彼女達全員から疑惑の目を向けられ、イリュファは困ったようになりながら口を開く。

「遡ること四百年程前、トリリス様達の情報網が万全ではなく、即座に救世の転生者を探し出せなかった頃の話です。我こそは救世の転生者であると主張する輩が後を絶たず……」
「つまり、この迷宮みたいな空間で、俺が本当に救世の転生者なのかどうか試そうとしてるってことか」

 イリュファの言葉から予想して先回りして言うと、彼女は「その通りです」と頷く。
 前提から入るのはイリュファの癖のようなものだが、結論を先延ばしにするといらぬ不審を買うことになりかねない。特にこういう場では。

「けど、イリュファが連れてきたのに疑う訳?」
「所詮、私は百年程度しか関わりのない新参者ですから。……それと、トリリス様は普段からこういった悪戯を好まれますので」

 フェリトの問いに、仕方がないことだと言うように答えるイリュファ。
 しかし、百年従事していて新人扱いとは。さすが異世界と言うべきか。

「悪戯なら危険はないんですか?」
「……トリリス様次第としか言いようがありません。しかし、あの方の性格であれば、死んだらそれまでというスタンスでイサク様を試すことでしょう」

 丁寧語で尋ねるサユキに、イリュファは緊張感を保つためか真剣な口調で告げる。

「そ、そもそも、ここってどこなんです? 何が起きたんです?」

 イリュファの脅かしに、リクルが微妙に怯えたように言う。
 これだけの異常な現象。おおよそ想像はつくが……。

「ここはミノタウロスの少女化魔物たるトリリス様の複合発露エクスコンプレックス迷宮悪戯メイズプランク〉が作り出した空間の中。私達はそこに閉じ込められたのです」
「〈迷宮悪戯〉、か。……効果はどんなものなんだ? 迷宮を作る能力なのは何となくわかるけど、どういう危険があるんだ?」
「トリリス様の意思次第で自由自在に形を変える形状。そこに配置される罠。襲いかかってくる擬似的な魔物、というところでしょうか。トリリス様はこの力で、素性を偽った者のみならず、悪意を持って学園に侵入しようとした者を何人も葬り去ってきました」

 詰まるところは迷宮、ダンジョンと聞いてイメージする通りの空間ということか。
 試験みたいなものだからと、なめてかかったら命に関わりかねないのは確かなようだ。

「ともかく進みましょう。さすがに今回の場合は、逐一迷宮の構造を変えて侵入者を迷わせるような真似はしないはずです。罠と擬似魔物に気をつけて下さい」

 サラッと続けられたイリュファの言葉を咀嚼し、思わずゾッとする。
 この複合発露が完全な敵意と共に使用されていたら、恐らく閉じ込められた存在はこの中を死ぬまで彷徨うことになりかねないことに気づいて。
 勿論、集中して維持しなければならないだろうが……。
 それができれば初見殺しに近い力だ。やはり世の中は広い。
 しかし今は、一先ず彼女が明確な殺意を持った敵対者ではないことに感謝しながら、イリュファの言う通り先を目指すことにする。
 そもそも後ろは壁に覆われているので、何にせよ前に進むしかない訳だが。

「罠があるってことなら、私達は影の中にいた方がいいわよね」

 一歩踏み出す前に、そうフェリトが提案する。
 作られた迷宮の通路は比較的狭く、多人数では身動きがしにくい。
 確かに、罠や疑似魔物とやらに対処をするにしても、少人数の方がいいだろう。
 ……リクルとかサユキとか、如何にも罠に引っかかりそうだし。
 彼女達自身もまたそう思ったのか、各々同意を示し、順番に祈念魔法で俺の影の中に入っていく。リクルだけは複合発露で俺に同化する。

「あ、そうだ。サユキのアーク複合発露エクスコンプレックスをぶつけたら、この空間を壊せないかな?」

 と、最後に残ったサユキが祈念魔法を使う直前、彼女はいいことを思いついたというように人差し指を立てて言った。
 名案に違いないと確信しているらしく、俺の顔を褒めて欲しそうに見詰めながら。

「〈迷宮悪戯〉が作る空間は、以前サユキが暴走した時に作った吹雪の空間を遥かに超える広さを有しますから無理でしょう。空間の端に辿り着ければ話は別ですが」
「後ろの壁は?」
「残念ながら、これは端ではないでしょう。私達は中心付近に放り込まれているはずです」
「むー……」

 影の中のイリュファに淡々と否定され、期待顔だったサユキは不満げに唇を尖らせる。
 まあ、俺の役に立とうと提案してくれたことだ。飴と鞭はバランスよく必要だろう。

「よしよし。ありがとな、サユキ。これからも思いついたことがあったら言ってくれ」

 だから、彼女の機嫌を取るため、その白銀の美しい髪を軽く梳くように撫でながら言う。
 俺の方が微妙に背が低いため、少々見栄えが悪いが。

「うん!」

 それでも一先ずサユキは機嫌を直してくれたようで、笑顔で影の中に入っていった。

「では、イサク様。くれぐれもお気をつけ下さい」

 それから、俺がフォローすることを最初から分かっていたように何ごともなかったかの如く、学園長室の扉を開ける直前と同じ忠告を繰り返すイリュファ。
 できれば、あの時説明しておいて欲しかったが……。
 まあ、事前に教えて貰っていたところで状況は変わらなかっただろうけども。
 終わったことを一々言っていても仕方がない。

「……よし。じゃあ、行こうか」

 そうして俺達は、複合発露によって作り出された不可思議空間、石造りの迷宮から抜け出すために進み始めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...