ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

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第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源

AR28 子供は意外と敏感なもの

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「大人が子供に心配をかけないように虚勢を張るのが世の常ならば、それを見抜いた子供がもどかしさを感じてしまうのもまた世の常というものだ。……ああ、そうだね。君の演技は余り上等なものではなかったようだ。とは言え――」

***

「……何だか兄さん、ちょっと悩んでるみたいだったね」

 水かけ合戦の合間。休憩時間。
 僕は傍にいたダン、トバル、それからラクラちゃんと視線を移しながら言った。
 ログハウスに残っているレンリさんによれば、兄さんはホウゲツ学園から連絡があったとかで学園都市トコハに戻っているらしい。
 昨日も急な依頼で出かけて特別収容施設ハスノハを経由して帰ってきたばかりだと言うのに、社会人というのは忙しくて大変だなと心の底から思う。
 そのせいかは分からないけれど、何となく兄さんの様子に違和感があった。
 昨日の水かけ合戦での大人げなさや、ついさっきまでベランダから浜辺にいる僕達を眺めていた姿に、普段との微妙な差異のようなものを感じて。

「そうだった?」

 まだ三ヶ月程度のつき合いであるラクラちゃんはそう問い気味に返しながら首を傾げているが、弟である僕には分かる。
 生まれた時からの近くにいて、ほとんど兄弟のような関係のダンとトバルもまた気づいていたようで、二人は彼女とは対照的に肯定するように頷いている。
 夏休みの旅行……もとい飛び級に備えた強化合宿のさ中であるだけに、兄さんはそんな素振りを見せないように表面を取り繕おうとしていたみたいだけれど。
 悩みが深いのか、家族には分かってしまう程度には綻びがあった。

「……まあ、イサクは優秀な嘱託補導員だからな。僅か三ヶ月の働きながらホウゲツ学園の上層部からの信頼も既に獲得している。それだけに、他の一般的な補導員よりも厄介な仕事を押しつけられる頻度は当然増える訳だ」

 と、横からフォローするように言ったのは、今回の強化合宿に護衛(ホウシュン祭の襲撃が理由らしい)として同行しているライムさん。
 同じヨスキ村出身であるだけに、少し離れたぐらいでは会話は筒抜けだ。
 彼は、僕が生まれる前に行方不明になってしまって顔も見たことのない一番上の兄さん、アロン兄さんの友達だと聞いている。
 イサク兄さんの話によると、この人も補導員らしい。
 既に第二次性徴を迎えて立派な体格になっていることもあり、何と言うか、初めて会った親戚のおじさんという印象だった。

「昨日の仕事もその類の面倒なもので、だから、少し考え込んでいたのだろう」

 そんなライムさんの言葉に続いて隣からそう告げたのは、彼と真性少女契約ロリータコントラクトを結んでいる少女化魔物ロリータのルシネさん。
 背筋を伸ばして力強い声で言う彼女は、さながら学園の教師のようだ。

「仕事の愚痴を子供に漏らすのはちょっとダサい。隠したい気持ちは分かる」

 更に、同じくライムさんと契約しているパレットさんがポツリと呟く。
 その感覚は分からなくもない。
 僕だって家族や、家族とは別の意味で近いダンやトバルの前では、なるべく弱音を吐きたくないと思う気持ちはある。
 もし自分に弟がいたとしたら、尚更のことそう感じるだろう。
 そういった点で納得できる部分もなくはない。
 けれども、子供と断じられたことについては、事実であっても若干反感が湧く。

 しかし、何よりも。
 家族の一人として、悩みがあるのなら打ち明けて欲しいと強く思う。
 一時期、将来どうなりたいかについて兄さんに相談せずにいた自分のことは棚に上げながら、僕はそれをそのまま口にした。
 すると、ライムさんは苦笑気味に口を開く。

