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第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源
228 一足早い夏休みへ
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「改めて、おめでとう。皆」
四月、五月に続いて六月もまた慌ただしく過ぎ去り、早七月。
六月末の最終日曜日に行われた飛び級試験を軽く突破した弟達に、とりあえずの御褒美として連れてきた回らない寿司屋のカウンター席にて。
俺はそう彼らに対して何度目かの祝福の言葉を贈った。
「ありがとう、兄さん」「「あんちゃん、ありがとう」!」
「ありがとうございます、イサクさん」
すぐ左隣にいるレンリを除き、右側で嬉しそうに応じるセト達四人。
ダンの声が少々大きいが、他に客はいないので多少なら問題あるまい。
依頼の対価やEX級補導員としての給料を持て余しているので、今日は貸切だ。
俄か成金全開の余り行儀がよくない金の使い方だが、タンスに貯め込むばかりでは経済によろしくないので許して貰いたいところだ。
「しかし、これで皆、三年生か」
それぞれに好みのネタを注文し、食べ始めている子供達を眺めながら呟く。
聞いたところによると、飛び級試験は六月末と十一月末と二月末の三回。
その内、六月末と十一月末に行われるものは、試験の結果によって一年から二年飛び級することができるらしい。
今回は五人共、最大限飛び級できる運びとなり、俺が口にした通り夏休み明けの九月から三年生となる。
ちなみに二月末の試験は直後に進級を控えていることもあり、飛び級は一年のみ可能になるとのことだ。
ホウゲツ学園は九年制なので、最短二年で卒業することもできる計算になる。
勿論、上級生になればなる程、飛び級試験の難易度も高くなるので机上の計算通りに行くことは、たとえヨスキ村出身者であっても稀なようだが。
また、中には無理に飛び級した結果、当然より高度になる授業内容についていけずにドロップアウトしかける生徒もいるとも聞く。
そこは最大限注意しなければならないが、まあ、セト達ならば大丈夫だろう。
彼らとの訓練で急激に実力を伸ばしているクラスメイトのラクラちゃんも元から十分過ぎる程優秀だし、問題はないはずだ。
いざとなれば、弟達共々サポートをすればいい。
「旦那様も、中々に面倒な依頼を終えられたそうで。お疲れ様です」
そんなようなことを考えていると左隣から一人、飛び級などさして重要な話ではない、とでも言うように食事よりも俺を労うことを優先させるレンリ。
いわゆる合法ロリである彼女の本当の年齢や目的からして、そういう反応になるのは当然と言えば当然のことではあるが……。
それにしても通常運転が過ぎる感もある。
まあ、レンリについては、そういうものだと思うしかない。
「……私もウインテート連邦共和国に行ってみたかったです。旦那様と一緒に」
後半部分を強調するように言いながら、ススッと俺に少し寄ってくるレンリ。
そうは言っても、彼女は名目上アクエリアル帝国からの留学生。
尚且つ、その実体は父親から、即ち、かの国の皇帝からその証たる国宝、第六位階の祈望之器アガートラムを簒奪した次期皇帝の資格を有する者だ。
おいそれと他国に連れていけるはずもない。
勿論、彼女も分かっていて言っているはずだろうけれども。
「いいなあ、あんちゃん。色んなところに行けて」
そんな俺達の会話を聞き、口の中に放り込んでいたアナゴを飲み込んでからダンが羨ましそうに言う。
右側にいる皆に目を向けるとセトやトバル、ラクラちゃんも食べながら同じ感想を抱いているかのような表情を浮かべていた。
