ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

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最終章 英雄の燔祭と最後の救世

313 帰宅と目的の再確認

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「ううむ。セトは壁にぶつかってばかりじゃなあ」
「そうだね。けど、まだ村を出て半年程度だしさ」

 自宅への道すがら、少し先を行く母さんにセトの近況を説明しながら歩く。
 もっとも母さんとは学園都市トコハでも割と頻繁に会っているので、そこまで話さなければならないようなことはない。
 精々、直近の出来事についてぐらいだ。
 それにしたってロト・フェイロックによるホウゲツ学園襲撃でセトが大怪我を負ったこと(聖女の力で完治済み)に関して大幅にオブラートに包んだ以外は、特筆すべきようなこともない。事実を時系列に並べただけだ。
 全てありのまま話したかったところだが、さすがに今正に罪を償っている最中である彼らに闇討ちを仕かけでもしたらマズイので、そこだけは弄らせて貰った。

 まあ、それはともかくとして。
 母さんの言う通り、セトは幼い頃から順風満帆とは来ていない。
 やはり何を置いても、幼い頃に起きたヨスキ村襲撃でトラウマを負わされ、真性少女契約ロリータコントラクトを結べなくなってしまったことが影を落としているのだろう。
 とは言え、弟はまだ十二歳。
 むしろ転生者でもないダンとトバルがあのレベルに至っているのが異常なだけであって、平均から比べれば段違いに優秀と言っていい。
 それに何より、真正少女契約だけが価値の全てではない。だから――。

「大丈夫。まだまだここからだって」

 弟はきっと、救世を終えた後の世界において特別で輝かしい未来を掴んでくれるはずだ。俺はそう信じている。

「…………うむ。そうじゃな」

 俺が頭の中で考えていたことも含めて同意するように母さんが深く頷く。
 いずれにしても、当人ではない俺達が勝手に焦ってはいけない。
 セトに要らぬプレッシャーを与えないように、冷静に見守る必要があるだろう。
 そんな風に会話を続けている間に、懐かしの我が家の前に至る。
 当然ながら外観に大きな変化はない。古きよき日本家屋の一軒家。
 四月に村を出た時のままだ。

「…………久し振りだな」

 たった六ヶ月程度離れていただけだが、何もかもが懐かしい。
 実際、この世に転生してから十五年以上過ごした場所だ。
 前世と合わせても、主観的には一番長く暮らした家と言って差し支えない。
 特に意識しておらずとも、特別な感情が生じていて然るべきだろう。

「そうですね」
「はいです。……また戻ってこられて、よかったです」

 そんな俺の言葉に、影の中から出てきて同意を示すイリュファとリクル。
 特にリクルは自我を持って間もなくここに来たようなものだから、人生の九割以上を過ごした場所と言って差し支えない。
 そこからこれだけの時間離れていたのも初めてだし、ましてや直前に己の生死や存在意義に関わる大事件を乗り越えてきているのだ。感慨も一入に違いない。

「ただいまー」
「サユキ、走ったら危ないわよ」

 続いてマイペースに先頭を切って家に入っていくサユキと、そんな彼女を窘めながら小走りで後を追うフェリト。
 二人共、なんとなく嬉しそうだ。
 彼女達がここで過ごした時間は比較的短い方だが、それでも数年。
 帰る場所として明確に認識していることは、言動を見ても明らかだ。

「ここが旦那様の生家……」

 その傍で同じく影から出てきていたレンリが呟く。
 当然と言うべきか、彼女は俺の誘いに二つ返事で応じて一緒にヨスキ村に来ていた。ちなみにラハさんはセト達の護衛としてホウゲツ学園に残っている。
 そのレンリも感慨深げだが、それは他の子達とは毛色が違う感じだ。
 寸分違わず目に焼きつけんとするが如く、無駄に真剣な顔で家を見詰めている。
 まるで、いずれ暮らすことになる場所を見定めているかのようだ。
 ……そうなる未来を彼女も、俺も、心の底から望んでいる。

「レンリよ。後でいくらでも見られるのだから、今は中に入れ」
「承知しました。御義母様」

 そのレンリは母さんの指示に素直に従い、澄ました顔で家の中へ。
 母さんもその後に続く。

「さ。ルトアさんも、入りましょう」

 それを見送ってから、俺達の実家を前に別ベクトルで緊張が最大となったように固まっている彼女に声をかけ、その手を引いて母さんについていこうとする。

「は、はい。ええと……お邪魔します!」

 と、ルトアさんは一つ気合を入れるように大きな声で言ってから敷居を跨いだ。
 最後に我が家のメイドさん達も家に入って玄関の扉が閉められる。
 ちなみにテアとアスカは影の中だ。
 二人はまだ両親と顔を合わせたことがなかったし、色々と事情がある。
 少しの間、我慢して貰って真実を明かした後に紹介するつもりだ。
 できれば彼女達にも、この一時を共有して貰いたい。

「おかえり、イサク。準備はできてるぞ」

 家の中では父さんが食事会の用意をしながら待っていた。
 ダイニングの家具の配置を変えて全員が入れるように空間が作られ、中央に置かれた広い天板のテーブルの上には所狭しと料理が並べられている。
 メインは中央に置かれた鍋のようだ。
 しかし、ボリュームが凄い。両親の張り切り具合がよく分かる。

