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第12話:その重さは罪の重さ。勇者、伝説の「重力土下座」を披露する
「う、うぅ……くそっ……!」
泥まみれの地面で、勇者ライオネルはよろめきながら立ち上がろうとしていた。
クロのクシャミ(衝撃波)を食らっても五体満足なのは、腐っても勇者が装備するミスリル鎧のおかげだろう。もっとも、その自慢の鎧も今は泥と煤で見る影もないが。
「だ、騙されんぞ……! これはトリックだ! 爆薬か何かを使ったんだろう!」
ライオネルはまだ喚いていた。
折れた剣の柄を握りしめ、充血した目で俺を睨みつける。その姿は、かつて俺を「地味だ」と嘲笑った煌びやかな勇者とは程遠い、ただの癇癪持ちの子供だった。
「往生際が悪いな、ライオネル。いい加減、現実を見たらどうだ」
「うるせぇぇッ! 俺は勇者だ! 主役なんだよ! お前みたいな裏方が、俺より目立つなんて許されるわけがないんだ!」
ライオネルが再び飛びかかろうと足を曲げた。
後ろでは、ルルと剣士もふらふらと立ち上がり、殺気を向けてくる。話し合いで解決できる段階はとうに過ぎているようだ。
俺は小さく溜息をついた。
「シロ、クロ。手出し無用だ。こいつらは俺がやる」
俺が一歩前に出ると、ライオネルが口角を歪めた。
「はっ! バカめ! 化け物の後ろに隠れていればいいものを、ノコノコ出てくるとはな! 魔法使いが前衛に勝てるわけ――」
俺はライオネルの言葉を最後まで聞かず、スッと右手を掲げた。
そして、冷徹に言い放った。
「グラビティ・プリズン」
――ズンッ!!!
大気が悲鳴を上げた。
ライオネルたちの周囲の空間だけ、重力が「30倍」に跳ね上がったのだ。
「ぐっ!? ガッ……!?」
「きゃあああっ!?」
立っていられるわけがない。
三人は見えない巨人の手で押し潰されたように、無様に地面へと叩きつけられた。
膝が地面にめり込み、両手が泥を掴む。
強制的な「土下座」の姿勢だ。
「な、なんだこれ……!? からだが、動か……ッ!」
ライオネルが顔だけを上げようと必死に首に青筋を立てるが、俺の人差し指がそれを許さない。
俺は指をさらに少しだけ下げた。
「頭が高い」
ドォン!
ライオネルの額が、地面に激しく叩きつけられた。
もはやピクリとも動けない。絶対的な服従のポーズ。
「お前がバカにした『地味な魔法』だよ。派手な爆発も光もないが、逃げることも防ぐこともできない。どうだ? 自分の体重に押し潰される気分は」
俺は彼らの周りをゆっくりと歩きながら告げた。
「お前たちは俺の魔法を『映えない』と言ったな。だが、俺はこの魔法でお前たちの攻撃を誘導し、敵を拘束し、カメラを支えていた。お前たちが輝けていたのは、俺が泥臭い仕事を全部引き受けていたからだ」
俺はルルの前で立ち止まる。
「ルル。お前、さっきシロに火魔法を撃ったな? もしシロが食べてくれなかったら、この森は火事になってたぞ。自然を舐めるな」
「ひっ、ご、ごめんなさ……」
ルルが涙目で震える。重力で声も満足に出せないようだ。
次にライオネルの頭を踏みつけそうになる寸前で足を止める。
「ライオネル。お前はプライドを守るために、ここまで来た。だが、その結果がこれだ。……あーあ、可哀想に」
俺はわざとらしく、落ちていたライオネルのスマホを拾い上げた。
画面は割れているが、奇跡的に配信は続いていた。
カメラは、泥水に顔を突っ込んで土下座させられている勇者たちの無様な姿を、ローアングルからバッチリ捉えている。
「まだ配信、続いてるぞ?」
俺が画面をライオネルの顔に向けてやると、彼の目が限界まで見開かれた。
そこに流れるコメントの嵐を、見てしまったからだ。
『ざまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『究極の土下座www』
『これがSSランク候補の実力か』
『勇者(笑)、指一本で終了』
『気持ちいいいいいいい!』
『スクショした』
『重力魔法、地味どころか最強じゃん』
『もう引退しろお前ら』
「あ……あぁ……」
ライオネルの口から、絶望の呻きが漏れた。
物理的な敗北よりも遥かに重い、社会的な死。
彼が一番欲しがっていた「承認」と「称賛」は、今、彼を嘲笑う「蔑み」と「罵倒」に変わった。
「終わりだ、ライオネル。お前たちのチャンネルも、勇者としての地位も」
俺は「リリース」と呟き、重力を解除した。
だが、ライオネルたちは立ち上がらなかった。
重力が消えても、絶望という重圧に押し潰され、ただ泥の中で震えて泣くことしかできなかった。
「シロ、クロ。お客様はお帰りだ。……入り口まで『お見送り』してやれ」
「ワンッ!」
「グルァ!」
