「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽

文字の大きさ
9 / 57

第9話:勇者パーティ、プライドを捨てて(上から目線で)連絡してくる

しおりを挟む
 王都、場末の安宿。
 かつては高級ホテルのスイートルームを常宿としていた『シャイニング・ブレイバーズ』の面々は、薄暗い部屋でカップ麺を啜っていた。

「……金がねえ」

 ライオネルがポツリと漏らした。
 配信収益は激減。スポンサーだった武具店からは契約解除の通達。さらに、昨日の「仲間割れ配信」が原因で、ギルドから活動自粛と罰金を言い渡されていた。
 まさに踏んだり蹴ったりだ。

「ねえライオネル、これからどうすんの? あたし、こんな貧乏生活ムリなんだけど」

 ルルが伸び切った麺を箸で突きながら不満を垂れる。

「うるせえ! 分かってるよ! ……ちっ、これもあれも、全部あのジンの野郎のせいだ」

 ライオネルは逆恨みで拳を震わせた。
 ネット上では「謎のおっさん」ことジンが、フェンリルやドラゴンを手懐けたという話題で持ちきりだ。
 だが、ライオネルはそれを信じていなかった。いや、認めたくなかった。

「あんなの、どうせCGか特撮だ。俺たちの人気を妬んで、誰かに金借りて捏造動画を作らせてやがるんだ」
「でもぉ、ギルド本部が動いてるって噂もあるよ?」
「フン、どうせ『詐欺容疑』での呼び出しだろ」

 ライオネルは鼻で笑った。
 だが、事実はどうあれ、一つだけ認めざるを得ないことがあった。
 ジンがいなくなってから、自分たちの探索がボロボロだということだ。

「……仕方ねえ。泣きついてくるの待ってるつもりだったが、俺の方から声をかけてやるか」

 ライオネルはスマホを取り出した。
 彼の脳内変換では、ジンは今頃、辺境の過酷な生活に音を上げ、日銭を稼ぐために必死でフェイク動画を作っている「哀れな老人」になっていた。

「俺たちにはあいつの地味なサポートが必要だし、あいつには俺たちという『華』が必要だ。Win-Winってやつだな」

 ライオネルはニヤリと笑い、とてつもなく上から目線のメッセージを打ち込み始めた。

 ◇◇◇

 一方その頃。
 辺境の廃棄ダンジョン前は、香ばしい肉の匂いに包まれていた。

「いいかクロ、火加減は強火の遠火だ。焦がすなよ」
「グルァ(心得た)」

 ドラゴンのクロが器用にブレスの火力を調整し、巨大な串焼き肉を炙っている。
 その横では、フェンリルのシロが涎を垂らして待機中だ。

 俺は配信のコメント欄を眺めながら、視聴者と雑談を楽しんでいた。

「あー、『クロちゃんの背中に乗って空の散歩とかしないんですか?』って? いやあ、高いところ寒いし。俺、高所恐怖症なんですよ」

『ドラゴンをタクシー扱いできるのあんただけだよ』
『贅沢すぎる悩み』
『今日も平和だなぁ』

 同接数は安定して60万人超え。スパチャ(投げ銭)も飛んできているが、正直、ダンジョンで拾った宝石の方が高いのであまり気にしていない。
 そんな平和な時間を過ごしていた時だった。

 ピロン♪

 俺の手元のタブレットに、一件のDM(ダイレクトメッセージ)が届いた。

 通知設定を切るのを忘れていたせいで、配信画面の端にもポップアップが表示されてしまう。

「ん? 誰だ?」

 差出人は『勇者ライオネル』。

 俺は嫌な予感がして無視しようとしたが、タップミスで本文を開いてしまった。

 マイクが俺の声を、そして高画質カメラがメッセージの内容を、バッチリ拾ってしまう。

「えーと、なになに……」

 俺は無意識に読み上げた。

『ようジン。辺境での乞食生活、楽しんでるか?
 お前のフェイク動画、頑張って作ったみたいだがバレバレだぞ。
 まあ、その努力に免じて、特別にパーティ復帰を許してやる。
 ただし、給料は今までの3割カットな。あと、ルルの荷物持ちも兼任しろ。
 感謝して今すぐ戻ってこい。迎えに来いと言うなら座標を送れ。
 追伸:あの犬とトカゲのぬいぐるみ、どこで買った? ルルが欲しがってるからよこせ』

「…………」

 俺は沈黙した。
 怒りよりも先に、呆れが来た。
 3割カット? 復帰を許す? ぬいぐるみ?

 俺はチラリと横を見た。
 そこには、本物のエンシェント・ドラゴンが串焼きをひっくり返し、本物のフェンリルが骨をかじっている。
 ぬいぐるみ……ねえ。

「はぁ……」

 俺は深いため息をついた。
 コメント欄を見ると、一瞬で流れが止まり、その直後、爆発的な速度で加速していた。

『うっわ……』
『何このゴミメール』
『勇者ライオネルってここまで落ちぶれてたのか』
『「許してやる」って何様www』
『3割カットで草。おっさん今、スパチャだけでお前の年収超えてるぞ』
『トカゲのぬいぐるみ(全長50m)』
『地雷を踏み抜いたな』

 視聴者たちは完全に俺の味方だった。
 俺はカメラに向かって、ポリポリと頭をかきながら言った。

「だそうです。……ごめん、みんな。ちょっと返信だけさせて」

 俺は音声入力モードを起動した。
 全世界に公開される「お断り」のメッセージだ。

「えー、ライオネルへ。
 今、シロとクロと一緒にBBQ中で忙しいので無理です。
 あと、給料3割カットって言われても、俺、昨日の配信だけでお前の借金返せるくらい稼いじゃったしなぁ。
 というわけで、二度と連絡してこないでください。
 追伸:クロが『誰がぬいぐるみだ、丸焼きにするぞ』って言ってるんで、来ないほうが身のためだと思います。以上」

 送信ボタンをポチッ。

「グルルルルッ!!(激おこ)」
「ワフッ!(身の程知らずめ!)」

 シロとクロも同意するように吠えた。

『神返信』
『BBQ優先www』
『「稼いじゃったしなぁ」の煽り性能高すぎ』
『事実陳列罪で勇者が死んでしまう』
『これ、勇者側も配信見てるよな?』

 そう、見ていた。
 安宿の一室で、スマホを握りしめたライオネルの顔が、茹でダコのように真っ赤に染まっていくのを。

「あ、あいつ……! コケにしやがってぇぇぇぇッ!!」

 バキィッ!
 ライオネルのスマホが握りつぶされた。
 プライドをズタズタに引き裂かれた勇者の暴走は、もう止まらない。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...