92 / 128
第二章 ガイノイドが管理する街々
092 手がかり?
しおりを挟む
既に標本の街・機械都市ジアムの管理者ロットという年配の(ように見える)機人を目にしていたが、眼前の存在はそれに輪をかけて老いていた。
いや、勿論、最初からそのように設計されて製作されているはずで、この状態が彼にとってのベストではあるのだろうが……。
作り込みが半端なく、かなり高齢の老人と相対している感覚が強かった。
「キリは、残念であったな」
「相手が一枚も二枚も上手だったと思うしかないデス」
彼の言葉に、普通に声を出して応じるオネット。
どうやら、この部屋は端末の通信が遮断されているようだ。
「メタを直接どうにかするのは、やはり困難であるか」
「デスね。都合のいい力を持った先史兵装でも発見されれば話は別デスが……」
「基本は先んじて時空間転移システムを発見、暴走を停止させた後、二度と使用できない状態にするぐらいしか彼女の野望を食いとめる方法はなさそうであるな」
交わされた会話は、おおよそマグ達と話していたことの再確認のような内容。
だが、情報の共有は大事だ。
確証の乏しい話を前提に動くと、手痛いミスに繋がってしまう可能性もある。
「さて、そこで君達に依頼したいことがある」
「え、ええと……俺達に、ですか?」
言いながら奥まった目を向けてきたローフェに、マグは若干警戒しつつ尋ねた。
しばらく共に過ごしたオネットはともかく、初対面の彼はまだ信用し切れない。
メタのように上辺だけ取り繕っている可能性もなくはない。
「うむ。君達に、とある未踏破の迷宮遺跡を攻略して欲しいのである」
「……え? も、もしかして、あそこデスか?」
ローフェの求めを受け、オネットが驚いたように確認の問いを口にする。
迷宮遺跡の攻略は、ASHギルド所属の探索者の本分ではあるが……。
オネットのその反応。あるいは、難易度が桁違いに高いのかもしれない。
「複数の断片を有している彼らであれば、あの厄介な迷宮遺跡であっても最奥に至ることができる可能性が高い。それは君も理解できるであろう?」
「デスが……」
異を唱えようとしている雰囲気の言葉は後に続かない。
ローフェの主張を半ば肯定しているようなものだ。
「未踏破領域を切り開き、迷宮遺跡を発見する。そして一つでも多くの迷宮遺跡を攻略し、新たな先史兵装を発見する。それが今は肝要であろう」
それは間違いないと完全に口を噤んでしまうオネット。
情が移ったのか比較的マグ達寄りの立場で考えてくれているようだが、当然ながらメタという脅威をどうにかしようという気持ちは変わることなく強い。
立ち位置的に交渉役には向かない。
何より、そもそもマグ達に対する依頼だ。
彼女に応対を任せ切りというのは道理に合わないだろう。
「どうであるかな?」
「…………報酬は?」
「当然ある。命を懸けて貰う訳であるからな。だが、君達にとって釣り合う対価は見当がつかないのである。何か望むものはあるか?」
その問いかけにマグは警戒を強めた。
こちらに任せた報酬。
破格の条件は依頼が相当困難な内容であることの証明としか思えない。
……とは言え、本当に見返りを自由に求めていいのなら一考に値するだろう。
だから――。
「俺の望みは一つ。アテラと同じ機人になることです。アテラと共に歩んでいくために。何か情報があれば、それを報酬として下さい」
マグは取り繕うことなくストレートに告げた。
対してローフェは想定外の答えだったのか、年齢を作るために深く刻まれたしわと弛んだ皮膚で小さく見える目を大きく見開いた。
だが、年の功を模するプログラムによってか即座に冷静さを取り戻した彼は、マグが口にした内容を吟味するように瞑目した。
少しの間、沈黙が場を支配する。
それからややしばらくして――。
「人間を機人に、であるか。そう言えば、あの街ではそれに類する研究もしていると聞いたことがあったな」
「え?」
口を開いたローフェが告げた内容に、思わず問い返す。
正直なところ吹っかけた感もあった要求。
