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第二章 ガイノイドが管理する街々
094 目的への一歩
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街の管理者ローフェから件の迷宮遺跡の位置情報を伝えられたマグ達は、早速学園長室を出てパーソナルモビリティで地下駐車場へと向かった。
そして、そこで装甲車に乗り換えて街の外に出る。
後は目的地まで自動運転とナビゲーションシステムにお任せだ。
「にしても、魂の移動、ねえ」
「それができれば、おとー様もフィア達とお揃いです!」
「まあ、本当にできればの話だけど、ね」
景色が流れてく中、フィアとドリィの会話が耳に届く。
単語のチョイスはともかくとして、その情報はマグが求める人間から機人になる方法の重要な手がかりになることは間違いないだろう。
となれば、この依頼。確実に達成しなければならない。
そう内心で決意を改めていると――。
「……マグさんは本当に変わってるデスね」
オネットがしみじみと呟いた。
「いや、愛する相手と同じようになりたいって気持ちは別に変じゃないだろ」
「それはそうかもしれないデスが、その相手がガイノイドで、尚かつ冗談でも何でもなく本気も本気というのは相当珍しいことだと思うのデスよ」
マグの反論に対する彼女の言葉には、呆れの色が多分に滲んでいる。
しかし、どことなく敬意のような気持ちもまた含まれているようにも聞こえた。
声の発生源たるアテラがディスプレイをピンク色にして【(///∇//)テレテレ】と表示させながらモジモジしているせいで、シュールな感じになってしまっているが。
「それより今は遺跡探索だ。侵入者が持つ超越現象や先史兵装を再現してくるって言ってたけど、実際のところどの程度の話なんだ?」
「ほとんど文字通りデスね。迷宮遺跡に入り込んだ存在のコピーが、うじゃうじゃと敵として出てくると考えて欲しいデス」
「……機獣って言ってなかったか?」
「広義では人間も獣デス」
細かいところはさて置き。
つまるところ、侵入した探索者の能力と装備、果ては姿形に至るまで、そっくりそのまま模倣した敵が多数襲いかかってくる迷宮遺跡ということらしい。
それは確かに厄介極まりない。
いくら優秀な探索者でも、自身と同じ力を持つ存在を複数相手取るのは困難だ。
攻略することができずにいたのも頷ける。
「その上、コピー元の癖や弱点をこと細かに分析して、徹底的にそこを突いてくるデスからね。基礎的な能力は同じでも実質的に格上デス」
しかも、それが群れてくる。
そこまで行くと普通の探索者では攻略不可能と言っても過言ではない。
「にもかかわらず、探索者としてのランクはそこまで高い訳ではない私達に依頼をしたのは、フィアとドリィがいるからですか?」
「そうなるデスね」
アテラの確認するような問いかけに肯定の意を示したオネットは、その理由について続けて補足を加える。
「断片の力をそのままコピーすることはできないはずなのデス」
推測に近い物言いなのは恐らく、戦闘系の断片を内包した先史兵装は珍しく、それを持って探索に挑んだ者がいないためだろう。
あるいは、持っていても確証を得られるような実験を行えなかったか。
いずれにしても、この迷宮遺跡を攻略するには断片が不可欠のようだ。
しかし、それだけでは十分と言いがたい。
劣化であれコピーされてしまう以上、一系統のみでは数を頼みに押し切られてしまうことが目に見えている。
最低限攻撃と防御それぞれに対応した断片が必要だろう。
だからこそ、フィアとドリィがいるマグ達に依頼をした訳だ。
保守の判断軸・防壁の断片と排斥の判断軸・消去の断片。
この二つの力があれば、確かに攻略の可能性が見えてくる気がする。
街の管理者ローフェの判断も理解できる。
「さて、着いたデスよ」
そんなことを考えていると装甲車が速度を減じ、完全に停車した。
降りてアテラの視線の先にある迷宮遺跡に目を向ける。
「……何かの研究施設か?」
そこには遺跡という雰囲気が全くない、マグ基準で未来的な建築物があった。
「前に調査した探索者によると、ここは元々技術センターのような場所だったみたいデスね。まあ、地上の建物は迷宮遺跡攻略には関係ないデスが」
「そうか」
上辺の施設は新品同様で目を引くが、多分に漏れず迷宮遺跡そのものは地下に広がっており、中枢もまたその奥底にあるようだ。
何にせよ、ここで外観を眺めていても仕方がない。
「まあ、とにかく行こうか」
「はい。旦那様」
「フィア、ドリィ。頼むぞ」
「頑張ります!」
「任せて」