ラクラちゃんを含め、生まれ故郷とこの学園都市トコハぐらいしか知らないことを考えれば当たり前の反応だろう。
易々と異国の情景をネットで見られる前世とは、全く以って違う訳だし。
異郷への憧れは格別のものがあるはずだ。
「ま、そこは仕事柄って奴だな。皆も、補導員になればホウゲツ全土に、特に優秀な補導員になれば海外に赴くことになるぞ。冒険家なら尚更だな」
「……うん」
最後にセトの顔を見ながらつけ加えると、彼は至極真面目な顔で頷いた。
あれから少し経ったが、冒険家を目指す気持ちに変わりはないようだ。
いずれにしても、今回の飛び級試験の合格によって、その夢へと一歩前進したと言っていい。三年生ともなれば、より実践的な授業となるはずだから。
早い段階から経験を蓄積できれば、たとえ今後飛び級しなくても有利になる。
地固めをしっかりするため、最初に飛び級した後で九年という期間に合わせてホウゲツ学園に残る生徒もいるそうだし、夢に至るための選択肢は広がるだろう。
そうした研鑽を積むことができる環境という部分でも、ホウゲツ学園は世界一と言っても過言ではない。
「ま、それはそれとして……だ」
今日はあくまでもお祝いの席。
なので、堅苦しい話はなしだ。
そこら辺のことは頭の中で留めておいて、またの機会、新学期の前にでも話せばいい。それよりも――。
「そんな皆に朗報だ」
彼らには伝えておかなければならない話がある。
とは言え、当然ながら堅苦しい話ではない。
なので、そうと伝わるように少しおどけた感じで俺が言うと、レンリも含めてセト達は各々寿司を手で掴みながらキョトンとした顔で首を傾げた。
そんな彼らの反応に軽く苦笑しつつ、若干勿体振って注意を引くように一拍置いてから言葉を続ける。
「今回、皆が飛び級をするにあたって、本来一年生の残りの学期と二年生、三年生の一学期で習う内容の確認を行う合宿……という名目で学園所有の海水浴場を特別に俺達の貸切で使えることになった」
「ええと、この学園都市トコハのですか?」
対して、戸惑ったように疑問を口にするラクラちゃん。
かつての救世の転生者が仲間と共に海で遊んだという話が広まって以来、各地にレジャー施設として海水浴場が作られている。
なので勿論、学園都市トコハにもあるにはあるが……。
「いや、この近くにあるのは海辺での戦闘向けの訓練施設の側面が強いし、海の近くにはマナプレーンの発着場が合ったり、海運の拠点があったりで狭いからね」
ラクラちゃんの確認の問いかけを暗に否定する。
ある程度大きな都市では、まだレジャーより物流や漁業などが優先されている。
その辺りは前世の東京に近いところがある、と言えるだろうか。
「だから、今回俺達が行くのは別の場所。林業が盛んな森林都市モクハにあるホウゲツ学園所有の海水浴場だ」
「森林都市、ですか?」
その呼称のイメージと海水浴場というものの間に齟齬を感じたのか、左側からレンリが不思議そうに問いかけてくる。
気持ちは分からなくもない。
「土地の大半が山間部で林業が主要産業なんだけど、モクハは一応海に接しているからな。とは言え、漁業に従事している人は少ないから、海岸の土地は国で管理していて、その一部はホウゲツ学園でこういう時に合宿に使われるらしいんだ」
「成程……」
俺の言葉に納得したように頷くレンリ。
ちなみに森林都市モクハは前世で言うと和歌山県に当たる。
「えっと、でも、モクハはいくら何でも遠いんじゃないですか? ボクがヨツバから出てきた時もかなり時間がかかりましたし」
と、ラクラちゃんが若干不安そうに尋ねてくる。
彼女の出身地、四国に存在するヨツバとモクハは割と近い。
少なくとも俺達の出身地であるヨスキ村と学園都市トコハに比べれば遥かに。
だから彼女はホウゲツ学園に入学する際に丸二日ぐらいかけて学園都市トコハに来た旅路を思い出して、そんな心配を抱いたのだろう。