「それこそ年長者の矜持という奴だ。大目に見てやれ。セトも成長すれば分かる」
「でも……」

 お前に相談したところで何も解決しない。
 そういう風に言われているようで、何となく悔しい。

 実際のところ、それもまた事実に他ならないことは重々理解している。
 ヨスキ村の子供として優秀だと褒められることはあっても、あくまでもその年齢にしては、というだけのことに過ぎない。
 まだ微々たる力しかない僕達では、兄さんの手助けなんて不可能だろう。
 ハッキリ言って足手纏いにしかならないに違いない。
 けれども、そう簡単に納得することはできず、思わず黙り込んで俯いてしまう。

「……まあ、もどかしく思う気持ちも分からくはないが、そこで不貞腐れるだけではまだまだ子供だ。そんな相手には誰も頼ろうとは思わないぞ」

 そんな様子の僕に対し、ライムさんは厳しく告げる。
 それは、確かにその通りだと思う。
 思うけれども、正論は肩に重くのしかかって尚のこと視線が下がってしまう。
 隣で聞いていたダンとトバルも同じ様子だ。
 二人もまた、僕と同じような歯痒さを抱いていた部分もあるだろうから当然だ。
 ……傍にいるラクラちゃんまで、叱られたようにシュンとしているのは少し申し訳なく思うけれども。彼女も何かしら思うところがあったのだろう。

 結果そこで話が途切れ、気まずい沈黙が降りる。
 しかし、それが定着し切らない内に、静けさを破ってルシネさんが口を開いた。

「そういうところを見て見ぬ振りをして、実際に助けを求めてきた時に即座に行動できるように備えておく、というのも一つの大人のやり方だ」
「……空気を読まず、正面からぶつかっていくのもアリ。子供の率直さという免罪符もあるし。ただ、自分が子供であることを利用しようとか考え始めたら、もう純粋な子供とは言えなくなるけれど」

 続いたパレットさんのアドバイスは素直に受け取ってしまっていいものか首を傾げたくなったけれども、そのおかげで大幅に空気が和らぐ。
 きっとそういう意図で言ったのだろうと思っておくことにして、一先ずはルシネさんの助言に従うのが無難だろう。
 僕の視線を受けてダン達も同意するように頷く。
 言葉に出さずとも、僕達の気持ちは一致したようだ。

「イサクさんも助かるって言ってたし、ボクは聖女になれるようにもっと自分を磨くよ。イサクさんには色々お世話になってるから、恩返ししないとね」

 そして真っ先に。
 自分の夢に一つ新たなモチベーションを積み重ねるラクラちゃん。
 一番反応が早かったのは、それだけ彼女の夢が確固たるものである証だろう。

「俺も早くホウゲツ学園を卒業して、あんちゃんと同じぐらい皆から頼って貰えるような補導員になれるように頑張る!」

 一歩出遅れたものの、昔から一貫しているダンも改めて決意を表明する。
 続いて、ヨスキ村にいた時に比べて大きく変化したトバル。

「俺は複製師になって、あんちゃんの助けになるような祈望之器ディザイア―ドの複製改良品を作れるようになるよ」
「うんうん。その意気ッスよ」

 元々は複製師という職業を嫌厭していたトバルがハッキリと告げた目標に、傍で黙って話を聞いていたヘスさんが嬉しそうに彼の肩をバンバンと叩く。
 もしかすると僕達の中で一番大人になったのはトバルかもしれない。
 それに対して僕は、将来に関する一応の計画は立ててはみたものの、未だに足踏みしているような感が強い。
 冒険家になって第六位階の祈望之器を見つけて、となると余りにも遠過ぎる。
 可能なら、もっと近い未来に、兄さんの役に立てるようになりたい。
 だから――。

「あの、トバル、ヘスさん」

 僕は、最近公開されたという複製の新しい技術について尋ねようと二人に対して声をかけたのだった。

***

「とは言え、こうしたもどかしさこそが、子供達を更に成長させる一要因となることも往々にしてあるものだ。君は見抜かれたことを悔いるかもしれないが、それでも彼らにとってはよかったと言ってもいいと私は思う。何にも気づくことなく、手を尽くすこともなく、全てが済んでしまうよりは遥かに、ね。……私達に言う資格は、全くないと思うけれど」
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