「地下は攻略がほとんど進んでないので気をつけて下さいデス」
「ああ。分かった」
そうしてマグ達は、オネットの忠告に従って慎重を期しながら新たな迷宮遺跡に侵入したのだった。
そして、そこで装甲車に乗り換えて街の外に出る。
後は目的地まで自動運転とナビゲーションシステムにお任せだ。
「にしても、魂の移動、ねえ」
「それができれば、おとー様もフィア達とお揃いです!」
「まあ、本当にできればの話だけど、ね」
景色が流れてく中、フィアとドリィの会話が耳に届く。
単語のチョイスはともかくとして、その情報はマグが求める人間から機人になる方法の重要な手がかりになることは間違いないだろう。
となれば、この依頼。確実に達成しなければならない。
そう内心で決意を改めていると――。
「……マグさんは本当に変わってるデスね」
オネットがしみじみと呟いた。
「いや、愛する相手と同じようになりたいって気持ちは別に変じゃないだろ」
「それはそうかもしれないデスが、その相手がガイノイドで、尚かつ冗談でも何でもなく本気も本気というのは相当珍しいことだと思うのデスよ」
マグの反論に対する彼女の言葉には、呆れの色が多分に滲んでいる。
しかし、どことなく敬意のような気持ちもまた含まれているようにも聞こえた。
声の発生源たるアテラがディスプレイをピンク色にして【(///∇//)テレテレ】と表示させながらモジモジしているせいで、シュールな感じになってしまっているが。
「それより今は遺跡探索だ。侵入者が持つ超越現象や先史兵装を再現してくるって言ってたけど、実際のところどの程度の話なんだ?」
「ほとんど文字通りデスね。迷宮遺跡に入り込んだ存在のコピーが、うじゃうじゃと敵として出てくると考えて欲しいデス」
「……機獣って言ってなかったか?」
「広義では人間も獣デス」
細かいところはさて置き。
つまるところ、侵入した探索者の能力と装備、果ては姿形に至るまで、そっくりそのまま模倣した敵が多数襲いかかってくる迷宮遺跡ということらしい。
それは確かに厄介極まりない。
いくら優秀な探索者でも、自身と同じ力を持つ存在を複数相手取るのは困難だ。
攻略することができずにいたのも頷ける。
「その上、コピー元の癖や弱点をこと細かに分析して、徹底的にそこを突いてくるデスからね。基礎的な能力は同じでも実質的に格上デス」
しかも、それが群れてくる。
そこまで行くと普通の探索者では攻略不可能と言っても過言ではない。
「にもかかわらず、探索者としてのランクはそこまで高い訳ではない私達に依頼をしたのは、フィアとドリィがいるからですか?」
「そうなるデスね」
アテラの確認するような問いかけに肯定の意を示したオネットは、その理由について続けて補足を加える。
「断片の力をそのままコピーすることはできないはずなのデス」
推測に近い物言いなのは恐らく、戦闘系の断片を内包した先史兵装は珍しく、それを持って探索に挑んだ者がいないためだろう。
あるいは、持っていても確証を得られるような実験を行えなかったか。
いずれにしても、この迷宮遺跡を攻略するには断片が不可欠のようだ。
しかし、それだけでは十分と言いがたい。
劣化であれコピーされてしまう以上、一系統のみでは数を頼みに押し切られてしまうことが目に見えている。
最低限攻撃と防御それぞれに対応した断片が必要だろう。
だからこそ、フィアとドリィがいるマグ達に依頼をした訳だ。
保守の判断軸・防壁の断片と排斥の判断軸・消去の断片。
この二つの力があれば、確かに攻略の可能性が見えてくる気がする。
街の管理者ローフェの判断も理解できる。
「さて、着いたデスよ」
そんなことを考えていると装甲車が速度を減じ、完全に停車した。
降りてアテラの視線の先にある迷宮遺跡に目を向ける。
「……何かの研究施設か?」
そこには遺跡という雰囲気が全くない、マグ基準で未来的な建築物があった。
「前に調査した探索者によると、ここは元々技術センターのような場所だったみたいデスね。まあ、地上の建物は迷宮遺跡攻略には関係ないデスが」
「そうか」
上辺の施設は新品同様で目を引くが、多分に漏れず迷宮遺跡そのものは地下に広がっており、中枢もまたその奥底にあるようだ。
何にせよ、ここで外観を眺めていても仕方がない。
「まあ、とにかく行こうか」
「はい。旦那様」
「フィア、ドリィ。頼むぞ」
「頑張ります!」
「任せて」
「地下は攻略がほとんど進んでないので気をつけて下さいデス」
「ああ。分かった」
そうしてマグ達は、オネットの忠告に従って慎重を期しながら新たな迷宮遺跡に侵入したのだった。
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