当時、移動がかなり大変だったに違いない。
「そうだね。だから、普通は転移で行くらしいんだけど……」
それは少々味気ない。
だからなのかは分からないが――。
「今回は特別にマナプレーンを出して貰えることになったから、皆で空の旅だ」
ホウゲツ学園の学園長たるトリリス様が、気を利かせて用意してくれたらしい。
「ホ、ホントですか!?」
それを聞き、驚きと共に期待の色濃い声で問うラクラちゃん。
寿司を口に放り込んで頬を膨らませているダン達も、同じように俺を見ている。
一応、皆、空を飛ぶ祈念魔法は使えるはずだが、やはり祈望之器に乗り込んで空を飛ぶというのはまた趣が違うものなのだろう。
まして初体験であれば、実態以上に憧れを抱いていてもおかしくはない。
思ったのと違う、となっていますかどうかは実際に乗ってみなければ分からないが、どちらの場合でも一つの経験として有意義なものとなるに違いない。
「勿論、本当だ」
「やったっ」
俺の答えに嬉しそうに顔を見合わせる子供達の姿に、自然と微笑みが浮かぶ。
そんな彼らの反応を見ることができただけで、俺にとっても今回の話は十分に価値があったと言える。
「ま、そういうことだから、明日は皆で水着を買いに行こうか」
「「「うん!」」」「はい!」
「水着……私、旦那様に選んでいただきたいです」
一人だけ怪しげな流し目を向けてくるレンリは一先ず置いておくとして、元気よく返事をするセト達四人に頷く。
不満そうにクイクイと袖を引いてくるレンリには「分かった分かった」と応じておき、それから俺は黙々と寿司を握る職人さんに向き直った。
食事に来て、余り話ばかりしているのは失礼というものだ。
「大将。ウニとヒラメのエンガワ、お願いします」
「あいよ」
そうして、その後も金にものを言わせた頼み方をして寿司を存分に堪能し、食事を終えた後も微妙にテンションの高いままな子供達を寮まで帰しながら。
薄暗くなっても余り下がらない気温に夏の到来を感じつつ、俺は学園都市トコハでの最初の夏に思いを巡らせたのだった。
四月、五月に続いて六月もまた慌ただしく過ぎ去り、早七月。
六月末の最終日曜日に行われた飛び級試験を軽く突破した弟達に、とりあえずの御褒美として連れてきた回らない寿司屋のカウンター席にて。
俺はそう彼らに対して何度目かの祝福の言葉を贈った。
「ありがとう、兄さん」「「あんちゃん、ありがとう」!」
「ありがとうございます、イサクさん」
すぐ左隣にいるレンリを除き、右側で嬉しそうに応じるセト達四人。
ダンの声が少々大きいが、他に客はいないので多少なら問題あるまい。
依頼の対価やEX級補導員としての給料を持て余しているので、今日は貸切だ。
俄か成金全開の余り行儀がよくない金の使い方だが、タンスに貯め込むばかりでは経済によろしくないので許して貰いたいところだ。
「しかし、これで皆、三年生か」
それぞれに好みのネタを注文し、食べ始めている子供達を眺めながら呟く。
聞いたところによると、飛び級試験は六月末と十一月末と二月末の三回。
その内、六月末と十一月末に行われるものは、試験の結果によって一年から二年飛び級することができるらしい。
今回は五人共、最大限飛び級できる運びとなり、俺が口にした通り夏休み明けの九月から三年生となる。
ちなみに二月末の試験は直後に進級を控えていることもあり、飛び級は一年のみ可能になるとのことだ。
ホウゲツ学園は九年制なので、最短二年で卒業することもできる計算になる。
勿論、上級生になればなる程、飛び級試験の難易度も高くなるので机上の計算通りに行くことは、たとえヨスキ村出身者であっても稀なようだが。
また、中には無理に飛び級した結果、当然より高度になる授業内容についていけずにドロップアウトしかける生徒もいるとも聞く。
