ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

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幕間 2→3

AR13 世界が知る

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「ウラバ大事変。この一連の事件が私達にとって想定外の事態であり、救世の本筋と関係ないことは前に述べた通りだ。けれど、その影響は計り知れず、救世の転生者の手を煩わせる数々の事件の呼び水となったことは、君も知るところだろう。特に――」

***

「……やむを得ない判断、というところか」

 人間至上主義組織スプレマシー。
 その潜伏先の一つにある執務室の椅子に腰かけながら新聞を読んでいた俺は、その一面記事の内容を受けて小さく呟いた。
 ウラバ大事変。功を焦った一部の大馬鹿者が、人体実験などという人間至上主義を掲げる者にあるまじき愚かしい真似を行ったことに端を発した一連の事件。
 その最後に、リビングデッドの少女化魔物ロリータによって引き起こされた災害は広範囲に影響が及び、脅威度EXが確かに人間社会を滅ぼしかねない力を持つことを知らしめた。

「燎原之火の如く広がったリビングデッド化。異常な程に早期の解決を見た訳だが、それでも多くの人々の心に強い恐怖が植えつけられたことは間違いない」

 とは言え、複合発露エクスコンプレックスやその力の持ち主たる少女化魔物そのものが恐怖の対象となり、彼女らに怒りの矛先が向くといったことはなさそうだった。

 当然と言うべきか、記事は真実が事細かに書かれている訳ではない。
 例えば、人間が少女化魔物と成り果てた事実を秘匿するためか、本文の中では少女化魔物を意図的に暴走させる実験が発端という記述に留められている。
 実際、暴走上等の人体実験だったし、暴走した少女化魔物が出現した訳だから完全な嘘ではない。元となったのが人間であることが省かれているだけで。
 恐らく、被害者達にも何らかの口止めがなされているはずだ。

 その上で。
 記事はその人体実験こそが原因である旨が大きくクローズアップされており、人間至上主義者へと責任を全て被せて目を逸らさせようという意図が透けて見える。
 いや、勿論、今回の件は徹頭徹尾、馬鹿な人間至上主義者が責を負うべきものだが。
 とにもかくにも。少なくとも少女祭祀国家ホウゲツにおいては、少女化魔物への悪感情は最小限に抑えられると見ていい。
 だが……だとしても、恐怖心、世情への不安が多くの人の心に残るのは間違いない。
 そうした負の感情は、人形化魔物ピグマリオンを呼び寄せる原因となりかねない。

「だからこそ政府は、事件が救世の転生者の手によって速やかに解決されたと発表した訳だ。まず、人心を安定させることを第一としたのだろう」

 その発表は、救世の転生者を必要とする末世に至ったと明かすことでもある。
 だが、彼らが過去五回にわたって救世を成し遂げてきた確かな実績もある。
 更には、既に最凶の人形化魔物ガラテアは活動を始め、百年の周期も間もなく。
 救世の転生者の出現もそろそろだろうにまだなのか、という不安もあったはず。
 それ故に、人々はむしろ救世の転生者が現れた事実に安心を抱くに違いない。

 勿論、救世の転生者がどこの誰で、どのような姿形をしているかなどの情報は新聞には一切掲載されていない。
 だが、一般市民にとってそこは全く重要ではないことだ。
 直接関わらない者にとって救世の転生者は、単なる記号でしかないのだから。

「いずれにせよ、救世の転生者の出現を世界が知るところとなった。今後、時計の針は加速していくと考えた方がいい。俺達も、それを前提に動かなければならない」

 俺はそう口にしながら新聞を適当に畳んで机の上に置き、それから傍に控えている者達の内の一人へと顔を向けた。
 ほっそりとした、背の高い少女の形をした存在。その長い髪と瞳を彩る鮮やかな緑色は、彼女が風属性の少女化魔物であることを示している。

「当代の救世の転生者。その可能性が最も高いのは確か、ヨスキ村のジャスター・ライン・ヨスキの息子イサク・ファイム・ヨスキ、だったか」
「はい。二年程それとなく観察していましたが、イサク様はヨスキ村にあって尚、年齢にそぐわぬ聡明さと力をお持ちでした。私は間違いないと思います」

 狂化隷属ではない単なる隷属の矢を手に、俺の問いかけに答える少女化魔物。
 狂化されてさえいなければ、質問に応じて意見を述べることぐらいは可能だ。

 救世の転生者は、ヨスキ村に誕生する可能性が非常に高いとされている。
 同時期に子供が三人生まれた際には、組織の者が先走って襲撃した程だ。
 そのヨスキ村で過ごしたことのある彼女の、実体験に基づいた情報。
 信憑性は高い。勿論、確証はないが、注目には値する。

「確か、脅威度EXの少女化魔物と真性少女契約ロリータコントラクトを結んでいるとのことだったな」
「はい。自ら戦いに赴き、相手の暴走を鎮め、その場で契約を結んだようです」
「十二歳でそれか。化物め」

 過去の救世の転生者達が残した逸話に遜色ないエピソードだ。
 勘違いではないだろう。
 もし救世の転生者でなかったら、本物は一体どうなるのかと恐ろしくなる。
 いずれにしても、下手にちょっかいをかけて逆鱗に触れでもしたら、どのような目に遭うか分かったものではない。
 今後の立ち回りには、これまで以上に気をつけなければならない。

「だが、どこの誰であろうと構わない。俺のやるべきことは変わらない」

 口の中でそう言いながら、俺は執務室の隅に目をやった。
 そこには、強引な手段を用いて組織の代表となった俺に反感を持つ者への示威のために設置した石像が、石化した瞬間の恐怖に慄く表情を変わらずに見せている。
 それらは、俺が今更後悔や躊躇など許されない、後戻りできない罪を犯してきた事実を自らに再認識させるものでもある。

「この下らない組織も、救世の転生者さえも利用し、あらゆる手段を講じ、俺は俺の目的を必ず果たして見せる。この身に代えてでも」

 世界に愛された、いや、英雄たれと呪われているが如き救世の転生者を利用するなど薄氷を踏むような危険極まりない行為だろう。
 それでも俺はやり抜かなければならない。最後まで。
 これまでの行為に対する責任もそうだが、そうしなければ俺は前に進むことなどできはしないのだから。
 全ては、かつて失ったものを取り戻すために。

「だから、もう少し。待っていてくれ、皆」

 俺は己を鼓舞するように言い、これから先の計画を脳裏に描いた。

***

「特に、そう。まず人間至上主義者スプレマシーの代表テネシス・コンヴェルト。彼もまた、この事件を契機に表立って動き始める。実際に対峙した君には今更な説明かもしれないけどね。そして勿論、特筆すべきは彼だけじゃない。もう一人――」
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