「ところでリクルよ。何か雰囲気が変わったか?」

 と、母さんが最後に部屋に入ってきた彼女に問いかける。
 食事会の準備をお願いした時は、それこそ張り切り過ぎて母さんは話もそこそこに父さんを連れて職員寮の部屋を飛び出していってしまった。
 なので、リクルの身に起きた最近の出来事についてはまだ話していない。
 だが、母さんは彼女の少し肩の力が抜けた様子から変化を感じ取ったようだ。

「ようやくご主人様と真性少女契約を結ぶことができたからだと思いますです」
「ほう……」

 チラリと意味ありげな目で俺を見る母さん。
 好色な息子に呆れているような雰囲気を出さないで欲しい。
 いや、俺の被害妄想かもしれないけれども。

「と言うことは、何故真性少女契約を結べなかったかも分かった訳じゃな」
「はいです。実は――」

 リクルは自身の出自、本来辿る運命と現在の状態について母さんに説明した。
 それを聞いて母さんは「そうか」と真面目な顔で応じ、俺に再び視線を向ける。

「よくやったな、イサク。さすがは妾の息子じゃ」

 そして、母親らしい微笑みと共に純粋な賞賛を口にした。
 そう真っ直ぐに褒められるとくすぐったい。頬をかく。
 母さんはそんな俺の様子に一層笑みを深めた。が、それからリクルへと顔を向けると、一転してニヤリという感じの悪い笑顔を作る。

「じゃが、そういうことならば分かっておろうな? リクル」
「ふえ? え、えっと、もしかして……」

 いつものアレか。
 リクルもまた察しがついた……と言うよりは、そうなることを前々から望んでいて、頭の片隅にあったと言った方が正しそうだ。
 長らく真性少女契約を結ぶことができずにいる中で、このやり取りを他の子達に先を行かれる度に目の当たりにして色々と思うところもあっただろうから。

「うむ。リクル、お前もこれからは妾を母と呼ぶのじゃ」
「は、はいです。その……おかー様」

 既に心の準備はできていたように頷きつつも、若干躊躇いがちに呼ぶリクル。
 ちょっと独特な調子の呼び方に、母さんはこれはこれで悪くないと緩んだ表情を見せる。正にテンプレだが、今日は後二回程波乱なく繰り返したいところだ。

「では、今日は娘であるお前に妾が手ずからよそってやろう」
「あ、ありがとうございますです。おかー様」

 そう考えている間に、母さんがお椀とお玉を手に鍋から具と汁を掬い始める。
 ……一先ずはタイミングを見計らいつつ、食事会を楽しむとしよう。

「あれ、これってもしかして熊肉?」
「うむ。いつだったか、イサクが妾のために取ってきてくれたことがあったじゃろう? それを思い出してな。ちょっと山に行って狩ってきたのじゃ」
「ああ……勝手に村を出ていって、物凄く怒られたっけ。懐かしいな」

 丁度アロン兄さんが【ガラテア】に拉致され、行方不明になった直後だ。
 その事実に精神が不安定になった母さんは命の危機に陥り、それを何とかしようと考えて好物だという熊肉を取りに村を抜け出して山に向かったのだが……。
 母さんは俺の不在に気づいてしまい(イリュファがばらしたのだが)、結果として余計な心配をかけることになってしまった。
 まあ、その強い感情のおかげで調子を取り戻してくれたのだから、終わりよければ全てよしと言えなくもないが……。
 色々な意味で短絡的な選択だったので、後悔もなくはない。

「ふふ。そうじゃったな。……あの時はすまなかったな。本を正せば妾の不甲斐なさ故に、お前に心配をかけてしまったというのに」
「ううん。俺も一人で先走っちゃったし……その、お互い様、じゃないかな」
「……うむ」

 苦みもある記憶だが、互いに必要な出来事だったに違いない。
 振り返れば、あの時俺は本当の意味でこの両親の息子になったように思うから。
 そして、だからこそ転生したその時に今生の目的と定めた親孝行を果たしたい。
 けれども、俺の予想通りならば救世の転生者は最終的に人身御供にされる。
 どういった形でそうなってしまうのかまでは明確には分からないが。
 勿論、それを甘んじて受け入れるつもりはなく、レンリともそのための対策を考えている。だが、そうでなくとも相手は最凶の人形化魔物ピグマリオン【ガラテア】。
 その最終決戦で命を落としてしまう可能性もないとは言い切れない。

 いずれにしても。この戦いを最後に俺がこの世を去ってしまったら、前世に続いて子供に先立たれる苦痛を両親に与えることになってしまう。
 それこそ母さんは少女化魔物ロリータとして、兄さんの時のように精神的なショックを受けて命を落としてしまいかねない。
 その時、せめて理由が分かっていれば、僅かなり耐えて乗り越えることのできる要素になってくれるかもしれない。
 ならば、あくまでも万が一にせよ、最終局面が間近に迫っている今、真実を告げずにおく訳にはいかない。
 この二人の子供として、そんな不義理をすることはできない。

「それで、イサク。何か話したいことでもあるんじゃないか?」

 今日の催しの目的を頭の中で再確認していると、父さんにそう問いかけられると共に穏やかな視線で促される。
 鍋をよそい終わった母さんもまた口を閉ざし、真っ直ぐ俺を見詰めている。
 どうやらバレバレだったらしい。
 己の演技力のなさを恥じるべきか、さすがは親と言うべきか。
 子供の小細工などお見通しという訳だ。

「…………うん。二人に大事な話があるんだ」

 だから、俺は二人がくれた切っかけと流れに逆らわずに話を切り出し――。

「その、実は……俺は救世の転生者なんだ」

 そして二十年弱隠し続けてきた事実を口にしたのだった。
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