そこは最大限注意しなければならないが、まあ、セト達ならば大丈夫だろう。
彼らとの訓練で急激に実力を伸ばしているクラスメイトのラクラちゃんも元から十分過ぎる程優秀だし、問題はないはずだ。
いざとなれば、弟達共々サポートをすればいい。
「旦那様も、中々に面倒な依頼を終えられたそうで。お疲れ様です」
そんなようなことを考えていると左隣から一人、飛び級などさして重要な話ではない、とでも言うように食事よりも俺を労うことを優先させるレンリ。
いわゆる合法ロリである彼女の本当の年齢や目的からして、そういう反応になるのは当然と言えば当然のことではあるが……。
それにしても通常運転が過ぎる感もある。
まあ、レンリについては、そういうものだと思うしかない。
「……私もウインテート連邦共和国に行ってみたかったです。旦那様と一緒に」
後半部分を強調するように言いながら、ススッと俺に少し寄ってくるレンリ。
そうは言っても、彼女は名目上アクエリアル帝国からの留学生。
尚且つ、その実体は父親から、即ち、かの国の皇帝からその証たる国宝、第六位階の祈望之器アガートラムを簒奪した次期皇帝の資格を有する者だ。
おいそれと他国に連れていけるはずもない。
勿論、彼女も分かっていて言っているはずだろうけれども。
「いいなあ、あんちゃん。色んなところに行けて」
そんな俺達の会話を聞き、口の中に放り込んでいたアナゴを飲み込んでからダンが羨ましそうに言う。
右側にいる皆に目を向けるとセトやトバル、ラクラちゃんも食べながら同じ感想を抱いているかのような表情を浮かべていた。
ラクラちゃんを含め、生まれ故郷とこの学園都市トコハぐらいしか知らないことを考えれば当たり前の反応だろう。
易々と異国の情景をネットで見られる前世とは、全く以って違う訳だし。
異郷への憧れは格別のものがあるはずだ。
「ま、そこは仕事柄って奴だな。皆も、補導員になればホウゲツ全土に、特に優秀な補導員になれば海外に赴くことになるぞ。冒険家なら尚更だな」
「……うん」
最後にセトの顔を見ながらつけ加えると、彼は至極真面目な顔で頷いた。
あれから少し経ったが、冒険家を目指す気持ちに変わりはないようだ。
いずれにしても、今回の飛び級試験の合格によって、その夢へと一歩前進したと言っていい。三年生ともなれば、より実践的な授業となるはずだから。
早い段階から経験を蓄積できれば、たとえ今後飛び級しなくても有利になる。
地固めをしっかりするため、最初に飛び級した後で九年という期間に合わせてホウゲツ学園に残る生徒もいるそうだし、夢に至るための選択肢は広がるだろう。
そうした研鑽を積むことができる環境という部分でも、ホウゲツ学園は世界一と言っても過言ではない。
「ま、それはそれとして……だ」
今日はあくまでもお祝いの席。
なので、堅苦しい話はなしだ。
そこら辺のことは頭の中で留めておいて、またの機会、新学期の前にでも話せばいい。それよりも――。
「そんな皆に朗報だ」
彼らには伝えておかなければならない話がある。
とは言え、当然ながら堅苦しい話ではない。
なので、そうと伝わるように少しおどけた感じで俺が言うと、レンリも含めてセト達は各々寿司を手で掴みながらキョトンとした顔で首を傾げた。
そんな彼らの反応に軽く苦笑しつつ、若干勿体振って注意を引くように一拍置いてから言葉を続ける。
「今回、皆が飛び級をするにあたって、本来一年生の残りの学期と二年生、三年生の一学期で習う内容の確認を行う合宿……という名目で学園所有の海水浴場を特別に俺達の貸切で使えることになった」
「ええと、この学園都市トコハのですか?」
対して、戸惑ったように疑問を口にするラクラちゃん。
かつての救世の転生者が仲間と共に海で遊んだという話が広まって以来、各地にレジャー施設として海水浴場が作られている。