二匹の魔獣が、嬉々として勇者たちを(物理的に)転がし始めた。
こうして、世界中が見守る中、勇者パーティによる「伝説の土下座配信」は幕を閉じた。
この日、俺のチャンネル登録者数は一夜にして100万人を突破した。
泥まみれの地面で、勇者ライオネルはよろめきながら立ち上がろうとしていた。
クロのクシャミ(衝撃波)を食らっても五体満足なのは、腐っても勇者が装備するミスリル鎧のおかげだろう。もっとも、その自慢の鎧も今は泥と煤で見る影もないが。
「だ、騙されんぞ……! これはトリックだ! 爆薬か何かを使ったんだろう!」
ライオネルはまだ喚いていた。
折れた剣の柄を握りしめ、充血した目で俺を睨みつける。その姿は、かつて俺を「地味だ」と嘲笑った煌びやかな勇者とは程遠い、ただの癇癪持ちの子供だった。
「往生際が悪いな、ライオネル。いい加減、現実を見たらどうだ」
「うるせぇぇッ! 俺は勇者だ! 主役なんだよ! お前みたいな裏方が、俺より目立つなんて許されるわけがないんだ!」
ライオネルが再び飛びかかろうと足を曲げた。
後ろでは、ルルと剣士もふらふらと立ち上がり、殺気を向けてくる。話し合いで解決できる段階はとうに過ぎているようだ。
俺は小さく溜息をついた。
「シロ、クロ。手出し無用だ。こいつらは俺がやる」
俺が一歩前に出ると、ライオネルが口角を歪めた。
「はっ! バカめ! 化け物の後ろに隠れていればいいものを、ノコノコ出てくるとはな! 魔法使いが前衛に勝てるわけ――」
俺はライオネルの言葉を最後まで聞かず、スッと右手を掲げた。
そして、冷徹に言い放った。
「グラビティ・プリズン」
――ズンッ!!!
大気が悲鳴を上げた。
ライオネルたちの周囲の空間だけ、重力が「30倍」に跳ね上がったのだ。
「ぐっ!? ガッ……!?」
「きゃあああっ!?」
立っていられるわけがない。
三人は見えない巨人の手で押し潰されたように、無様に地面へと叩きつけられた。
膝が地面にめり込み、両手が泥を掴む。
強制的な「土下座」の姿勢だ。
「な、なんだこれ……!? からだが、動か……ッ!」
ライオネルが顔だけを上げようと必死に首に青筋を立てるが、俺の人差し指がそれを許さない。
俺は指をさらに少しだけ下げた。
「頭が高い」
ドォン!
ライオネルの額が、地面に激しく叩きつけられた。
もはやピクリとも動けない。絶対的な服従のポーズ。
「お前がバカにした『地味な魔法』だよ。派手な爆発も光もないが、逃げることも防ぐこともできない。どうだ? 自分の体重に押し潰される気分は」
俺は彼らの周りをゆっくりと歩きながら告げた。
「お前たちは俺の魔法を『映えない』と言ったな。だが、俺はこの魔法でお前たちの攻撃を誘導し、敵を拘束し、カメラを支えていた。お前たちが輝けていたのは、俺が泥臭い仕事を全部引き受けていたからだ」
俺はルルの前で立ち止まる。
「ルル。お前、さっきシロに火魔法を撃ったな? もしシロが食べてくれなかったら、この森は火事になってたぞ。自然を舐めるな」
「ひっ、ご、ごめんなさ……」
ルルが涙目で震える。重力で声も満足に出せないようだ。
次にライオネルの頭を踏みつけそうになる寸前で足を止める。
「ライオネル。お前はプライドを守るために、ここまで来た。だが、その結果がこれだ。……あーあ、可哀想に」
俺はわざとらしく、落ちていたライオネルのスマホを拾い上げた。
画面は割れているが、奇跡的に配信は続いていた。
カメラは、泥水に顔を突っ込んで土下座させられている勇者たちの無様な姿を、ローアングルからバッチリ捉えている。
「まだ配信、続いてるぞ?」
俺が画面をライオネルの顔に向けてやると、彼の目が限界まで見開かれた。
そこに流れるコメントの嵐を、見てしまったからだ。
『ざまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『究極の土下座www』
『これがSSランク候補の実力か』
『勇者(笑)、指一本で終了』
『気持ちいいいいいいい!』
『スクショした』
『重力魔法、地味どころか最強じゃん』
『もう引退しろお前ら』
「あ……あぁ……」
ライオネルの口から、絶望の呻きが漏れた。
物理的な敗北よりも遥かに重い、社会的な死。
彼が一番欲しがっていた「承認」と「称賛」は、今、彼を嘲笑う「蔑み」と「罵倒」に変わった。
「終わりだ、ライオネル。お前たちのチャンネルも、勇者としての地位も」
俺は「リリース」と呟き、重力を解除した。
だが、ライオネルたちは立ち上がらなかった。
重力が消えても、絶望という重圧に押し潰され、ただ泥の中で震えて泣くことしかできなかった。
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