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第一章 未来異星世界
030 新たな生の目的
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「……俺達は戦闘に適さないと判断されたはずですが」
断るための根拠を増やすため、マグは問い気味に言葉を発した。
対してメタは一つ頷いてから口を開く。
「そうだね。けれど、同じような判定を受けても危険を冒して遺跡を巡っている者はたくさんいる。先史兵装でガチガチに武装することでね」
恐らく例外的な事例なのだろうが、そうした実例を引き合いに出されると弱い。
ブラック企業の経営者もよく利用する手口だ。
底辺労働者時代を思い出し、マグは流されないように自分に言い聞かせた。
そうやって警戒する間にメタは話を続ける。
「それに、その判定は簡易適性試験でのものだ。覆ることはままある。実際、アテラの拡張性を戦闘方向に持っていけば十分戦うことができるだろう」
「マグの超越現象ならば先史兵装をより効率よく使うことも可能だな。常に万全の状態で使用することができるからな」
これまで黙って話を聞いていたクリルが、援護射撃をするように続ける。
街の住人である以上、管理者の意向に逆らう理由はないだろう。
「今日だけで君達の情報は大幅に修正されているから、後で端末を見てみるといい」
瞳の奥を更に激しく明滅させながらメタが言う。
現在進行形でデータを参照しているようだ。
「……確かに上方修正されていますね」
アテラもまた、対抗するようにディスプレイの黄色を明滅させながら呟く。
少しずつ退路を断たれていっている感がある。
「いや、ですけど――」
「うーん。君みたいな子には、利益を示した方がいいかな」
何とか反論しようとしたマグの言葉を、メタは考え込む素振りをしながら遮る。
「時空間転移すら成し遂げた超文明の遺跡だ。得られる出土品は常識を超えた機能を有している。例えば、機人を人間にしたりすることも可能だろう」
彼女は意味ありげにアテラを見ながら告げた。
ピグマリオンとガラテアの神話も、未来には現実になっていたようだ。
遥か古代の時点で存在した性癖だ。
その技術を渇望し、飛びつく者も当然いるだろう。
しかし、それはアテラをアテラのまま愛しているマグの望むものではなかった。
とは言え、少しだけ心の中の天秤が逆に傾く。
「……その反対は?」
「反対?」
「人間を機人にすることは可能ですか?」
「え、何故?」
「俺はアテラと同じ機人になって、彼女と添い遂げたい。だからです」
それだけが唯一、この新たな生の始まりから持ち続けた思いだ。
「お、おお。……な、中々に奇特な人間だね。実に興味深い」
そんなマグの望みを耳にしたメタは、初めて驚いたような表情を浮かべた。
視界の端では溜飲が下がったのか、アテラが画面を淡いピンク色に変えている。
「うん。そうだね。確か、いわゆるサイボーグ兵士のような研究の発展形で、そうした技術も確立されたと聞く。遺跡のどこかにはそうした装置もあるかもしれない」
それを聞くことができたなら結論は一つしかない。
「なら、その依頼を受けます」
マグは提示された危険を全て棚に上げ、メタの要求を今度は迷いなく受け入れた。
断るための根拠を増やすため、マグは問い気味に言葉を発した。
対してメタは一つ頷いてから口を開く。
「そうだね。けれど、同じような判定を受けても危険を冒して遺跡を巡っている者はたくさんいる。先史兵装でガチガチに武装することでね」
恐らく例外的な事例なのだろうが、そうした実例を引き合いに出されると弱い。
ブラック企業の経営者もよく利用する手口だ。
底辺労働者時代を思い出し、マグは流されないように自分に言い聞かせた。
そうやって警戒する間にメタは話を続ける。
「それに、その判定は簡易適性試験でのものだ。覆ることはままある。実際、アテラの拡張性を戦闘方向に持っていけば十分戦うことができるだろう」
「マグの超越現象ならば先史兵装をより効率よく使うことも可能だな。常に万全の状態で使用することができるからな」
これまで黙って話を聞いていたクリルが、援護射撃をするように続ける。
街の住人である以上、管理者の意向に逆らう理由はないだろう。
「今日だけで君達の情報は大幅に修正されているから、後で端末を見てみるといい」
瞳の奥を更に激しく明滅させながらメタが言う。
現在進行形でデータを参照しているようだ。
「……確かに上方修正されていますね」
アテラもまた、対抗するようにディスプレイの黄色を明滅させながら呟く。
少しずつ退路を断たれていっている感がある。
「いや、ですけど――」
「うーん。君みたいな子には、利益を示した方がいいかな」
何とか反論しようとしたマグの言葉を、メタは考え込む素振りをしながら遮る。
「時空間転移すら成し遂げた超文明の遺跡だ。得られる出土品は常識を超えた機能を有している。例えば、機人を人間にしたりすることも可能だろう」
彼女は意味ありげにアテラを見ながら告げた。
ピグマリオンとガラテアの神話も、未来には現実になっていたようだ。
遥か古代の時点で存在した性癖だ。
その技術を渇望し、飛びつく者も当然いるだろう。
しかし、それはアテラをアテラのまま愛しているマグの望むものではなかった。
とは言え、少しだけ心の中の天秤が逆に傾く。
「……その反対は?」
「反対?」
「人間を機人にすることは可能ですか?」
「え、何故?」
「俺はアテラと同じ機人になって、彼女と添い遂げたい。だからです」
それだけが唯一、この新たな生の始まりから持ち続けた思いだ。
「お、おお。……な、中々に奇特な人間だね。実に興味深い」
そんなマグの望みを耳にしたメタは、初めて驚いたような表情を浮かべた。
視界の端では溜飲が下がったのか、アテラが画面を淡いピンク色に変えている。
「うん。そうだね。確か、いわゆるサイボーグ兵士のような研究の発展形で、そうした技術も確立されたと聞く。遺跡のどこかにはそうした装置もあるかもしれない」
それを聞くことができたなら結論は一つしかない。
「なら、その依頼を受けます」
マグは提示された危険を全て棚に上げ、メタの要求を今度は迷いなく受け入れた。
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