なので勿論、学園都市トコハにもあるにはあるが……。
「いや、この近くにあるのは海辺での戦闘向けの訓練施設の側面が強いし、海の近くにはマナプレーンの発着場が合ったり、海運の拠点があったりで狭いからね」
ラクラちゃんの確認の問いかけを暗に否定する。
ある程度大きな都市では、まだレジャーより物流や漁業などが優先されている。
その辺りは前世の東京に近いところがある、と言えるだろうか。
「だから、今回俺達が行くのは別の場所。林業が盛んな森林都市モクハにあるホウゲツ学園所有の海水浴場だ」
「森林都市、ですか?」
その呼称のイメージと海水浴場というものの間に齟齬を感じたのか、左側からレンリが不思議そうに問いかけてくる。
気持ちは分からなくもない。
「土地の大半が山間部で林業が主要産業なんだけど、モクハは一応海に接しているからな。とは言え、漁業に従事している人は少ないから、海岸の土地は国で管理していて、その一部はホウゲツ学園でこういう時に合宿に使われるらしいんだ」
「成程……」
俺の言葉に納得したように頷くレンリ。
ちなみに森林都市モクハは前世で言うと和歌山県に当たる。
「えっと、でも、モクハはいくら何でも遠いんじゃないですか? ボクがヨツバから出てきた時もかなり時間がかかりましたし」
と、ラクラちゃんが若干不安そうに尋ねてくる。
彼女の出身地、四国に存在するヨツバとモクハは割と近い。
少なくとも俺達の出身地であるヨスキ村と学園都市トコハに比べれば遥かに。
だから彼女はホウゲツ学園に入学する際に丸二日ぐらいかけて学園都市トコハに来た旅路を思い出して、そんな心配を抱いたのだろう。
当時、移動がかなり大変だったに違いない。
「そうだね。だから、普通は転移で行くらしいんだけど……」
それは少々味気ない。
だからなのかは分からないが――。
「今回は特別にマナプレーンを出して貰えることになったから、皆で空の旅だ」
ホウゲツ学園の学園長たるトリリス様が、気を利かせて用意してくれたらしい。
「ホ、ホントですか!?」
それを聞き、驚きと共に期待の色濃い声で問うラクラちゃん。
寿司を口に放り込んで頬を膨らませているダン達も、同じように俺を見ている。
一応、皆、空を飛ぶ祈念魔法は使えるはずだが、やはり祈望之器に乗り込んで空を飛ぶというのはまた趣が違うものなのだろう。
まして初体験であれば、実態以上に憧れを抱いていてもおかしくはない。
思ったのと違う、となっていますかどうかは実際に乗ってみなければ分からないが、どちらの場合でも一つの経験として有意義なものとなるに違いない。
「勿論、本当だ」
「やったっ」
俺の答えに嬉しそうに顔を見合わせる子供達の姿に、自然と微笑みが浮かぶ。
そんな彼らの反応を見ることができただけで、俺にとっても今回の話は十分に価値があったと言える。
「ま、そういうことだから、明日は皆で水着を買いに行こうか」
「「「うん!」」」「はい!」
「水着……私、旦那様に選んでいただきたいです」
一人だけ怪しげな流し目を向けてくるレンリは一先ず置いておくとして、元気よく返事をするセト達四人に頷く。
不満そうにクイクイと袖を引いてくるレンリには「分かった分かった」と応じておき、それから俺は黙々と寿司を握る職人さんに向き直った。
食事に来て、余り話ばかりしているのは失礼というものだ。
「大将。ウニとヒラメのエンガワ、お願いします」
「あいよ」
そうして、その後も金にものを言わせた頼み方をして寿司を存分に堪能し、食事を終えた後も微妙にテンションの高いままな子供達を寮まで帰しながら。
薄暗くなっても余り下がらない気温に夏の到来を感じつつ、俺は学園都市トコハでの最初の夏に思いを巡らせたのだった。
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