まさか手がかりを得られそうな言葉が返ってくるとマグは思っていなかった。
いや、勿論、最初からそのように設計されて製作されているはずで、この状態が彼にとってのベストではあるのだろうが……。
作り込みが半端なく、かなり高齢の老人と相対している感覚が強かった。
「キリは、残念であったな」
「相手が一枚も二枚も上手だったと思うしかないデス」
彼の言葉に、普通に声を出して応じるオネット。
どうやら、この部屋は端末の通信が遮断されているようだ。
「メタを直接どうにかするのは、やはり困難であるか」
「デスね。都合のいい力を持った先史兵装でも発見されれば話は別デスが……」
「基本は先んじて時空間転移システムを発見、暴走を停止させた後、二度と使用できない状態にするぐらいしか彼女の野望を食いとめる方法はなさそうであるな」
交わされた会話は、おおよそマグ達と話していたことの再確認のような内容。
だが、情報の共有は大事だ。
確証の乏しい話を前提に動くと、手痛いミスに繋がってしまう可能性もある。
「さて、そこで君達に依頼したいことがある」
「え、ええと……俺達に、ですか?」
言いながら奥まった目を向けてきたローフェに、マグは若干警戒しつつ尋ねた。
しばらく共に過ごしたオネットはともかく、初対面の彼はまだ信用し切れない。
メタのように上辺だけ取り繕っている可能性もなくはない。
「うむ。君達に、とある未踏破の迷宮遺跡を攻略して欲しいのである」
「……え? も、もしかして、あそこデスか?」
ローフェの求めを受け、オネットが驚いたように確認の問いを口にする。
迷宮遺跡の攻略は、ASHギルド所属の探索者の本分ではあるが……。
オネットのその反応。あるいは、難易度が桁違いに高いのかもしれない。
「複数の断片を有している彼らであれば、あの厄介な迷宮遺跡であっても最奥に至ることができる可能性が高い。それは君も理解できるであろう?」
「デスが……」
異を唱えようとしている雰囲気の言葉は後に続かない。
ローフェの主張を半ば肯定しているようなものだ。
「未踏破領域を切り開き、迷宮遺跡を発見する。そして一つでも多くの迷宮遺跡を攻略し、新たな先史兵装を発見する。それが今は肝要であろう」
それは間違いないと完全に口を噤んでしまうオネット。
情が移ったのか比較的マグ達寄りの立場で考えてくれているようだが、当然ながらメタという脅威をどうにかしようという気持ちは変わることなく強い。
立ち位置的に交渉役には向かない。
何より、そもそもマグ達に対する依頼だ。
彼女に応対を任せ切りというのは道理に合わないだろう。
「どうであるかな?」
「…………報酬は?」
「当然ある。命を懸けて貰う訳であるからな。だが、君達にとって釣り合う対価は見当がつかないのである。何か望むものはあるか?」
その問いかけにマグは警戒を強めた。
こちらに任せた報酬。
破格の条件は依頼が相当困難な内容であることの証明としか思えない。
……とは言え、本当に見返りを自由に求めていいのなら一考に値するだろう。
だから――。
「俺の望みは一つ。アテラと同じ機人になることです。アテラと共に歩んでいくために。何か情報があれば、それを報酬として下さい」
マグは取り繕うことなくストレートに告げた。
対してローフェは想定外の答えだったのか、年齢を作るために深く刻まれたしわと弛んだ皮膚で小さく見える目を大きく見開いた。
だが、年の功を模するプログラムによってか即座に冷静さを取り戻した彼は、マグが口にした内容を吟味するように瞑目した。
少しの間、沈黙が場を支配する。
それからややしばらくして――。
「人間を機人に、であるか。そう言えば、あの街ではそれに類する研究もしていると聞いたことがあったな」
「え?」
口を開いたローフェが告げた内容に、思わず問い返す。
正直なところ吹っかけた感もあった要求。
まさか手がかりを得られそうな言葉が返ってくるとマグは思っていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる